第49話 言い訳
翌日。
俺は前日のことを思い出す。
無理やり相崎にキスをされた。
それは俺にとってのファーストキスであった。
衝撃的な出来事であった。彼女とすらまだキスをしたことがなかったのに他の女子としてしまったのだ。美咲に何と言えばいいのに分からない。
素直に言ったら美咲に怒られるだろう。怒られるで済むのか心配である。と、なるとこのことは黙っておいた方がいいのだろうか。でも、こういう後ろめたいことってすぐにばれるっていうしな。
学校への足取りが重かった。
そもそも学校どころか今の俺は布団から出ることもできていなかった。
「もう少し寝ていた」
学校さぼっちゃおうか。
そんな気持ちに寄っていた。
かなり気持ちが参っていた。
最近、いろんなことが起きているし、今日ぐらいさぼってもいいだろう。
自分の中に何とかして休む肯定的な理由を作ろうとする。
「雄一郎、朝よー、起きなさーい」
母さんが俺を呼んでいる。
ああ、起きなきゃダメなのか。
いや、ここは狸寝入りでいこう。もしも、上に上がってきたら咳をして風邪をひいているかのようにみせかければいい。
うん。そうしよう。
しかし、母さんは上がってこなかった。
ああ、俺のことを無視か。
それか、俺が自発的に下りてくるように試しているのだろう。
母さんの考えは長年一緒に暮らしているということもありよくわかる。
だからこそ、俺は起きようとしなかった。
たとえ、時計の時刻が8時20分を指していたとしても。
「8時20……これはもう休むしかないな」
むしろ、休む覚悟を決めることができた。
今日一日は家にこもることができる。
何てポジティブに考えることができるんだろ。アハハハ。
うん。乾いた笑いしかでてこない。
「ぐぅぐぅ」
「雄一郎ーーーーーーーーーー」
そして、そのまま俺は眠りへとついた。
最後に母さんが俺を呼んでいたような気がしたが、それを俺は全部無視してぐっすりと眠ることにしたのだった。
だって、学校に行きづらいんだもん。
美咲への言い訳が思い浮かんだら学校へ行くことにした。
寝ている間に言い訳でも考えることにするか。




