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最終話 

 俺は、美咲にすべてを話した。

 だが、反応は普通であった。

 何とも思われなくてよかった。

 それだけが俺にとっては救いであったのだ。


 ◇◇◇


 それから1か月が過ぎた。

 総裁選挙が今日告示されることになった。

 俺としては別の方法を探すつもりであったが結局これしか方法がないということが分かった。

 なので、何とかして受けそうな公約を考えこの組織の長になろうとする。

 この組織をぶっ潰すのが目的なんて素直なこと言えるわけないじゃないか。

 なので、これからの活動方針みたいなことを俺は挙げた。

 広告の強化とか、宣伝をもっとしようとか政界に進出しようとかそんな感じのことを言った覚えがある。

 ああ、言った覚えがあるというのは俺自身この公約はどうでもいいことであり自分の記憶に全くと言ってもいいほど残っていなかったからだ。


 「俺に清き1ッ票をお願いします!」


 講堂で俺は演説を終え最後のセリフを言った。

 そのまま投票の時間になった。

 俺以外に立候補している人物は2人。

 前原直という50代の男と江田勘十郎という初老の男だ。

 彼らはこの組織に長いこといたらしい。それゆえに派閥を持っているそうだ。彼らの派閥のメンバーはそれぞれ彼らにいれるだろう。つまり、勝負を決めるのは2人の派閥に入っていないメンバー、浮動票だ。それを何としても取り込まなくてはいけない。


 「では、結果を発表します」


 投票できる人数は200人。

 つまり、過半数の101票をとれば総裁になる。


 「前原直君15票、江田勘十郎君70票、野田雄一郎君125票。よって、総裁には野田雄一郎君を選出します」


 「「「おおおおおおおおおおおおおお」」」


 どうやら俺は無事に総裁の座が内定したそうだ。

 安心した。


 「バンザーイ、バンザーイ」


 みんなの前で万才をする。

 相崎は俺の横にいたはずなのに知らない間にいなくなっていた。

 おかしいな。

 俺は、壇上に上がり最初のひとことを言う。


 「この組織の長になりました。野田雄一郎です。さて、私は1つのことをまず成し遂げたいと思います。それは、この組織の解散です」


 『は?』


 俺の解散の発言に場の全員は理解することができていなかった。

 そして、俺はそのまま逃げるようにしてこの部屋を出て事前に書いておいた解散届を持ち役所へとそのまま駆け込んだ。

 組織は無事に解散することができた。

 俺は自分の過去をこれで清算することができたんだ。


 ◇◇◇


 翌日。

 学校へ行く。


 「雄一郎、おかえり」


 俺の彼女である美咲が帰りを待っていてくれたようだ。

 その言葉を聞き日常に戻った気がする。

 俺の隣の席はいなかった。

 先生が教室に入ってくる。


 「はい、相崎さんですが急になりますが転校しました。皆さんに挨拶ができないことは後悔していたそうですが、メッセージを頼まれています」


 メッセージ?


 「皆さん、短い間ありがとうございました。私の目的は果たしました。政治に関心を持ってほしい、嫌でも政治と言うのは皆さんに付きまとうものですが、ただの日常が始まったと思ってもまたいつか政治には巻き込まれるものですよ。だそうです。後半の内容はよくわからないですけど一応伝えましたよ」


 ……相崎のメッセージは俺にものすごく刺さった。

 相崎は転校した。

 しかし、いずれまた再会するような気がした。

 だが、しばらくはこの平凡な日常をかみしめることにしよう。

 変な転校生に関わりたくない。とりわけ転校生が右翼少女だったらなおさらだ。


 もう、関わりたくない、それが……

 今回で終わりになります。今までありがとうございました。

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