第51話 総裁職
美咲とあんなことやこんなことがあった翌日。
学校に行きたくはなかった俺であるが何とかして学校へ行く。
「野田君、来たんだ」
俺が学校に来るなり辛辣な言葉をかけてきたのが相崎であった。俺に告白をしたぐらいの女であるのにそんな辛らつな言葉をかけるのはどうかしているぜ。
だが、今心の中で思ったことを口にすることはない。
「ああ、来たよ。で、だ。今日は総裁のところに連れて行ってもらえるか?」
「……」
俺が本題を単刀直入に言う。
相崎相手に腹の探り合いなんかしていると時間がもったいない。
この女に対して俺の敬意というものは存在していないから俺も辛らつなことを言う。
俺の適当な態度に対して相崎も何か思ったのか無言であった。
しかし、仕方なく会話してあげるという感じで話を始める。
「いいよ。今日行くことにしよう」
「ありがとな」
俺は感謝の言葉を述べるだけ述べてそのまま自分の机に向かい座る。
適当に教科書をパラパラめくってこれ以上相崎と会話をする気はないということを伝える。無言の圧力というところだ。
それから1日があっという間に終わり、放課後になる。
俺は正門の前で1人壁に寄り添って相崎を待っていた。
待つこと10分。俺の横を相崎が通る。
「遅い」
俺は文句を言う。
「何よ。ここで普通に会話をしてもいいの? 一緒に帰っているところを見られると問題があるんじゃないの?」
「ふん。それはそうだが。案内をしてもらうことを頼んだんだ。行くぞ」
俺は、相崎を置いて歩き出す。
「こんな勝手な人だったなんて」
相崎が後ろで何か言っているが俺は何も言わない。
そう。俺は勝手な人だ。
それを否定することなんかしない。
まあ、相崎の話を聞いていないふりをするだけでいいんだけどな。
そして、日本愛護社の本部にたどり着く。
少し前に来たばっかりだというのにものすごく懐かしく感じてしまう。不思議なことだ。
「入るよ」
相崎が本部の中を俺に案内していく。
俺も前に1回来ただけなのでこの建物の構造というのはよくわかっていないのでとても助かった。
「おう」
相崎に付いていく。
そして、前に来た時同様総裁室にまで案内される。
「ここに総裁が」
前回会ったあの人ともう一度交渉するのか。俺はそれを思うといろいろと複雑な思いがあふれてしまうがこの組織を終わらせるためにも今日、この場を持って絶対に総裁になりこの組織を解散させてやるんだ。
コンコン
相崎がノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
中から前に聞いた覚えのある総裁の声がした。
中に無事いたらしい。
「来たか。野田君」
「ええ、お久しぶりです。小沢総裁」
この日本愛護社の総裁小沢真一が俺の前に現れた。
「何をしに来た」
小沢は俺に対して威圧的に接してくる。
まあ、そりゃあ前回のあの態度を取ったってことが向こう側に警戒させているのだろう。それは俺が行ったことなので仕方ないと思う。
しかし、今回は前回とは異なる。
単刀直入に俺は話を切り出す。
「俺を総裁にしてください。総裁になることを前回は断りましたが、気持ちが変わりました。なので、ぜひ俺を総裁に」
俺は総裁にしてほしいと言う。
そのことに小沢はかなり警戒した表情をする。
「何が目的だ?」
「目的……それを今言うと思いですか?」
俺らの中で無言の時間ができた。
無言の間で駆け引きが行われる。
「わかった。野田君。君に総裁の職を譲ろう。任せた」
少し時間が経ちついに小沢が口を開く。
俺に総裁職を譲ってくれるそうだ。
これで俺の当初の目的の1つが無事達成した。
「ありがとうございます。では、いつから総裁に?」
「何言っているんだ。総裁になるには選挙で当選しないとだぞ」
「……は?」
俺は小沢が言っていることが分からなかった。
選挙って何だ。
「選挙とは?」
「この組織のリーダーたる総裁としての資質があるのかきちんと選挙で選ぶんだ。この組織に加盟している総勢10000人のメンバーによる。だから、私は総裁職を引退し君を支持するが君次第だ次の総裁になるのは」
「……」
相崎は横でニヤニヤしていた。
あ、あいつ。このことを絶対に知っていたな。
どうやら俺の目的を達成するにはまだまだ時間がかかりそうだ。




