第39話 総裁室
日本愛護社の本部に俺は相崎の案内で入った。
俺があのネットで作った組織がこんな立派な組織になっているとは思ってもいなかった。本部は某政権与党の本部のようなつくりをしていた。立派なビルであった。どうして普通の中学生がネットで作った組織というものがこんな立派な組織団体へと変貌してしまったのか気になるところだ。
俺は相崎の案内でエレベーターに乗る。相崎が押したのは5階のボタンだった。5階には何があるのだろうか。
チーン
5階に降りると目の前にある部屋があった。総裁室。つまりこの組織の長が座る席になる。相崎は俺を総裁に会わせようとしているのか。
「ここは?」
俺は分かっていながらぼけておく。
「総裁室よ。あなたには総裁に会ってもらいたい」
やっぱりか。
俺の考えは的中してしまった。誠に残念なことだ。どうして俺は総裁に会うのか。納得がいっていない。
「どうして総裁に会うんだ?」
「それは、あなたがこの組織を作った……つまりは創業者だからしっかりと総裁が話しておきたいと言っているのよ。だから、会ってちょうだい」
会ってちょうだいって俺は別に会うつもりはないんだが。
「……会いたくないんだが」
「それはだめ」
だめと言われてしまった。
しかも、相崎のだめという言葉はかなり強いものであった。どうしてそこまで断固として否定したのであろうか。
どうも最近相崎のペースになっているような気がする。
「ええー、入りたくない」
俺が駄々をこねる。
すると、相崎が何か思案顔になる。
「そうだね。わかった。会いたくないのね。でも、私にだって考えがあるわ。ねえ、野田君。水出さんとは付き合い始めたんだよね」
「……ああ。そうだよ。だから、俺はお前の告白を断った経緯があるんだが」
「今から私と野田君がデートしているって連絡しようと思っているんだけどどう?」
冷や汗が流れる。
それだけはだめだ。
絶対にバレてはいけないことだ。俺が相崎に告白されたことは美咲に言っていない。そして、今相崎と一緒にいることも美咲には伝えていない。そんなことがバレてしまったら確実に俺達は破局する。それだけは防がなくてはいけない。絶対にさせてはいけないことだ。俺はそう思った。
「くぅ、わかった。総裁に会おう」
俺は相崎に屈した。
こいつ、こんな切り札を持っているとは全く予想していなかった。何てふざけたやつなんだ。俺は相崎をにらみつけるが、相崎はそれを軽く受け流す。何て余裕を持っているんだ。
コンコン
相崎が部屋の扉を叩く。
「入って良いですよ」
中から男の人の声がする。
「失礼します」
相崎がそう言って入って行く。
俺もそれに続いて入る。「失礼します」とは言わない。敬意を持っていないから当然のことだ。今だけ常識がないと言われてもいいとしよう。
中に入るとやはり男の人の声がしていたので男性がいた。髪の毛は白くなっており年は50代後半だと思われた。
しかし、俺にとってはあまり関わりたくはない相手だということだけは察することができた。
「やあ、野田雄一郎君。わざわざ来てくれてありがとうね。私の名前は小沢真一。さっそく悪いんだが1つ頼みたいことがあるけどいいかね」
「頼みたいこと?」
俺は聞き返す。
「ここの総裁になってくれないかね?」
俺はその言葉に対して絶句したのだった。




