第52話 対総裁
総裁を選ぶ選挙がある。
そんなことまったく知らなかった。
というか、総裁選挙ってどういうことだよ。何だ、ここは立派な政党なのか。政党ではないだろ。と、いろいろと突っ込みたかったが諦めた。
何はともあれこれは相崎の策略にはまっていたということが俺にはわかった。
「総裁選挙?」
「ああ、君を総裁選挙に推薦する。もちろん、推薦人は私の派閥からちゃんと人数出すから問題ないぞ」
小沢が言う。
「推薦!? 派閥!? って、政党かよ。しかも、しっかりとしていて国政政党かい」
俺はツッコミを入れていた。
選挙に出るのに推薦人が必要。
まあ、これは別に学校の生徒会の選挙でも推薦人がいるから特におかしくはない。だが、派閥って完全に政党じゃん。
派閥なんて政治の世界じゃないとなかなか出てこない用語だと思うぞ。
まあ、キノコ、タケノコの派閥なんて言うのがあるけどそんなもんじゃなくてしっかりとしているものとなるとやはりどこぞの与党のようなきっちりとした派閥になる。
「まあ、私達はいずれ政界に進出したいと考えていたからそのような派閥ができていたりしているんだ」
国政に出るつもりってどういうことよ。
俺の作った組織は一体どんな発展を遂げればこのような状態になっているんだ。
俺は自分が作った組織にありえない変化に驚きを隠すことができなかった。
「そんな組織の代表になっていいのかよ」
俺はこの組織を解散させるつもりで総裁になろうとしていたはずなのにそのようなことを思ってしまう。そりゃあそうだ。
総裁になるためには選挙を勝ち残らないといけない。
今の俺では総裁になることができないような気がした。いや、できない。どこの誰が組織を解散させるような奴を代表に選ぶだろうか、いや選ばない。
つまりだ。
相崎がニヤリといやらしくニヤついていたのもこのことがあるのだろう。俺が総裁になるためには祖式のことを思わないといけない。組織を解散させるようなことを言わせない。それが狙いだったのだろう。
そうだとしたのなら相崎の罠にまんまと俺ははまったのだろう。
「さあ、野田君。君は本当に総裁になるつもりかね」
小沢が俺に対して問いかける。
「……悪魔め」
俺は、悪態をつく。
「ははは、上等だよ」
それに対して小沢は悪びれもなく答える。
最初からどうやら俺は相崎、そして小沢の2人の手のひらで踊っていただけだったのかもしれない。
それでもいい。
俺は何としてもこの組織を解散させてやる。
右翼活動なんて認めない。
やってやるんだ。




