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第14話 協力中

 「実は……」


 俺はクラスメイトの原口に拉致? られて空き教室に来ていた。そして、原口から質問を受けていた。ただ、原口の方はいまいちパッとしない。ごにょごにょとしていて言いづらそうにしている。何を言いづらそうにしているんだ。

 俺はそんな風に思った。

 何せまだどんな質問が来るのかわかっていなかったからだ。

 俺には原口がどうしていいずらそうにしているのかなんて1つとして見当がつかなかった。だから、こんなことを今は言ってられた。


 「原口。いい加減にしろよ。何が言いたいんだ」


 俺は拉致? られたことに対して若干のいらだちを感じていたのでややキレた声で原口に向かって言う。

 原口は俺がキレたことに驚きそして、動揺する。

 そして、口がごにょごにょしていたのだが、それがさらに悪化し何を言っているのか本当に分からない。こいつは一体何がしたいんだ。

 俺はそう思った。

 だからと言ってほっておくわけにはいかない。別に原口と仲がそんなに悪くないしクラスメイトだ。俺は対人関係についてはうまくやっている自信がある。なので、静かに待っておくことにした。

 人間何事も話すのに時間がかかることがある。あの原口にだってそんなことがあるんだ。俺は少しそれに驚いていた。クラスのムードメーカーである原口もそんなシャイな一面があるなんてな。


 「あ、あのさ、そ、その……」


 ようやく原口が口を開けて何かを話そうとし始めたと思っていたが、すぐにまたごにょごにょしていた。

 何を言えないで困っているんだか。

 俺には俺でいろいろとしたいことがあるというのに。


 「あのさ、原口。いい加減に本題に入ってもらわないと俺としても教室にそろそろ戻りたいんだが……もういいか」


 俺がもう時間切れだと思い原口に伝える。

 まだ、歯切れが悪い。

 俺はもういいやと思い教室に変えるため部屋の扉を引こうとする。すると、覚悟をようやく決めたのか原口が俺の制服に手をかけて俺が外に出ていくのを止める。


 「待ってくれ、話すから野田」


 「お、おおう」


 原口のその必死さに若干引いてしまった。こいつはいったい俺にどんな話をしようとしているんだ。


 「実はさあ、協力してもらいたいことがあるんだ」


 「協力?」


 俺は原口の協力という言葉を反復する。

 原口はどうやら俺に何か協力してもらいたいことがあるようだ。では、何を協力すればいいのだろうか。それをこれから俺に原口が話すのだろう。

 

 「実はさあ、野田って相崎さんと仲いいよな?」


 仲がいい?

 俺が相崎と? まあ、確かに転向してから数日の間だが一緒に帰ったり、付きまとわれたり、変なことを言われたり、そして告白をされた……

 仲がいいというよりも一緒にいることが多いだけじゃないか? でも、相崎の方は俺に告白をしたぐらいだから仲がいいと言っても過言ではないかもしれないが。


 「まあ、ぼちぼちだが……」


 とりあえずは、濁した答えをしておいた。


 「じゃあ、それでさあ。俺、相崎さんのことが好きなんだよ。だから、どうにかして関係を深めたいのだけど……」


 「ぶっ」


 原口のその言葉を聞いてついむせてしまった。

 というよりも、クラスのムードメーカー原口がまさか相崎のことが好きだなんてことを想像もしていなかった。


 「どうかしたか?」


 俺がむせ返りかなり動揺したことに対して原口が違和感を覚えたようで俺に聞いてくる。

 やばい。怪しまれたか。

 俺はさらにひやひやする状況になってしまった。


 「いや、なんでもないが……それよりも相崎のどこが好きなんだよ。あいつ結構危ない思想の持ち主だぞ」


 俺は相崎が転入してきたときの最初のあいさつで自身が右翼であるという危険な発言をしたことを改めて原口に思い出させる。

 原口は俺の言葉を聞いて「あー」となったが、それでもと言い続ける。


 「確かにそうだが、最近の日本は右傾化しているって言っているし、そんなのはもう当たり前じゃないのか? 俺自身は政治についてあまり関心がないんだが、だからこそ危険だと思う気はしないしな。だから、どこが好きって言われたらやはり俺好みの顔とか声とかまあ、かわいいからな。たぶん、言動や思想抜きにして容姿に一目ぼれをしたんだと思う」


 「一目ぼれ、か」


 確かに俺も昔人を好きになったときは、一目ぼれだったし、それは容姿を見てだから原口の言っていることに関して理解できないでもない。ただ、問題は俺としては原口の応援をしたいのだが、相崎にはその気がないということを嫌というほど俺が知っているということだ。

 相崎は俺に告白をした。

 つまりは、俺のことが好きだということだ。俺はまだ返事をしていない。相崎のことをどう思ってるか地震でもまだわかっていないし、美人かわいいと思うが、あの思想には今の俺は共感することができないからだ。少し前までの俺ならば同じ思想の持ち主として仲良くやっていける自信があったが、もう右の世界とはお別れを告げたんだ。あの事件以来。だから、俺は相崎のことを全体的にどう評価するかとなればかわいいが俺にとっては恋愛の対象外にならざる得ない存在というものになるだろう。

 でも、考えてみよう。

 相崎が俺のことを好きであるということを俺は知っている。

 原口はそのことを知らない。

 原口は相崎のことが好き。

 待てよ。原口と相崎をくっつけてしまえば相崎は俺のことを気にしなくなる。うん、そうだ。そうに違いない。

 俺は考えた。

 そして、決めた。

 

 「うん。原口。決めたよ。協力する」


 俺は原口に協力することを決めた。

 すべては、相崎の俺に対する関心を減らすため。そう、そのためだ。

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