第百二話 やべぇよやべぇよ
機械式とは驚いた。ボタンを押せば自動で開くとか。浪漫があるな!箱はどこかな?…在った在った。ん?え?回復薬ってこんなにあるのか?少し肌寒い所に置いてある箱は、何百もの数が積み重なっているのですが。
箱の中身はやはり、回復薬が注いである試験管だ。でも、何か違和感があるな。…俺の持っている入れ物が濁っている硝子製だけど、箱の方は樹脂かプラスティク製なのか。
工業生産でもしているのかな?今のままだと何も分からない。これだけの量があれば、当分の間は持つか?いや、俺以外にも使う人は居るだろうし、全部は無理でも一部なら良いのか。
「鴉ちゃん、準備が出来たのです。それで、相談事は何ですか?」
「ええと、魔力消費が上がってしまったので、何かしらの解決策は在りませんか?」
「その原因は何ですか?」
「英霊召喚が成功して、その維持の為です」
「!?成功したのですか!?話には聞いていたのです。それで、どんな英霊を召喚したのですか?」
凄く驚くな。でも、そんなに期待されても申し訳なく思う。だって、知ってる事なんて男である事と、騎乗する者である事だけだからな。まぁ、確定ではないけど、朧谷さんかもしれないけどさ。
「未だ分からない事だらけで、話せる内容の方が少ないです。彼がライダーと名乗る事しか」
「そうなのですか。…魔力に関しては、回復薬を幾らでもあげますし、周囲の魔素を効率良く吸収出来る術式があるのです。それを教えるのです」
「あ、ありがとうございます」
「クランの仲間なのてすから、これくらい良いのですよ。早速で悪いのですが、英霊を見せてほしいのです」
ですよね。知ってた。建前は確りとしていたけど、最後の本音が全てを台無しにした。加え、目は口ほど物を言う状態だし。目が輝いているから直ぐ分かる。この人の知識欲は凄まじいな。それじゃあ少し失敬して、回復薬を服用してと。
「ライダー、実体化してくれるかな」
「良いぜ。一部始終見ていたが、中々面白い場所だな」
「おお!この方が英霊なのですか!?」
「そうだぜ。ドワーフのお嬢さん。俺はライダー、宜しくな」
「私はアディルと言うのです。何かしら、ライダーさんの生きていた時代の技術を、教えて頂くことは出来るです?」
「そうだな。何か、この時代の技術レベルが知りたい。それを見せてくれたら良いぞ」
「そうですか。…少し待つのです。物を取ってくるのです」
アディルさんが凄く子供っぽくなっている気がする。好奇心が抑えられない猫にも見えるな。どちらにせよ可愛い。目の保養になる。
「これなんてどうです?」
「ん?おお!バイクか!中々良い面構えをしているじゃねぇか!」
あ、回復量が落ちてきているな。飲もう。…薬ばっかり飲んでいると、その内薬中毒にでもなりそうだな。気を付けよう。いや、気を付けて変えられる物でもないけど!
「鴉ちゃん。思っていたよりも、現代的な服装を着ているのですね?それにバイクにも詳しいのですね?」
「嬢ちゃん。ある程度の常識は、備わって召喚させる物なんだぜ?」
「では何故、この時代の技術レベルを、知りたいと言ったのです?常識からある程度は分かると思うのですよ」
「ああ、そうだな。確かに知識は有るが、実際に見て体験をしたら判断材料が増えるだろう?」
常識しか分からないのか。そうなると、どこの国や地域の考え方によっては、他の場所に通用しなくなると。彼の常識がこのクランの物なのか、それとも〔竜国〕の物なのか。
「それに、常識とは言っても普遍的な物だからな。この時代で言えば、分からない事の方が多いぞ?」
「…そうなのですか。それで、お眼鏡には叶ったのです?」
「ああ勿論だ。何、教えてはいけない技術を除く、教えられる技術を教えよう」
「それは良かったのです。因みに、自律稼働する機械は詳しいです?」
「まぁ、な。このロールの範囲内ならいけるぜ」
「では鴉ちゃん、少し借りるのです。回復薬は何時でも持っていくと良いのですよ。あ、術式の話は今無理なのです。私よりも師匠の方が知っていると思うのです」
「じゃあな。俺は部屋に戻って少し横になるよ」
後、四箱位持っていこうかな。回復薬を飲み過ぎて、腹から水音が聞こえる。…トイレにでも行っておこう。現実でも、ゲームでもな。漏れたら嫌だし。
一応、レオナさんに挨拶でも行こうかな。元々レオナさんから教えて貰った事だし。練習の成果を知ってもらいたくもある。でもその前に、横になろう。こんな状態が続くとなると体が持たないな。何かしらのバッドステータスでも付くかもしれない。
ふう。多少とは言え楽になった。でも、 これはキツいな。回復薬は不味くはないし、渇水度が回復するけど水分でお腹が膨れるのが問題だ。食べ過ぎた時の気持ち悪さに、内容物を吐き出せない苦しみが加わるからな。…未だ能力さえ見せて貰っていないのに、この程度で諦められるものか。
その為には早めに術式を覚えた方が良さそうな気がする。こうしてはいられない。レオナさんの所に向かおう。場所は、研究所の所かな?久し振りに行くな。場所を覚えているか心配だけど、何とかなるだろ。