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第4話 警察署

 「ここが警察署だ」


 俺はそう言って警察署を右手の先で指す。

 三日月警察署。

 警察署の規模としては極端に大きいというわけでもなく小さいというわけでもない。建物にして4階建て。駐車場にはパトカーが5台駐車しているぐらいの規模だ。警察署の入り口には看板が立っており三日月警察署と大きく書かれている。さらにその横の掲示板らしき板には模造紙で『だめ絶対覚醒剤の使用は』と書かれている。指名手配犯の顔写真も数枚貼られている。


 「ここが、三日月警察署ね……」


 相崎は警察署をしみじみと見つめること数分。ようやく、彼女は警察署を眺めるのをやめたようで俺達の方へと振り向きかえった。


 「次はどこを案内してくれるの?」


 そして、そんなことを言った。ちなみにその言葉を聞いて俺は思った。あくまでも俺達は案内したが相崎の希望でいきたい場所を案内しただけだ。なので、今の言いぐさはまるで俺達が好き好んで警察署を案内したかのような台詞だ。それは誠に遺憾である。俺達にはそのような意志はないのであるから。


 「そうねぇ~」


 俺がごちゃごちゃと頭の中で考えている間に美咲が顎に手を当ててどこか行くべき場所を必死に考えている。少しの間、考えたらしく、その結果美咲が次に行くべき場所として指示したのはどこかというと、


 「よし、次はやっぱり女の子らしくショッピングにでも行きましょ。この先に最近オープンした巨大ショッピングモールがあるの。そこで何か買い物でもしましょ」


 美咲は買い物に誘うことにしたみたいだ。ただ、俺としてもその意見は賛成であった。これ以上変な所には行きたくはなかった。だからこそ、ショッピングというのは最善の選択肢に思われた。


 「……ショッピング、か。うん、いいよ。行こう行こう」


 相崎は案外あっさりと次の行先に納得をしてくれた。俺はてっきりどこかまたまたおかしな場所へ連れて行ってくれろ言うと思ったがそういうことがなくてともかくよかった。

 俺達は歩き出した。

 俺は隣りを歩く裕也に小さな声で声をかけた。


 「おいっ、裕也。これをどう思う?」


 「これって何のことだ?」


 裕也は俺の質問に対してとぼけたふりをしてきた。俺は裕也の態度の対しては若干きたが、その怒りを抑えて会話を続ける。それに、こいつのこの態度には何か考えがあったのだろう。俺はそう考え裕也との会話を続行した。


 「だ・か・ら、相崎が素直にショッピングすると言ったことだよ。俺的には何かがあるような気がするんだよなあ。それで、俺は裕也の意見が聞きたくて聞いてみたの」


 俺はわざわざ説明をしてやった。まあ、説明をしなくてもこいつは分かっていたと思うが俺は説明した。俺をからかっているのを理解した上のことであったが一応だ。


 「ん? ああ、そのことか。そうだな、まあ危ないと思われている相崎美咲としてもやはりは1人の女子だということじゃないか。なんだかんだ言って相崎って美少女って言われる部類だろ。それなりのことを思っているんじゃないか?」


 「そうかなあ?」


 俺は裕也の考えに対して納得はいかなかったが、当の裕也の方はその考えが正しいと思っているようだ。俺はその言葉に対して疑心を持っているのを察したのか続けて裕也は言う。


 「まあ、人はみんないろんなことを考えるだろ。美少女だとしてもそれは同じだ。見た目と思想は別物だしな。それに、右翼に対する俺達のタダの偏見というのも今の俺達には当てはまるんだよな。だから、ショッピングの際の相崎の反応を見れば雄一郎もきっと相崎美咲が1人の女子だということを理解できると思うぞ」


「……」


 裕也の言っていることは理解できる。俺の右翼に対する偏見というのかもしれない。だから、本当ならば俺達は相崎を避けるのはいけないことである。しかし、人間はどう思っても差別というのをやめることができないものである。俺は歴史が好きであり得意である。だからこそ、このことはよく理解しているつもりだ。有史以来人類において差別というものがなかったなんて時代はほとんどない。まして、文明が発達しはじめるとそれは顕著に表れる。日本史においては稲作が伝わり集団のなかに統率者が生まれることで差という概念が出てくる。世界史においても古代エジプトでは王が統率し生まれ、中国でも国王または皇帝によって万民を支配する古代王朝が生まれる。

 だから、偏見というものをなくす。それはとても素晴らしい理論、考えだとは思う。しかし、俺はこう考える。そんなことは不可能だと。


 「雄一郎はどうせそんなことできないと考えているんだろ? まあ、それも各自の考え方だ。だが、人権というのが今の世の中、民主主義の原則と政経でならっただろ。だから、その考え方は頭の隅に置いておけよ」


 裕也は俺の考えていることを見破ったのか最後にそう言って前の方へと歩いて行ってしまった。逆に俺はその場に立ち止っていた。

 人権。確かにそういう考え方はあるがそんなのはきれいごとだ。そう思うこともある。人権の歴史は世界の内容であり政経の内容であるのであまり詳しくはない。俺は政経は好きではないからだ。だが、そんな俺でもうっすらと覚えている知識からすればイギリスのマグナカルタ、名誉革命、アメリカのアメリカ独立戦争、フランスのフランス革命これらがキーワードになることだけは覚えている。自由権、社会権、最近出てきた新しい権利いろいろとあることも分かる。でも、人権とは何ぞやと思うことがある。それは誰だってわかることのないことだと思う。人権があるから人々の暮らしは良くなるのか? はたしてそれは本当か。俺はいろいろなことを考えていたが結局のところ最後にたどり着いたことは……


 「まあ、考えても仕方ないし、様子でも見ていろいろと考えるか」


 結論が出なかった。こんな高尚なことを俺が考えていること自体が筋違いなのだ。だから、考えても無駄だ。

 俺は考えるのをやめると立ち止まっているのをやめて、その場を跡にし前を歩いている相崎、美咲、裕也に追いつくため走ったのであった。

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