第23話 校門前
お久しぶりです。
半年ぶりの投稿になってしまいましたが、ぼちぼち再開していきたいと思います。
放課後になった。
俺は、特に用もないので帰ることにする。
相崎がいない。
これは俺にとってとてもいいことだ。
あいつを警戒しなくていいからだ。
告白されて今、俺はあいつの顔を見たらとても冷静でいられる気はしない。
あいつは右翼だ。危ない女だ。きっと近づいてはいけない女だ。
俺は、あの女に対してかなりの警戒をしている。告白してきたことにも裏があると思っている。あの女、きっと俺の過去を知っている。絶対に知っている。
だから、かなり警戒しなくては。
俺は、そんなことを考えながら学校の校門を出ようとした。
すると、
「ねえ、野田君」
警戒しなくてはいけない。
警戒だ。
今、どこか相崎の声らしきものが聞こえたが、それは俺がかなり警戒をしているから聞こえているだけだ。
そう、幻聴だ。
「の・だ・く・ん」
気のせい。
気のせい。
「ねえ、野田君」
気のせい。
気のせい。
「ふぅ~」
「うわっ!」
いきなり自分の耳に息をかけられた。
驚きとくすぐったさにとても動揺し、ジャンプしてしまった。
「うわっ! 出たなっ!」
「出たって、何よ。出たって」
俺は、思わず本音が出てしまった。
幻聴だ。気のせいだ、と言って誤魔化していたが相崎はいた。
「ってか、学校はどうしたんだよ」
学校を今日休んだ人が校門の前に堂々といていいのかよと俺は思った。
これ、次に登校した時に先生に怒られるやつだろうな。ああ、可哀想に……なんて、俺は思わない。相崎の場合は自業自得だ。
冷たい? 知らんな。この危険な女には同情などしてはいけないんだ。
そうでもしないと俺の身が危ない。
俺の普通の高校生活が危ないんだ。
「学校? ……ああ、学校ね」
何で学校という言葉に?がついたんだ。
俺は相崎のその言い方がとても気になった。
ああ、学校ねってそんなにお前にとっては学校という存在は軽いものなのか。
「ああ、学校ね。って、おい。学校には来いよ。ズル休みはしてはいけないんだぞ」
「いいじゃん、いいじゃん。そんな堅苦しいこと言わないでよ。学校の先生ではないんだから」
「いや、学校の先生じゃなくても言うから。ズル休みがいけないってことは絶対に誰でも言うから」
俺は、相崎のその言葉に対して思わずツッコミを入れてしまう。
いや、学校の先生じゃなくても注意ぐらいすると思うぞ。学校に、高校は義務教育ではないが、入試を受けて、受かり、進学をしている時点で学校に通うことは義務であるかと俺は考えている。
たまにズル休みをしている奴(街中で映画などを見に行くリア充)がいるが、俺はそのような人を見ると無性に腹が立ってくる。
だから、そんなような奴らと同じく学校をずる休みしてさぼった相崎に対して普段俺が何とも言えない思いでぶつけることができない気持ちを八つ当たり気分でぶつけた。
「そこまで怒らなくてもいいじゃん。野田君」
「いや、俺は真面目だからここのところはしっかりと注意するぞ」
「何? 私のことが心配なの? べつに不良とは関わっていないから大丈夫よ」
「……」
そういう意味で注意したわけじゃないのだけどな。
相崎は俺が意図していたものとは違う反応をしてきた。
俺が、相崎のことを心配している。つまりは、相崎から見れば自分のことを心配してくれているのだと俺の言葉を取られてしまったみたいだ。
決してそういう訳で言ったのではない。
きちんと、はっきりと言うが、相崎の心配を俺は1パーセントたりともしていない。それなのに、相崎は俺の言葉を誤解しやがった。
誤解するような言い方をしてしまったどうかは分からないが、心配はしてないぞ。俺は絶対に。
本当だぞ。本当。
俺は、相崎のことなど全く心配していない。
「ところで野田君。ちょっと、付いてきてくれるかな?」
「……拒否権は?」
「ないよ」
笑顔で返された。
どうやら俺は相崎にどこかに連れていかれるらしい。
どこに連れていかれるのか?
行き先を聞いてみてもまったく教えてくれなかった。
学校をさぼった相崎であったが、どうやら俺をある場所に連れていきたかったらしく学校の前で待機していたそうだ。
いや、だったら同じクラスなんだから授業受けて終わったら俺に声をかけて連れて行けばいいだろう。
違う。これだと、まるで俺が連れていかれることを容認してしまっているみたいな発言だ。断じて俺は相崎に自らの意思で付いていっているわけではない。行きたくないと今日披見を発動したうえで無視されたから仕方なく付いていっているだけだ。うん。そうだ。その通りだ。俺は犠牲者なんだ。被害者だ。
「どこに連れて行ってくれるのかだけはせめて言ってほしい」
「……」
俺の願いは無視されてしまった。
俺は、果たして相崎によってどこに連れて行かれるのだろうか?




