第七十三話 影を用いて敵を切り裂く
うーむ、速いんだろうけど大きさがあるから、遅く感じるんだよね。まぁ、東雲よりかは遅いけど。ん?この音は何だろう?
『鴉さん、こちらは司令部となっております。この通信は一方的な物且つ念話の魔術の応用ですので、念話を使えるのでしたら返事は出来ますよ。さて、本題に移りましょう。今回の武装はFMなので、弾倉の換装で水属性や風属性に変えられます。弾倉自体は手元にあるボタンで変更可能となっており、状況に合わせて使用してください』
これかな?お、情報が転送されてきた。ボタンの位置と効果が書いてあるね。うん、大体分かったし問題ないかな?換装したら数秒空けなければいけなくて、時間を見極めなければ。てか、指令部って。特に命令とか貰って無いけど?やっぱり、やりたかっただけじゃないかなぁ?
『TMG―FM以外の武装は、左肩に付いているTMSだけです。他は費用が嵩むので、ダンジョンが出来るまで放置ですね。最近知り得たのですが、神々が作成した物を迷宮で、それ以外がダンジョンと呼ぶそうですよ?つまり、鳥兜さんがこれから造る物はダンジョンとなっております。楽しみですねぇ』
雑談に使わないでくれないかな?知識としては面白いけど、暇じゃないから! 結構操作に気を使ってるし。ふぅ、やっと着いた!移動してる間のほんの少しだけしか、ティタンでの射撃訓練してないから、今になって不安になってきたぞぅ!
ありゃ、もう戦闘を始めているね?まぁ、あれがあのまま進めば、仮設拠点は壊滅的被害を受けたろうし。当然ちゃあ当然か。
『このプロトタイプは正式に改造後、鴉さん専用のティタンとして使用しても宜しいですよ?名前は後でも良いので、決めておいて下さい。サーチドローンから送られてきた情報から、指令部より敵の精査済みの物を送ります』
えっと、種族名はタイタンタートル、弱点属性は風か。風の弾倉は射程長くと範囲が広い代わりに攻撃力が断トツで低いと。チマチマ削るしかないかぁ。あ、でもTMSがあるのか。でもどんなのだろう?何々、魔導学の技術を応用したティタン用に大型化した直刀と。って近接武器かい!どないせいちゅうねん!
援護になるべきか主戦力になるべきか。取り敢えず、鳥兜に聞いとこうかな。一様現場の指揮権持ってるみたいだしね。
『丁度良い!この巨体を押さえてくれ!幾ら傷を付つけても止まらないからな!』
「了解っ!」
●◆●視点変更●◆●
彼女は武器を使わず、プロトティタンの巨大な両碗で押さえ込む。両者とも力は拮抗、いや馬力の違いで彼女側が押し込まれつつある。
「不知火!東雲!」
『はーい』
『何用か』
「不知火は援護に、東雲は鳥頭達の足に為ってくれ!」
『分かりましたよぅ』
『承知』
召喚したまま放置していた精霊に、取り敢えずの指示を出す。しかし、少し目を離したその瞬間、タイタンタートルが足を上げ、踏み潰そうと下ろした。俊敏とは言えないプロトタイプは、まともにその重量を生かした攻撃を食らう。
金属で出来た巨体は軋み、甲高い音が聞こえてくる。勿論その理由は、タイラントヒルが十メートル前後なのに対し、プロトティタンは凡そ七メートルである。体格差による重量が原因だ。だがプロトティタンは頑丈に出来ているようで、後数十分は持つだろう。打開策が無ければそのまま潰れるが。
生物と無機物の差により何とか保っている状態が、装甲から突如として禍々しく蠢く真黒な闇に呑まれ、浸食されてゆくことにより均衡が崩れる。そして、影が作られる場所から触手が生え、タイタンタートルの全身に纏わり付き拘束した。そう、それは鴉狐が常に付けている防具のスキルを魔力を大量に消費し、力の補助代わりにしたのだ。大規模に使うものだから、彼女の魔力は直ぐに底を着くだろう。
だが、事前にルクハからティタンから魔力供給をする方法を聞いていたため、切れずに抑えられている。ただ、延命処置なだけで長期戦になれば、意味は無くなってしまう。抜本的な解決が無い状態で、小一時間経つ。勿論、何も策を講じ無かった訳ではない。
東雲に乗った静鈴が硬い表皮を切り裂き、鳥兜が縦横無尽に飛び回り弱点を探りつつ銃撃し、不知火が《鬼火》や火の属性魔術で攻撃していた。それでも、有効打にはならないのが現実である。そこで鴉狐は触手による拘束を分離し、少し離れたところからTMSを相応な両手に握り、構え、降り下ろす。
影に染まったその直刀で、タイタンタートルの甲羅から火花と鮮血を散らしながら裂く。鋭く激しい痛みに襲われたそれは、大気を震わす叫び声を上げる。そして…。
『何すんだこの野郎ッ!』
「野郎じゃないですぅ!美少女ですぅ!」
緊張が解けてしまった。気の抜けた会話が戦闘状態を強制的に止めてしまう。何ともまあ締まらないものだ。先ほどまで、どちらかが地に伏せるまで戦いをしていたと言うのに。
●◆●視点変更●◆●
『眠ってただけなのに何て仕打ちだ!』
「潰されそうになったんですけど!?」
『そりゃあわりぃな。寝惚けてたんだ、許してくれよぅ』
「えぇ、じゃあこっち方面に来なければ良い?よね?」
『何で疑問系なんだぁ?』
「いや、上の判断を仰いでないからね。そこんとこどうなのよ。烏頭」
現場の最高責任者だしね?俺は平だからな!権限と責任なんざ関係ないからね。楽な立場だなぁ。ゲーム内だから言えることだけどさ。
「あーっと。引き返してもらえればそれで」
『応さ。そんじゃあな。あ、出来ればなんだが・・・これ回復してくんねぇか?』
え?自力で回復が出来ないと?うーむ。あ、白蓮居るやんけ。




