第2話 放課後
俺の名前は野田雄一郎。3月7日生まれ。魚座。好きな食べ物ハンバーグ。嫌いな食べ物ホタテ。スキナスポーツバスケットボール。嫌いなスポーツ野球。好きな教科日本史。嫌いな教科政治経済。
俺は日本史が好きなのに政経が嫌いな人間だ。そのことはよく言われる。日本史が好きなら政経も好きだろうと。だが、実際問題俺にはそんなことはできない。嫌いなものは嫌いだ。社会科の全部を許容できるような人間ではない。第一政治のどこがおもしろいんだ。確かに日本史においての政治史特に昭和前期までなら面白いと思う。だが、戦後政治なんかまったく興味を持つような要素が見当たらない。
閑話休題。
話がずれてしまったので元に戻そうと思う。
さて、俺はそんな政治が政治の世界が嫌いな人間であるがあろうことか俺の目の前には政治の擬人化ともいうべき存在の女が転向しやがってきた。それが俺の隣の席になってしまった転校生、相崎香奈だ。相崎は転校してすぐに本性を現しやがった。
あれだ、あれ。
今話題の右翼というやつだ。右翼といえばやはり思いつくのが保守派だから戦争大好きという部分だ。現に現在の日本の内閣総理大臣阿部信二を見る限りそういう印象しかない。新大久保とかでのK国人排斥運動とかも良い例だ。ヘイトスピーチとかもそれだ。
だから、俺はそんな奴らが嫌いだし、巻き込まれる気もさらさらない。そう誓った。はずだったのだが……。
「それでは、相崎さんは野田君の隣の席ね」
例の右翼少女はどうやら俺の隣の席になるらしい。どうせならもっと離れた位置になってほしかった。
ただ、自分の主義や周りの人とおかしくてもいじめはダメだ。とりあえず、差別もダメだ。表面上は仲良くしておかないと。あくまでも穏便に穏便に。
いや、待てよ。相手は右翼だ。過激な奴相手に穏便に対応したらそれは逆に穏健中道または左翼とも思われて逆に喧嘩を売られてしまうのではないか。だとしたらどうすればいいんだ。
「……だ君、野田君」
「はっ」
ずっと考え事をしていた。どう対応すればいいのかということをだ。
誰かに呼ばれた。誰だ。僕の名前を呼んだのは。
「野田君よろしくね」
その声の持ち主は相崎であった。
「ああ、よろしく」
あまりに唐突であったので普通に返事をしてしまった。
やべぇよやべぇ。どうしよう、相崎に目をつけられてないかな。左翼のレッテル張られていないかな。俺の頭の中はそれだけで一杯であった。
超美少女から声をかけられたのはうれしいとか言っておきたい気持ちもあるがやはり右翼に絡まれるのはいやな話だ。
せめてもう、からまれないでくれよ。
だが、それから俺が心配していたような出来事は起こらなかった。授業中相崎は普通の優等生のように真面目にノートに黒板の板書をしていた。先生からの問題も軽く答えることができていた。国語、日本史、数学、英語、化学どれも完璧であった。授業中の間だけは俺は朝あったことがまるで嘘だったかのように思っていた。
キンコーンカーンコーン
そして、6時限の終わりを告げるチャイムが教室中に鳴り響いた。
「えー、今日の授業はここまで」
先生がそう言うと、クラスの全員は大きく背伸びをして「やっと終わったぜー」「今日どこに行く?」などと学校が終わった後のことを各自仲の良い者同士では話し始める。
俺は部活を特にやっていない。だから俺も他の奴らと同じように仲の良い席が後ろの親友の田町裕也と今日のこの後の予定について話し始める。
「裕也、今日はこの後どこに行く?」
「そうだなー」
俺と裕也は毎日のようにとまではいかないものの学校が終わったらよく遊びに行っている。といっても、遊びに行く場所はゲーセンとかではない。あんまり金を使う場所には行きたくないというのが俺達2人の共通認識のため、だいたいは俺の家か裕也の家で格闘ゲームをするのがオチだ。ただ、俺は格闘ゲームが好きなのであるがそこまで強くない。いつも裕也に負け続けている。そろそろ勝てるようになりたいがそれはなかなかかなわない。だから、そろそろ格闘ゲーム以外に何かやることを見つけたい。
「雄一郎と裕也は今日も格闘ゲームをするの?」
俺達の会話に後ろの方からやってきた美咲が加わった。
「そうだけど、それが?」
俺は美咲に答える。ちなみに美咲ともよく遊ぶ。というよりも、俺、美咲、裕也の3人は小学校のころからのいわゆる幼馴染の関係であり家も近い。俺の家と美咲の家は隣通しであり、裕也の家は俺の家の2個隣にある。ほぼ毎日格闘ゲームをしているというのは家が近いからというのも理由の1つである。
「今日は私も行くわ。今日は何も用はないからね」
「えっ」
俺はその言葉に純粋に驚いた。別に驚いた理由はそこまで難しいことではない。ただ、美咲も女子だし年頃である思春期男子の部屋に行くのは少し戸惑いというものを感じるのではないのかということを思っただけのことだ。
「何よ、ダメなの?」
少し上目づかいで俺の顔を見てくる。
か、かわいすぎる。惚れてしまいそうだ。思春期男子何て所詮そんなものだ。
「あ、ああ、いいよ」
勢いに流されて許可をだしてしまった。と言っても俺には美咲を断る理由というものは存在しないのだから許可を出したところで問題というのはないのだが。それに実を言うと最近はやはり年頃の男女ということもあり美咲との会話の時間もだいぶ減っているのでそう言うのもまあいいかなあと思ったのも事実である。しかし、予想外のことというのは起きるものだ。
「なら、私も行ってもいいかな?」
そこに後ろから新たな声がした。俺は後ろを振り返り声をかけてきたのは──