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第6話 選挙中

 中央入口を出ると外はもう暗くなっていた。

 そんな時間なので俺達は早々と足を動かして帰ろうとするがそのとき、突如として相崎は俺達と一緒に歩いていたその足を動かすの止めて全く関係ない方を振り向いた。


 「相崎?」


 俺は前を歩いている裕也や美咲が気が付いていないみたいなので俺も足を動かすのをやめて止まりそして、相崎の名前を呼ぶ。しかし、相崎は俺の言葉を無視したのか聞こえなかったのかどちらかわからなかったがとにかく俺達から離れたまったく違う場所に1人向かい始めた。俺は、相崎がどこに行くのか気になったので裕也と美咲にまだ相崎のことを話していないことを忘れて追いかけたのであった。


 「おい、相崎」


 俺は1人どこかへと歩いていく相崎を追いかける。しかし、相崎はそれでも歩き続ける。一体相崎の奴はどこへ向かっているんだ? 俺はそんなことを考えながらかれこれ100メートルちょい相崎を追いかける。相崎を追いかけてたどり着いた先には人だかりができていた。多くの人が集まって何かを見ていた。一体ここで何があるのだろうか? 俺はその人だかりの正体が何なのか分からないまま相崎の隣に近づいていく。


 「相崎?」


 俺は相崎にこんも人だかりの正体を聞く。


 「あれ? 野田君どうしたの?」


 あれ? 野田君どうしたのじゃないし。お前がどこかへ1人で行っちゃうからわざわざ追いかけてきたんだろ。俺は思わずそう怒鳴りたくなったがいかんせんここは俺たち以外にも30人ぐらいの人だかりができているため怒鳴ったら俺が赤っ恥をかく。だからおとなしくすることにした。


 「はぁ~。自意識なかったのかよ。相崎が勝手にどっか行っちゃうから追いかけてきたんだよ」


 俺は落ち着いたトーンで相崎に俺がここに来た理由を語る。


 「あっ! ごめんごめん。そうだったみんなでショッピングしていたのに勝手な行動しちゃった。他の2人は?」


 「多分今頃俺達2人がいなくて探し回っていると思う」


 「2人に何も言わないで追いかけてきたの? ちょっと呆れちゃうね。でも、ありがとう」


 相崎が笑顔でしかも素直に謝ってこられたので俺はついその表情にドキッとさせられてしまう。しかし、相手は危ない思想の女だ。俺はそれを思い出し顔をぶるぶると左右に震わせ考えるのをやめる。


 「それはそうとどうして突然全然違う方向に向かったんだ? そもそもこの人だかりは一体何なんだ?」


 俺はここで一番気になっていたことを相崎に尋ねる。相崎が一体ここに何をしに来たのか? この人だかりは一体何なのか? 俺は気になっていたので尋ねる。

 相崎はすぐにその答えを教えてくれた。


 「この集まりはあれだよ。今、世間では衆議院選挙をしているでしょ。それの立候補者の1人である最大野党友民党の幹事長木下準之助の街頭選挙演説があるからその支持者が集まっているんだよ」


 「へぇー」


 俺は適当に返事をしておいた。いかにも興味がないかのように。ただ、木下準之助友民党幹事長については有名人ということもあり俺は政経が嫌いだとは言いながらこれぐらいのことは結構知っている。

 木下準之助。

 野党友民党幹事長として全国的に知られわたっている国会議員だ。といっても今の状況であると前国会議員が正しい言い方になるが木下幹事長はこの選挙区において小選挙区制の導入から一度たりとも与党民主自由党をはじめ対立候補に比例復活を許したことがない選挙実績を誇っている。いわゆるこの選挙区は友民王国と言われている。

 そんな木下幹事長が今日ここで街頭演説をするということだそうだ。木下幹事長は先ほど言ったように現職の友民党幹事長であるため全国の友民党候補の選挙演説の応援に出かけているため今回の選挙で自分の選挙区で演説をするのは今回だけだそうだ。それだけに今日は支持者が多く集まっていると俺の隣にいた人が教えてくれた。

 さて、それはそれとして。問題がある。それは何かというとなぜ、相崎がこの街頭演説をわざわざ見に来た、いやここで言うと聞きに来たかということだ。相崎は自分で右翼だと言っていたことから政治にはとても関心があるのには違いがない。最近の若者の傾向とは違いそれはいいことだとは俺は思う。しかしだ。はたして相崎は素直に街頭演説を聞きに来たのだろうか?

 今から演説する木下準之助友民党幹事長は右翼左翼の分類でいうと左翼に分類される人だ。もともと友民党は中道政党として知られているがそれは逆に言うと右から左まで幅広くいるということだ。海外メディアからは中道左派とみられている。そんな友民党の中でも彼はリベラル左派に属している。これは相崎からしたら結構の獲物だ。日本においては左派とはすなわち売国奴を指すのが昨今当たり前の風潮と化している。本来の右翼左翼の名前の由来は世界史において習ったことであるがフランス革命時の選挙において手に入れた議席の位置に基づいて付いたそうだ。議長席から見て右側に王政を守りたいという保守的な思考を持つ人が集まったことから保守層のことを右翼。議長席から見て左側に新しいフランスという国を作っていきたい、社会をもっとよりよく改革していきたいと革新的、急進的な思考を持つ人を左翼。ついでに蛇足だが議長席から見て真ん中には保守的でもなく革新的でもない人々が中道の名前の由来となった。

 だからその考えから言えば日本という国はなぜ左翼をここまで毛嫌いするのか俺は全く分からない。だが、1つ言えることがある。相崎は絶対ここで彼に何かを仕掛けるに違いない。そうした時俺はいかにして全く関係のない第三者のふりをすることができるかが勝負である。俺の心の準備はすでにできている。さあ、いつでも何が起きても俺は大丈夫だ。さあ、どんと来い!

 俺は本当は何も起きてほしくはないはずなのに異常なテンションで心の底その時を待っていた。まあ、後でやはりそのことは後悔することになるが、とのかく今の俺のテンションは異常だったというのが話をまとめるのに簡潔な答えである。

 そんなことを考えているうちに俺達聴衆の前に数人の黒い服を着た警備員に守られて1人の男がやってくる。黒髪で50代前半の男。その体型はやはり政治家ということもあり腹の辺りが少しふっくらとしている。彼こそが友民党幹事長木下準之助だ。木下幹事長は俺達の前にたどり着くとマイクを片手に持ちもう片方の手は俺達に向けて手を振っていた。その表情はとても笑顔で気さくな人という印象を持たせる。木下幹事長が友民党の中でも人気がある理由がよく分かる。そして、ついに彼の街頭演説が始まる。


 「ええ、みなさん! こんにちは。私は友民党幹事長であり××5区の友民党公認候補の木下準之助です。私は現職幹事長であるがゆえにみなさんと直接対話をすることができるのは今日だけであるのでどうか最後までご清聴していただけると嬉しいです。まず、私は最初に話したいことがあります。それは今の内閣の暴走についてです。私達が政権を失ってからはや7年。私達は選挙のたびにあの7年前の政権時代の失敗を失政を今でも後悔しており反省しております。あの時の私達には政権担当能力がなかったということは誰が見ても否定することはできません。しかしです! あの時何もできなかったと言われていた私達ですが実を言うとマニフェスト達成率は70パーセントを越えていたのでした! なのにです。私達はうそつき、何も実行できていないと言われています! それはひとえに私達の実力不足ということも多いですが今の民主自由党政権の阿部信二総裁は嘘をついています! 彼は自分は政策を私達友民党とは違って実行していると言っていますが実はそうでもないのです。この7年間阿部信二内閣は第4次にわたるまで4度の内閣を組閣し3回の総選挙を経ていますが実を言うと公約実行率はそれぞれのマニフェスト公約に1つにつき7パーセント程度しか実行できていないのです! 公約にないことばかりをやっているからです! みなさん! ほんとうにそれでいいのですか! 私達は────」


 木下幹事長はまず政権批判から演説を始めた。まあ、野党公認候補者としてはまず当然のことであると言えよう。野党議員が与党議員を批判するのは当然のことだ。しかし、問題はその政権批判に対して相崎がどう反応するかということであった。相崎は右翼だ。おそらく友民党を売国奴と認識し民主自由党とを崇めている一派に違いない。だとしたら、この政権批判は許せないはずだ。周りの聴衆がそうだそうだと彼の演説に頷いたり同意したりする中で相崎は黙っているだけであった。その表情はとても真剣でありそして、何か怖いものを感じた。俺はそっと相崎の表情を確認しただけでそれ以上は振り向くことも話しかけることもせずに再び彼の演説を聴き入り始めた。


 「私達友民党には対案があります。今まで私達は政府与党の政策に反対だけを取っていると思われていました。しかし、それは民自党側の陰謀なのです! 私達は今までの国会において是々非々で臨んでまいりました。国会において私達が反対している法案ばっかりテレビで報道されていたためみなさんは全部反対していると思われていると思いますがそれは嘘なんです! もう一度言います! 私達には対案があります。私達の経済政策は労働者を重視するものです。今の阿部内閣のやっている政策のすべてが大企業のためのものとしか言いようがありません。しかし、本当にそれで私達庶民階層の生活はよくなっていくのでしょうか? 私はダメだと思っています! 今、企業には相当な額の内部留保と呼ばれているお金が存在しています。それがあるというのに大企業に対して法人税を下げるのはおかしいのではないでしょうか? 私達はそのことについて断固反────」


 木下幹事長は経済政策について語り始めた。俺は経済学部を志望しているので経済学については意外と詳しいつもりでいる。政経が嫌いと前は言ったが別に苦手だとは言った思いはない。それに俺が本当の意味で嫌いなのは政治経済の中の政治の分野だ。いや、もっと詳しく言っていくと日本政治という分類になる。

 だからこそ、木下幹事長の経済政策の話を聞いているときああとか納得のできる部分もあれば納得のできない部分もあった。でも、いろんな経済政策を聞くのは勉強になるのでいいことだと思う。俺はこのことが聞くことができたので演説を聞いている途中で良かったと思うようになっていた。でも、それでも懸念がやっぱりあった。いつ、相崎が動き出すのか。本当に先ほどからそのことしか考えていなかった。

 だから、俺は次に起こる出来事にはまったくの対処ができなかった。


 「異議ありっ!」


 木下幹事長が演説を続けている中突然と大きな声が響き渡った。それは、聴衆の中から発せられた声だ。しかしながら、俺の隣からではなかった。相崎はずっと黙って聞いていた。では、誰が声を張り上げたのか? 俺としてはどうでもいいことであったが少しは気になるものであった。

 木下幹事長は演説をやめた。そして、声がした方へと視線を向ける。それに合わせて俺もいや、俺達演説を聞いていたすべての聴衆がその声がした方へと目を向けたのであった。そこにいたのは1人の少女であった。見た目を見た俺はこの少女も相崎と負けず劣らずの美少女だと思ってしまった。俺達と同じくらいの年齢のように見える。身長も150後半、髪の色は金髪でその黒を強調とした服は体とぴったりなのか女性らしい体つきを物凄い協調としていた。だから、俺は最初に美少女だと思ってしまったが次に思ったことはこの少女とてもビッチにしか見えなかった。さぞや、援助交際を数々の男とやってきているんだろうな。

 さて、話は変わるがそんな少女が突如として出てきてそして演説を妨害した。これは、この場の空気を大きく変えるものとなった。

 周りの聴衆は次にこの少女と木下幹事長との間の不穏な空気を読み取り何が起こるのかかたずをのんで見守っていた。

 ついに少女は口を開くのであった────

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