第百九話 ドローンゴー
もう既に分類されているのは分かった。でも、そうする理由があるのは確かだ。何だろう。パイロット試験に俺が適さないからとか?
「なぁルクハ、有資格者と無資格者の違いって何だ?」
「そうですね。有資格者はパイロット自身がティタンの操作するしない関わらずに、戦闘可能な者と言う指標となります。無資格者はティタン登場時でのみ戦闘可能な人です。その為、有資格者はティタンの有無に関わらず、野外活動や戦闘行動が出来ます。又、免許は2種類あり、戦闘用ティタン運転免許と作業用ティタン運転免許となります」
つまり、ティタンが無ければ俺は無力ということか?いや、魔術があるし問題無い筈だ。…覚えた大半の術は召喚系だけどな。つまり本人の戦闘力は必要無いんだ。…悲しい。
「術士でもパイロット試験に耐えられるかの実験となります。有資格者に必要な資質をもとに考案されたのですが、我々では試験に辿り着くまでの途中過程でさえ無理でした。エンジニアにはパイロットは務まらないと言う事ですね」
何それ。笑顔で言う事では無いだろう。笑い声が漏れているけど、それ乾いているよな?ま、まぁ良いさ。やってやる!………生産陣よりは体力あるよな?
「鴉さんには強化服の方に着替えてもらいたいです。その服は強化鎧の下に着る鎧下ですらね。パイロットスーツの方は強化服を下地とした武装なので、その鎧下は適していません」
…ここから更に着替えなくてはいけないのか。でも、結構着るのは簡単なんだよな。スーツ自体が大き目に作られているから、着にくいなんて事はないし、それを纏ってから空気を抜くと体に合うようになる。脱ぐときは逆に空気を入れて大きくしてから脱げるし。…どんな伸縮率の高い素材を使っているのやら。
「鴉さん。着終わりましたか?」
「今丁度終ったところ」
「そうですか。次に兵装の装着ですね。こちらはお好きな物をお選び下さい。但し、軽装甲に武器ホルダーやヘルメット、バックパック、ウエストバック等の基本装備は必須ですよ」
兵装は…鍵縄射出、透明化、囮設置、半透明壁、斥候小型無人機、気体罠、回復薬注入器、腕部盾、電気柵、電波探知等などと。多いな?
そうだな。直接戦闘はしないだろうし、ドローンとかインジェクターが良いかも。インジェクターは回復薬でなくて、魔力回復薬に変えれば普段からでも使えるかもな。
「兵装って何個まで選べるのか?」
「競合しなければ、重量の許す限り幾らでも。ただ、鴉さんの場合は一つか二つの方が良いかと」
「そうなんだ。だったら、ドローンとインジェクターかな。インジェクターは魔力回復薬に変更できる?」
「勿論ですとも。内容物を変えれば済む話ですからね。装着には我々の誰かにして貰う方が安全です。慣れれば問題は無いですが、初回は私が着けますね」
………何か、他の人に服を着せてもらっているのは恥ずかしいな。羞恥心が込上げてくる。…そう、心を無にするんだ。そうすれば何も感じなくなる。…あ、待って。やっぱり恥ずかしいわ。
「着け終わりましたよ。動き心地はいかがですか?」
…はっ!考え事をしていたらいつの間にか終わっていた。
「特に問題は無いかな」
「では、兵装の操作方法に移りますね。基本的に、ヘルメットに映される仮想UIを使用します。兵装を装着した事でUI上に、スカウトドローンとマギリカバリドラッグに変更したインジェクタの項目が追加されていると思われます。それを押して下さい。インジェクタの方ですが、そちらは押すだけで適量が注入されます。魔力回復薬は背面の腰部に在る、タンクを交換して頂ければ大丈夫ですよ。そちらは簡素なので、後で教えますね」
「グッ」
痛みは無いけど、液体が体に注射で入れられている感じがして、気持ち悪い。…痛みが無くて良かった。注入の度に一々痛むのは非効率だしな。
「次にスカウトドローンの操作方法ですが、ドローンの項目を押せば操作可能な状態に移ります。その後UI上に、新しく映し出されたパネルを動かして頂ければ問題は無いかと」
チュートリアルが出て説明をしてくれるんだな。これは分かり易くて良いかも。結構直感的な操作方法だな。ドローンの機能は周囲を探知するスカウトレーダー、唯一の攻撃方法に当たる魔導軽機関銃、溶接に溶断とか切断が出来る簡易的な工作器具だな。
レーダーを使用すると、表示されている周辺の簡易地図に、生物や特定機械の反応が位置と共に表示される。表示点は三角形で見易い。…言う事は他に無いな。
次に魔導軽機関銃はティタンの装備を、ドローンに付けられるようそのまま小さくした感じだな。反動とかも控えめで使い易い。ドローン特性かもしれないけどな。
工作器具はトラップの除去とかに使う感じだ。後は、小さな入り口をつく感じかな。使う場面は少ないだろうけど、在れば便利な機能だ。
「鴉さん。調子はどうですか?」
「うん。中々楽しいよ。操作しやすいラジコンに似ているからかも」
「そうですか。では、次に移りたいと思います」