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龍人な少女の召喚記~一人一人が主役な舞台の世界~  作者: スカイア=ライメト
第三部:建国編 第一章:傍観者足る過去の映像
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第九十六話 大・惨・事!!

 視界が暗転し、広く開けた場所になった。そこには二人の者が相対している。片方は怒気を宿らせた竜人の女性、方やキャソックに白衣を羽織り翼が生えている男性だ。

「おや、クロノ教授。私に何のご用で?」

「何、貴様が実験場を趣味で、使用していると聞いてな?少々灸を据えてやろうとしている所だ」

「そう、ですか。貴女の膂力で握られると、私は死んでしまいます。なので、ここは逃げさせてもらいまっ」

 話をしながらも、彼は人型から鳥へと変化させた。その姿は全体的に白いが、首周り、尾の付け根、足は黒い。加えて、目と嘴は極端に小さい普通の鳥に見えるが、何処と無く神聖な雰囲気を醸し出している。行動で台無しになっているが。

「はぁ、逃げると貴様の為に成らんぞ。鳥に戻ろうとも、私は追い掛けるぞ?」

 彼女の体が徐々に竜へと変化していく。体格までは抑えられているようたが、それでも一般的な馬の三倍は有ろう大きさだ。多少大きな鳥では呑み込むだろう。それに、対格差で潰れてしまう。

「…死んでしまいます」

「そう成りたくなくば、そこに直れ。何、それだけでは終わらせんよ。私と戦え。それで済ましてやろう」

 マッティアは鳥の姿から、先の翼の生えた人へと戻る。その表情は血の気が失せ、更に目からハイライトが消えた。多少うわ言も聞こえるが気のせいであろう。

「拒否権は…無さそうですねはい」

「うむ。それで良し。謝らんでも良いぞ?折檻をするのは確定であったしな。加減はしてやる。全力で来い」

「胸をお借りします」

 と言葉を放ち、戦闘が始まった。クロノは腰に佩いている剣を抜き、構えを取る。マッティアは白く縁が黒い鳥の意匠や、両端に白く広い翼の装飾が施された大弓を持つ。

 弓からは多種多様な色や大きさをした、魔力で形作られた矢が放たれる。その矢は途中で分裂、拡散しクロノへ向かう。だが、それらの矢はクロノが行った一振りで霧散した。それにより、始めから何も起こらなかった様に変える。

「斯様な小手先の技で傷を負うとでも?カカカカカッ!舐められたものよのう?」

「魔力をかなりの量消費したのですがっ!」

「早う次の攻撃をしてみせんか。これでは私が詰まらん」

 その直後、マッティアは飛んだ。今度は逃げるのではなく、上空から爆撃のように矢を放つ。そして、その弾幕に紛らせながら、白衣の裏から取り出した薬品を降り注がせる。

「ほう。じゃが、効かぬ!」

 先程と同じ様に、薬品もろとも振り散らした。それも、薬品が周りに飛び散らぬように、魔術を使用してだ。だが、それを見越していたマッティアは、魔力を溜めに溜め、弦を限界まで引き絞らせていた手を放した。

 それは先程の矢とは違い、形も大きさも内包魔力量も段違いだ。そう、まるで強力な爆弾と勘違いしそうな程。これには、一振りで済ませていたクロノは、違う行動を取る。口から漏れ出るのは蒸気、目も黒から金色の蛇眼に変わっていく。そして、口の少し前に術式が構築され、ある魔術が収束して放たれる。

 その魔術は彼女が使う本来の物よりも、劣化に劣化を重ねて威力や範囲を減らした代物だ。そう、竜の息吹きとして使われる竜魔術である。ただ、劣化をしていても元が強力な為、他の魔術系統で使われる高位の魔術よりも遜色(そんしょく)がない。

 竜の息吹きはマッティアが放った、魔術の核を射ぬき消し飛ばす。過程は違えども、結果はさして変わらない物となった。やはり及ばないと分かっていたマッティアは、クロノの背後に周り死角から矢を放つ。

「クッカカカカカカッ!未だ未だよなぁ!」

 いっしゅんで振り向いたクロノにより、矢ごとマッティアは斬られる。その行為は、両者とも唖然とした表情を浮かべたる結果になった。片方はそこまでしないだろうと言う思いから、もう片方は避けるだろうと考えてだ。

 詰まる所、大惨事である。マッティアの弓を断ち斬ったばかりか、腕も飛ばし血を吹き出させた。当事者は少々固まっているが、周りの観客は応急手当やら何やらと行動を開始した為、マッティアは重傷で済んだ。済んだと言って良いかのか分からないが、済んだのである。

 アルマンドとビースが所持していた応急処置セットや、途中から見ていた研究員達に寄る適切な行為で何とかなった。しかし、応急手当てであるため、そのまま担架に乗せられてマッティアは去っていく。

 突如そんな光景が変わり、先程とは違った慌ただしさを感じる場面となる。研究所全体から警報が鳴り響き、白衣を纏った者達が忙しなく動く。

「慎都は居るか!」

「マッティア教授!探しましたよ」

「ああ、こちらもだ。少々遅くなりはしたが、事を起こそうとしている者等を特定した。その為、この研究施設は見た通りの慌ただしさだ。何と言っても、特定した者達が原因でね。世界再編事象、その起爆剤に当たるのは人工神造兵器だ。プロジェクト名称AGだな。何故、プロジェクト名称まで知っているのか。そう、お察しの通りだ。此処メティスの第三人工神話研究所で、行われていた計画が対象となっている。正に身内の恥だな」

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