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第42話 問答中

 お待たせしました。試験がとりあえず一次が終わったのでぼちぼち書かせていただきます。


 翌日。

 俺は相崎に総裁になるかの話をした。


 「で、野田君。決めたの?」


 「ああ」


 俺は一回呼吸をして結論を述べた。


 「俺は総裁にはならない」


 真剣な目で相崎を見た。

 相崎はやっぱりそうかというような目をしていた。


 「わかったわよ。もう無理やり誘うのはやめておく。どうする直接会いに行く?」


 「できれば会いに行きたくはないんだが……」


 「わかった。こっちから伝えておくわ」


 「ああ。頼む」


 俺は、その話を終えるとすぐに相崎と別れて家に帰った。

 俺が断った理由。それはやっぱり家族を裏切ることができないということだ。もう親父に迷惑をかけたくない。その思いの方が勝った。ましてや親父は総理大臣になる。そうであるならば親父の邪魔をしてはいけない。俺のせいで親父が総理になれないという事態だけは何とかして回避したいと思った。その枷にならないためにも断ったのだ。

 もちろん、俺自身やっぱりなりたくはないという思いもあった。

 一瞬悩んでしまったが、右翼は右翼。もう俺はあんな活動をしないと誓ったのだから関わることはしない。


 「雄一郎、少しいいか?」


 俺は、久しぶりに家に帰ってきていた親父に呼ばれた。


 「ん? 何か用事があるのか?」


 「ああ、少しな。聞きたいことがあってな、いいか?」


 「ああ、問題はないが……何か改まってどうしたんだよ」


 親父が妙にまじめな顔をして聞いてくるので俺の方もかしこまってしまった。

 しかし、聞きたいこととはいったい何のことだろうか。ま、まさか俺が右翼団体にスカウトされたことがバレているとか……そ、そんなことないよな。アハハハ。


 「そのまさかだぞ」


 「え?」


 「お前、普通に口に出して言っていたからな。やっぱり右翼団体の奴らがお前に接触してきていたのか」


 「……」


 「おいおい、何だ無言か? 何か言わないと弁明もできないぞ、雄一郎」


 む、無言になるに決まっている。

 そもそも弁明も何もない。

 俺は右翼団体に接触したのは事実だ。親父に迷惑をかけないと過去に約束をしたのにも関わらずまたそのような団体と接触をしてしまったのだ。怒られて当然の行いになる。


 「弁明はありません。俺は会いました。事実です」


 「そうか。素直だな」


 親父は俺が素直に言ったことが驚くことだったみたいだ。

 俺だって素直に話す事だってあるさ。

 それに親父には逆らうことなんてできないのだから。


 「でも、その誘いには断りました。今後一切かかわることはありません。それだけは誓うことができます」


 俺はもう二度と関わることはない。

 それは覚悟していることだ。


 「本当か?」


 前科を持っている俺だからこそ親父は疑う。

 しかし、俺はそれについて強く肯定する。


 「ええ、もう二度としません。信じてください」


 親父は一回ため息をつく。

 ん? なぜ、ため息をつくんだ。わからん。


 「いや、まあ、信じたいのはやまやまなんだがちょっと問題があるだろう。相崎だっけか? お前のクラスメイトに右翼団体関係者がいるだろう。彼女が接触してくることは今後もあるだろう。それについてはお前はどうやって切り抜けていくつもりなんだ」


 「そ、それは……」


 相崎がクラスメイトにいることを親父はよく知っているな。

 やはり与党の重鎮政治家だけあってそのあたりの情報はいとも簡単に知っているぞということなのか。俺は親父の情報網のすごさに驚嘆してしまった。


 「難しいだろ。だが、私に信じろと言ってきた以上お前は相崎という女の対策をしっかりと練っておけ。そうでもしないとまた絡まれてしまうぞ」


 こくり。


 俺は頷く。その通りであるからだ。

 俺がこれからも何事なく生活をしていくためにはやはり相崎がネックになってくる。相崎とどう距離感を取っていくのかそれが問題になる。


 「……どうすればいいですか?」


 「そんなこと自分で考えろ」


 俺は親父にどうすればいいのか意見を聞いてみる。

 しかし、帰ってきた答えは自分で考えろと答えになっていない返答であった。自分で考えろと言われてもクラスメイト相手に絡まれてしまわないように過ごすのは至難の業だと思うのは俺だけであろうか。今まで俺が陰キャであってクラスメイトとまったく話す機会のない人間であったのならばクラスメイトと関わらないなんてことは簡単にできるはずだ。しかし、そんなキャラで通してきたわけじゃない。クラスメイトと適度に会話もするような人間だ。いきなりあるクラスメイトを遠ざけようとしても難しいに決まっている。


 「自分で考えろと言われても難しすぎますよ。これかなりの問題ですよ」


 親父に泣きつく。

 いや、泣いているわけじゃないけどさ。でも、自分ひとりで考えるにしては対策を考えるのが難しすぎるよ。


 「うーん。転校するか?」


 「ふぇ?」


 「転校すれば解決するじゃないか」


 さすが政治家の親父だ。発想がかなりあれだった。確かに解決にはなっているけどさ、いろいろと問題があるだろう。


 「この時期に転校なんて簡単にできないだろう。高校は義務教育とは違うんだからさ。どこに転校するのさ」


 「どこと言われてもなあ。でも、解決策にはなっているだろう」


 「なっているけど、親父に聞いた俺がバカだった。あと、頑張って自分で考える」


 そう言って俺は自分の部屋に戻って行った。

 しかし、本当にどうにかしなくてはいけないな。明日からどう過ごしていくのか。俺はそのことをずっと考え続けていたら眠れなくなってしまっていた。


 そして、翌朝がやってきたのだった。

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