閑話 ある日のある場所で
薄暗い部屋に、大きなディスプレイが何枚も浮いている机で、キーボードにも本にも見える物で何かの作業をしている男(?)がいた。ディスプレイには様々な風景や人、町が映っており、何処かゲーム画面にも見える。
「んーやっと大規模なメンテナンスが終わったー。後は世界の基幹AIが調節してくれるでしょ。イベントを考えねば」
そう言って伸びをした男(?)は奇妙な格好をしていた。服は法衣にもジャージにも見える服を着ており、場違いにも合っているようにも感じる。顔の上半分は布らしき素材で隠されており、とてもでは無いがその大きなディスプレイを見えるとは思えない。下半分は口角を上げて微笑を浮かべていた。
「さて、うちの相方は起きてるかねー。そろそろ起きても良い時期なんだけど」
男は立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。窓を開けた先は男(?)の奇妙さとは違い、普通の廊下に見えた。
「最近部屋に籠りっぱなしだったからなー。来客が来てたらどうしたもんか。短気な奴が来てないと良いけど」
着いた先は緑を基調とし、ピンクや白、黒も使ったドアの前だ。
「起きてるかなー。お、起きてる。おはよう」
『おはようございます。どの位眠っていまたか?』
「何時もより早いよ?」
『そうですか』
ドアを開けた先は、何故か巨大な樹が生えており、その傍らには大きなベットに腰掛けた目が虚ろな緑髪の女性(?)が居た。周りの風景も部屋ではなく、星空や山々に囲まれた場所だと分かる。しかし、山に見えた物は浮いており、山と言うより浮島に見える。現実では在り得ない光景がそこには広がっていた。
緑髪の女性(?)が話したかと思ったが、口が開いてはいなかった。
「お仕事ある?」
『いえ、特には無いです』
緑髪の女性(?)はベットに腰掛けながら、何処からともなく少し大きめの箱を取り出し、開けた。
「そのお菓子好きだねー」
『美味しいので』
箱の中には様々なチョコ菓子が詰まっており、次々にしかしゆっくりと味わいながら食べていった。
「糖分取り過ぎじゃない?」
『形と味を似せただけの代物ですよ?前にも言った覚えがあります。老けました?』
「皮肉が過ぎるよ。神様はボケないって、老化が無いんだもの」
『雰囲気は変わりますよ』
「そう言ったって、後何万年経てば良いのさ」
『それもそうですね』
奇妙な男(?)は神様であるらしい。神々しさも威厳も何も無いが。
「んじゃ、戻るわ」
『此処に何しに来たんですか?』
「お仕事の有無と気分転換に」
『少し待ってください』
「ん?何かあるの?」
『来客ですよ。この神気は四本腕ですね。対応宜しくお願いします。寝るので』
「おいこら付き合え」
『嫌です』
奇妙な男(?)と緑髪の女性(?)が言い合っていると、ドアから四本腕で褐色の肌の男が入って来た。
「いよーお二人さん。元気にしてるか?」
「帰れ」
「ひでぇなあおい!お前さんが折角部屋から出て来たと思ったのによお」
何時の間にか置いてあった三人掛けのソファに、四本腕の男は座った。
「それで、お前が来たからには用件が有るのだろう?」
「ああ、あるともさ。お前に頼むなら一つだけだろ。移住依頼だな」
「他にも適任は居るだろ何で俺なんだよ」
「そりゃあ、お前の管轄だからよ。てか仕事をしてりゃ分かんだろ」
「はぁ。何時もすまんね、依頼理由は」
ため息を吐きながらも奇妙な男(?)は、四本腕の男の向かい側にソファを出し、真面目そうに見えるオーラを出しながら座った。
「ちいとばかし他の世界線に影響が出やがってな。お前の管轄じゃない所だな、お前の管轄内だったら口にはださねぇよ」
「何時もの奴か。何処のどいつがやったのさ」
「その世界の神と呼ばれる高次の存在だな」
「どの階位に至ったのか?」
「多分三位だな。加える程の能力も持ってねえからな。それに管轄を任せるタマでもねぇしよう」
「ソイツが生まれた世界の破壊はするのか?」
「そりゃあするだろ。俺がやってやっから安心しな。体が鈍ってしなあ!」
「分かった。近々やろう、他には?」
「ねえよ。それと嬢ちゃん元気になってきたな、いやそうでもねぇか?」
「いや元気には為ってるさ、食ってるからな」
『食べてませよ』
後ろでモスキート音でプリプリと怒っている緑髪の女性が、奇妙な男(?)の後ろに隠れながら現れた。
「んじゃな!速くやっとけよ」
そう言いながら、四本腕の男はドアから足早に出て行った。
「はいはい。余計な一言が多いぞ、全く」
『何時も仕事が遅いからでしょう』
「他の作業もやってるからですぅ!」
『趣味でしょう?』
「ぐうの音も出ません」
『声は出ているのでまだ大丈夫です』
「鬼畜だねぇ」
この言い合いで、お互いの仲が険悪では無い事が伺える。
「そんで、食えてるの?」
『何を指してるかは察せますが、感情の残滓と太陽神の発す光と水神の水しか食べれませんよ。ボケましたか?』
神々の力を使って、光合成を緑髪の女性はしているようだ。言葉を聞いてから周りの風景を見ると、神々しい光が見てとれる。
「いやボケて無いからね!増えて無いかの確認だよ」
『増えはしませんが。ただ、漏れる量は変わって無いので段々と貯蓄は出来てますよ』
「言葉をちゃんと言えよな。魔素ってさ」
そして、光合成で作られたのはATPではなく、魔素らしい。
『分かってる事を常々言う程貴方は馬鹿でしたか?』
「酷いな!後、根は張れてるの?」
『勿論張れてますよ。知的生命体が切っては為らない大樹だと偽装してますから』
ここでの根は比喩ではなく、本当のようだ。
「あー世界樹とか生命の樹の事だな」
『ええ、私はこれから寝ますので出て行って下さい』
「またな」
『おや、今回は素直ですね』
「仕事が有るからな」
と言って、奇妙な男(?)はドアから出て行った。
息抜きがてらに書いてみたのですが、どうでしょうか?本文とかなり文体が違う様に、試験的にしてみましたが如何でしょうか。
筆が止まりそうなので。