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第33話 返答中

「じゃあ、私と付き合ってよ」


「え?」


 美咲の言葉を俺は信じることができなかった。

 今、俺は美咲に告白されたのか。

 信じることができない。

 俺は「え?」という人事を発しただけで動揺のあまり何も話すことができなかった。頭の中ではいろいろなことを考えている。しかし、考えることができてもそれを言葉に置き換え発することが全くといってもいいほどできなかった。

 美咲を見る。

 美咲の顔はかなり真っ赤になっていた。しかし、俺の方をしっかりと見ていた。真剣そのものであった。ああ、これは冗談ではない。俺はすぐにわかった。俺をからかっている。そういう訳じゃないことが分かった。

俺と美咲の関係は幼馴染だ。ずっと昔から一緒にいた。お互いのことをよく知っていると思う。しかし、俺が右翼だったことは隠している。知らないことももちろんある。しかし、最近いきなり現れ俺に告白をしてきた相崎よりは美咲の方がよく知っている。

それに俺も美咲のことが好きだ。しかし、幼馴染だという関係があるからそれ以上先に行くことが怖かった。振られたら元の関係に戻ることができない。そんな風に感じていた。だから、俺は踏み出すことができていなかった。しかし、美咲から告白してきた。

これは、チャンスだ。

付き合う。

恐れるものはない。

恐れるものはないぃ……あるとしたら、相崎からの怒りかもしれないが……って、何で俺は今美咲のことを考えなければいけないはずなのに相崎のことを思い浮かべてしまったんだ。

美咲に対する言葉はもう決まった。

俺の思いはすでに決まっている。

なのに、どうしてどうして俺の頭の中に相崎が出てきたんだ。俺にはわからない。相崎のことを無意識のうちに考えてしまっている。実は相崎のことが俺は好きだったのか。いや、そんなことはない。俺は右翼が嫌いなんだ。相崎のような見た目がかわいい女子だとしても中身が典型的な右翼であるとするならば俺は付き合うようなことは絶対に出来ない。それは俺の絶対に曲げてはいけない信念のようなものだと思う。だから、相崎のことを今は考えるな。絶対に考えるな。俺が今考えるべきことは美咲に対してどのような言葉で返事をするかということただ一つだ。


「み、美咲!」


「ちょ、ちょっといきなり大きな声を出さないでよ」


「あ、ごめん」


俺は緊張のあまり大きな声を出してしまった。ああ、完全に失敗だ。俺がものすごく緊張しているということは美咲も完全にわかっているだろう。それぐらいの不自然さがあるなあということが自分でもわかっちゃっている。

ああ、恥ずかしい。本当に恥ずかしい。


 「美咲。あのさあ。さっきの返事だけど……」


 「……う、うん……」


 「俺もさ。美咲のことが好きなんだ。でも、美咲とはずっと幼馴染でこの関係を壊すことはしたくないってずっと思っていた。でも、今日美咲から告白してくれてとてもうれしかった。だから、俺と、そのお付き合いしてください」


 「あ、ありがとう。な、何か恥ずかしいね」


 「そ、そうだね。幼馴染と恋人って何が違うんだろね」


 「名前の響き?」


 「それはそうかもしれないけど……でも、美咲どうして急に告白なんてしてきたんだ?」


 「え、ええっと……内緒」


 「えー、教えてくれたっていいじゃん」


 「いや、だめ」


 「ええー」


 そんなこんなで俺には彼女ができた。

 美咲のことが前から好きだったのでとてもうれしい。そして、実はもう一つ美咲には悪いが俺にとってもう一個利点があった。

 これで、相崎から逃げることができる。

 美咲には悪いが、こっちも俺にとっていいメリットだと思っていた。でも、こんなことを思ってしまう彼氏で本当にすまないと思っている。でも、その分この関係を楽しみたいと思います。

 俺らはいつもよりも楽しく、そして緊張しながら家へと帰って行った。


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