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第38話 失敗談



 相崎は俺をどこかへと連れて行った。

 俺はどこへ行くのか何回か聞いてみたがずっと教えてくれないで付いてきてとだけ言われ続けた。

 そして、急に相崎の足が止まった。

 

 「着いたよ」


 どうやら目的の場所についてようだ。

 さて、俺はどこに連れて来られたのか。周囲をしっかりと確認する。


 「ここは……何でここに……」


 俺が相崎に連れて来られた場所。そこはかつての俺と深く関係がある場所であった。


 「日本愛護社。あなたがかつてネットで作った保守サイト、それを元にして結成された右翼団体の本部よ」


 そう。

 俺のかつての過ち。

 俺がここまで発展するとは当時思ってもいなかった。ネットを軽く見ていた。自分が行ったことがここまで発展するとは思っていなかった。


 「何で、俺を、ここに?」


 「何で、ね。私はね。あなたには感謝しているのよ。あなたがこの組織を作ってくれなければ今の私はいない。だから、あなたにはもう一度この組織のことを知ってもらいたい。作った当事者にはしっかりと確認してもらいたいの」


 「いや、俺はもう関係ない。俺が作ったんじゃない。周りの奴らが勝手に作っただけだ。俺はただまとめサイトを作った感覚だっただけなんだ」


 「それは野田君の考えよ。周りの人はそうとは思っていなかった。あなたは自分がやったことが大きくなりすぎて怖くなっただけよ」


 「……」


 ああ、図星だ。

 そうだ。俺は怖くなったんだ。

 だから、関係のないふりをした。父親に迷惑をこれ以上かけないためにも。


 「俺は、俺は父さんの迷惑になるようなことをしたくなかった。父さんが議員じゃなくなればうちはお金が無くなる。家族の、家計の危機だったんだ。お前にはわかるかっ! そんな右翼ごっこで給料は得られないんだぞ! 生きることの大切さを俺は知ったんだっ! 今更俺に口出しをするな!」


 俺は怒りをぶつける。

 俺は自分が愚かだった。だから、やめた。それだけだ。それだけなのにどうして今更俺をこの場に戻そうとするんだ。


 「そうね。それがあなたの言い分なのね」


 「ああ、そうだ。これが俺の言い分だ」


 「でも、私には私の考えがあるの。あなたにもあなたの考えがあるのと同じようにね」


 「じゃあ、相崎、お前の考えは何なんだよ。俺にこの組織を見せてどうなるんだ! 組織を知ったところで俺は戻んねえよ」


 「戻らない……まあ、そうなってしまっても仕方ないわね。しかし、見ないで判断をするのはやめてほしいね。私はあなたに見てもらうだけはしてもらいたい」


 「……」


 相崎はなかなか引き下がってくれなかった。

 俺は組織を見ることすらしたくない。相崎の言っている通りに俺は逃げた。逃げた人間ということだからかなりの負い目を持っている。組織を本当は意識したくはない。どうしてあのネットでやったことがこんなに発展してしまったんだろうか。

 だが、しっかりと確認することも俺の責務なのかもしれない。

 だとしたら、見ることだけでもした方がいいのかもだ。

 じゃあ、不本意ながらやることは決まっている。


 「わかった。見に行こう」


 俺の言葉に相崎は納得したのかしなかったのかわからない思案顔したが、すぐに「じゃあ、行きましょう」と言って俺をその場所へと案内した。


 次回は来週月曜日です。

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