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第34話 登校中

 美咲と恋人関係になった翌日。

 俺は朝起きて学校に行こうとした。

 

 「はぁ~、眠い」


 瞼がとても重たく学校に行く気なんて完全になかった。しかし、高校生という職業? いや、職業ではなく身分か、身分である以上学校に行くことは基本的には義務なので学校に向かう。もちろん、高校は義務教育ではないし、悪い人はさぼるという発想があるのかもしれないが、俺にはさぼるほどメンタルが強くないんだ。

 何て、どうでもいいようなことを考えながら玄関の扉を開き家の外へと出る。


 「おはよう」


 「ああ、おはよう」


 玄関を出ると珍しく声がかけられた。

 朝からおはようって声をかけてくれるなんていい人だな。そんな風に思った。って、俺に声をかけてきた人物って。


 「美咲?」


 「どうして雄一郎。寝ぼけている?」


 俺に声をかけてきたのは美咲だった。


 「もしかして俺を待っていた?」


 「そうよ。一緒に学校に行こうと思ってね」


 「え、俺達付き合ったって思われないかな?」


 「何、今さら心配してるのよ。いつも一緒に帰ったりしていたからみんなも不思議に思わないわよ。それに付き合ったってバレたらみんなからはこういわれると思うわ。ようやくくっ付いてくれたかって」


 「そうかな」


 「何で、男の人って付き合ったとたんに周りの人の目を気にするのかしら。もうちょっと堂々としてよね」


 美咲に朝から説教をされた。しかし、美咲の言いたいこともすごくわかった。確かに俺は人の目を気にしすぎていたのかもしれないと思う。そうだ。もっと堂々とすればいいんだな。


 「わかったよ、もっと堂々とするよ」


 「そうよ。そうしなさい」


 俺は堂々と学校に向かって歩いて行った。


 ◇◇◇


 「ねえ、雄一郎」


 「何だい、美咲」


 「雄一郎のそれが堂々となの?」


 「え? 何か不自然なことがあるかい?」


 「えっと、どこからツッコミを入れればいいか分からないけどとりあえず……歩き方すごい不自然よ」


 「え?」


 俺は自分の歩き方を見る。


 「あれ?」


 知らないうちにロボットの様にカチカチと固く不自然な歩き方をしていた。え、ええっと何でこんなに緊張して俺は歩いているんだ。

 どうしてだ?

 自分でも分からないということを美咲の方を見て伝える。美咲はため息をついて言う。


 「無意識って怖い」


 「そうだよ。俺、何も意識していないから」


 「体は正直みたいよ。もう、どこの世界にロボットの様にカチカチと固くなって歩いて学校に行く人がいるんだか」


 「それはそうだけど」


 「しかも、学校に近づいていくにつれてどんどんと固くなっていくし。対岸の方を歩いている同じ学校の人がクスクスって笑っていたわよ」


 「え、嘘。そんな」


 「だから、もっと自然に歩きなさいよ。私まで恥ずかしい」


 「ごめん」


 「わかればよろしい」


 「学校まで頑張って自然に歩いてみせる」


 「いつもはどう歩いていたのよ……もう、ばか」


 美咲にバカと言われてしまった。が、その言葉はとても罵倒しているものではなく優しいものだった。美咲は美咲でどうやら照れていたらしい。

 俺達はそのあとは普通に学校に行けた。

 美咲が照れていることが分かったおかげで俺の緊張がだいぶ和らいだからだ。学校に着くまで案外バレないものであった。いつもとやっぱり同じだったからだろうか。多分、そうなんだろうな。


 次回は火曜日です。

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