第七十五話 再開だぁー!
「それでは、各々の作業に戻ってくれ。鴉狐はその巨大ロボを戻してからな」
「へーい」
分かってますよーだ。名残惜しいけど、より強くより操作性が良くなって帰ってきてね。何か俺のになるらしいから楽しみだねぇ。普段使いは出来なさそうだけど維持費的にさ。まっ気長に待つかな。
「解散!」
よし、格納庫に移動しとこうか。戻ってくるときには東雲に乗れば良いしね。また樵かぁ。鍛えるのには向いてると思うけどね?こう、単純作業が辛いって言うか。
『帰投してください。格納後、戦闘時のレポートを書いて頂きたいので、時間を使わせて下さい。レポートにはそのティタンの名前も合わせてほしいです』
分かったー。レポート書くの?…何を書こうか。良い点に悪い点と改善した方がいい点、欲しい武装、名前が主かな?
『因みにそのティタンの製造番号はYT―000なので、記憶の隅にでも留めて措いて下さい』
何故、その情報を今?本当にプロトタイプなんだなぁ。ここから改良されていく起点にもなってるんだよね。この子はさ。
『鴉さんもこれの研究開発を手伝いをしていただいても。あ、勿論仕事が終わってからですが』
ん?ああ、魔術を使ってるから関われるちゃあ関われるのか。 術式を正確に書き出して、それをティタン用に組み換えれば組み込めるかも?召喚術を通して側に喚んでみたりさ。イヤーこれは夢が広がるねぇ!巨大ロボを自分でカスタマイズする。VRでは中々出来ないよね?しかもこのゲームって自由度がかなり高いし。
ととっ、着いた。空想しながら移動すると、いつの間にか着いているんだよね。考えるのって楽しいなぁ!術式書き出し用の紙とレポート用紙貰ったら作業げんばに現場に戻ろうか。不知火に切り出しの指示は出してもらうとして、枝打ちは俺と藍紗でいいか。
物理法則を無視してる影の触手だけど、スライムなら触手の形を同じくいけるのではないかと。今は、他の生き物に姿を変える練習をしていることだしね。試して駄目なときは俺一人でやるけどね?あ、でも少しは〔黒の武者〕に切って貰えば良いのか?おっと着いたね。
「こちらに来て頂きたいです。武装は着けたままで結構なので」
ふぅ、座りっぱなしでも疲れてくるねぇ。いやぁ歳を感じてくるよ。没入型のVRゲームなのにさ。まぁ、リアルよりは動くけどね?気分的に疲れるって言うか。
「ではこれがレポート用紙で」
「あ、他にも何十枚か紙をくれないかな?」
「どうしましたか?」
「術式を書き出したくて」
「…そうですか。どうぞこちらを」
何だよその間は。意味深に感じない?気にし過ぎかな?
「ありがとうね。レポートも早めに頑張って出すから」
「はい、宜しくお願いします」
あるぇ?いつもにも増して暗いね?どうしたんだろうか。
「どうしたの?さっきまで明るかったのに。ああ、いえ。現実での作業量を考えていたら、このように。このゲームをやれるぐらいの余裕はありますが、如何せんどうにもならないのですよ」
「ああ、分かるわぁ。デバック作業が地獄でね?プログラミングをするのは好きなんだけど、デバックを考えると憂鬱となるんだよね」
「ええ、励ましてくださり有難うございます。ただ、業種が違いようなので、お助けを借りることは出来そうにありません」
ありゃりゃ、結構きてるねぇ。この短時間でこんなネガティブになる作業量って一体…。手を触れたら火傷しそうだから、退散しようか!
「まぁ、これを息抜きと思えば?良いんじゃないかな?」
「現実より好きに出来ますから、息抜きにはなっています」
お、ほんの少しだけど持ち直してくれたかな?
「じゃあ、樵に戻るからじゃあの!」
「また後で」
よし、樵しながら技術を高めていきますか!
「我が駆る馬は魔の獣 黄金の心の臓を持つ獣なり【召喚術・召喚:バヤール】。それじゃあ、さっきの場所まで運んでね」
『最近は何時もより呼ぶ回数が増えたな?』
「繁忙期だからね。仕方がないね」
『…そうか。(目の光が消えている?)では行こう』
「安全走行でねぇー」
アハハハハ、繁忙期は最早呪いでは?胃に穴が開きそうな時期に比べれば、まだまだましな方だけどね。口とか喉に胃酸みたいな何かを感じて無いから、大丈夫…だと思うよ多分だけど。
「我に宿るは黒き十の切り開く力【召喚術・召喚:黒の武者】、我に宿るは白き十の守り抜く力【召喚術・召喚:白の武者】。不知火は樵の指示の続きね。藍紗は俺と一緒に枝打ちをしてみようか」
『ふーい。お仕事をしますぅー』
「不満かよ」
『勿論ですよぅ!』
「じゃあ仕事しろ」
『不満なんですけど?』
「お・し・ご・と」
『はぁい』
『?』
「藍紗は姿形を変える練習を、してるじゃない。それを俺が触手でしているような、斧の形で枝打ちをしてくれないかなと」
『!』
うん、念話だとどんなこと伝えようとしてるか分かるけど、無いと全然わかんねぇや。微動だにしてないし。
「お仕事開始!」
終わってない丸太を取り出して、早速だけどやってみてもらおうかな。
「斧の形、そうそうこれね。刃の部分は未だ未だ分厚いねぇ。切れても大丈夫だと思うから、俺の触ってみて」
『?…!』
お、お、お?徐々にだけど鋭くなってるね?やっぱり見せるよりも触れさせたり、感じさせた方が学習は速くなるのね?