#5 NPC名前を授かる
花蓮に連れられてきたNPCは花蓮の家のソファで座っていた。
「さて。」花蓮が紅茶を静かにテーブルに置き、ひと段落付けると話しを始めた。
「まずは、今日。私の大切な花柄のブローチを見つけてくれてありがとう。あのブローチはおば様から貰った大切なものだったの。」
「い、いえ。たまたま拾ったブローチで、近くになにかを慌てながら探している女性がいたのでそれで、もしかしてと思い・・・」
「そっか。あ、私の事は花蓮でいいわよ。あなたのことも・・・あ、名前ないのだっけ。どこから来たのかも覚えてないのでしょう?」
「そ、そうですね名前どころか。どこから来たのかさえ・・・」NPCは落ち着こうと目の前にある容器に手を伸ばし、初めて花蓮の家にある紅茶というものを口にして美味しさのあまり落ち着いて味わうのではなく、すぐに飲み干してしまった。
「じゃ、じゃあ仮ということで名前をあなたに付けましょうか。なにか君が付けたい名前などはある?」
「い、いえ特には・・・もし良かったら花蓮が決めても良いですよ」
「えっ、大丈夫なの?名前って君が思っている以上に大切なものなのよ?」
「はい、大丈夫ですよ。むしろよろしくお願いします。自分は名前というものがどのようなものか理解出来ていないので・・・」
「そっか・・・じゃあ」
あれから少し時間がたっていた・・・・
名前つけるって言われても相手は男子だし、1度も人に名前をつけたこともないし、どうしよ、どうしよ、どうしよ。花蓮の頭の中は緊張と早く決めないと行けないがしっかりとした名前を決めないといけないというあせりもあった。
「あ!そうだわ冬夜・・・はどうかしら??」
「その名前、いいですね!自分気に入りました。ありがとうございます、花蓮!」
「そ、そう気に入ってくれたなら良かった。」
やばい・・・今の季節が冬で、冬の夜に会ったから冬夜になったなんて、雑すぎて言えない・・・
自分の決めた名前とその理由が、雑すぎていて、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。