第百八話 う、動きが
さて、下着姿になれたな。ゲーム的にアウトかと思った。いや、下着姿のアバターとかゲームにはよくあるけど、VRだから不安にもなる。何かしら着る物がある筈なのだけども。…机の上に置いてある物か?黒一色で微妙な感じがしてきた。…いや、よく見れば青系の色も使われているな。中々見応えがある。
鎧を着るのにパイロットスーツも着るのか。と言うか、何か見たことあるな。…強化服の下地では?ウェットスーツのワンピース?に似ている。確かフルスーツとも言うのだっけ?それの筈だ。これは…少し重いかな。着ればあまり感じ難くなるけど、持って移動するのは少し難しいかな。
うん、頭無しの模様付き全身タイツか。別に嫌いではないよ?自分が着なければな。一人称視点でしか見れないから、ただただボディラインを強調するような服を着ていると言う羞恥だけが残る。…見る分には好きかな。SFって感じがしてさ。まぁ、着ていれば慣れるだろうし、恥ずかしそうにしなければそこらのコスプレとか変わらないか。何ならもっと際どいのを見たことあるし。
「鴉さん。着終わりましたか?」
「机の上に乗ってる物は全部着たけど」
「では、こちらへ。強化服に近いとは言え、鎧でもあります。それなりに重量がありますし、動き方が違いますのでご注意を」
見た目はヘルメット付きの全体的に、調和が取れた暗めの穴開き外骨格かな。………くそぅ。当たり前だけど持とうと思っても持てないか。俺の筋力じゃ足りないのはわ、分かってたし?別に問題は無いですとも?
…装着した感じは、思ったよりも堅く角張っているな。地味に動き難い。ん?ヘルメット内部のパネル?に起動の文字が書いてある枠があるな。
「鴉さんの視界に映る仮想UIは、手で触れる様に操作が出来るので試して下さい」
これで良いのか。楽に操作が出来る物なんだな。……これを知識があるにしても、1から作ったのは凄い。このクランの生産陣が持つ技術力に惚れ惚れするよ。それに加えて、そんな作成物を許容するゲームも凄いと思う。制作した物によっては、魔法ファンタジーではなくて科学ファンタジーになるからな。一応は運営の意図には沿っているのか?
「着心地はどうですか?動きに支障はありますか?」
「特に何か問題が在るとかは無いかな。まぁ、強いて言うなら少しづつ回復してきた魔力が、結構な速度で減っているから回復薬を飲みたい。と言うか魔力消費をするのかこれ」
「でしたら、仮想UIに表示されている、ヘルメットの項目に開閉ボタンがあるので、それを押していただければ大丈夫ですよ。魔力は強化鎧の方で生成して使用しているのです。しかし、どうしても足りない場合は、やはり使用者の魔力を消費してしまうのです。改良が必要ですね」
これか?ヘルメットの開閉に各種機能の稼働と停止か。結構凝っているな。核戦争後の世紀末な科学技術風で好きだ。重装甲型だともっとそれっぽいんだろうな。軽装甲型だと…少し不格好に見える。
お、ボタンを押したら元々狭まっていないけど視界が開けた。少し動くときに明かりが消えるから間違ってはいない。画面越しに見えていたけど、やっぱり格好良いな!…穴開きだけども。
「鴉さん。大丈夫ですか?回復薬を飲んだ後に、動いてみて頂けますか?」
よし、魔力の回復量が上がったからか、滑らかに動けるようになった。でもやっぱり、魔力消費が多い。流石にライダーを召喚した時よりかはましだけどさ。俺の魔力も増えてきているからな。…これ以上これを着るのは無理そうか。
「鴉さんの魔力量でも足らないですか?」
「いや、今はライダーを召喚し続けているからだな。と言うか降りないと厳しい」
「なるほど、分かりました。でしたら、装着解除のボタンを押して下さい。従来の標準型や重装甲型に比べて、乗るよりも着ると言う方向性が強いです。その為、本来なら装着を遡る順番で外して頂きたのですが、緊急時には装備の接合部を解除して強制的に外してもらいました。他にも方法が在るのですけどね。今回は強制解除を選びました」
うおっ。反動が大きい。腰を抜かすぞ。腰痛には…なっていないよな?大丈夫だよな?こ、怖い。
「その、他の方法は?」
「?ああ、はい。稼働停止ボタンを押すだけの方法です。しかし、そちらだと動けないと思いまして。軽装甲型は装着した時点で筋力補助が稼働します。その為、停止してしまうと筋力補助が受けられない状態で、強化鎧の重量を生身で受けなければなりません。なので、強制解除の方法を選択しました」
「うん。御免て。そんな目のハイライトを消して言わないでくれよ」
目に暗い炎が宿ってる様に見える。普通に怖いから止めて。
「さて、問題点が分かりました。…被験体を増やして頂きたいですね」
不穏な言葉が聞こえてきているけど気のせいだな。まぁ、生産陣の実験に付き合う術士はクランに居るかな?…私用なら兎も角として中々居ないのかも。生産陣も術士は居るけどほぼほぼ自分の研究に没頭していそうだし。
「おや失礼しました。次の試験に移ります。その前に体力測定を行いますが、宜しいですか?パイロット試験は体力や適性が重要になるので。勿論、有資格者だけになりますが。鴉さんは免許持ちの無資格者となります」
どんどん自堕落になってきていますが、ほぼ週1投稿を続けていきたい所存です。こんな私の作品ですが、今後とも付き合って頂ければ幸いです。エタらないようには気を付けます。前作とかはネタが尽きてエタりましたが。今回はならないと思います。