第1話 転校生
新作です。めちゃくちゃ政治的なことが書かれていますがライトノベルだということを念頭に書いていきます。
「おい、みんな今日は転校生がいるぞ」
俺達2年5組担任の中園先生(28歳独身男性)のHR開始前のその言葉で今までにぎやかであった教室は一気に静まる。しかし、静まったのは一瞬だけでありすぐさまクラスのみんなは質問を中園先生に対して飛ばす。
「せんせーい。転校生って男ですか女ですか?」
クラスの物好きな女子がまず質問する。うん。定番な質問だ。やっぱりここでみんなが聞きたがることといえば転校生の性別だ。先生はそんな俺達クラスの雰囲気を察してか一拍間を開けてから声を発した。
「女子だぞ」
「「「「やっほおおおおおおおおおおおおおお」」」」
クラスの全て男ども(俺除く)から歓声が出る。一方さっきまで騒いでいた女子は男どもを軽蔑の目で見ている。ただもしも、これで男だったら逆の状況になっていただろう。
「ねぇねぇ、雄一郎」
「ん? どうかしたか?」
俺はそんな男どもを呆れた目で見ていたところを右隣の席の黒髪で身長が160センチぐらい、クラスの中でも美少女と言っても過言ではない部類に入る幼馴染水出美咲 (みずいでみさき)が声をかけてきた。
「雄一郎は気にならないの、転校生のこと?」
転校生のことが気になるか。確かに気になるけど……
「まあ、気になるけど俺には関係ないな。もしかわいかったとしても別に付き合いたいとかそういうこと考えていないし、それに現実的にそんなことならないと思うし」
だから正直関係ない。転校生が女だったとしても別に恋人になれるなんて考えてもいないし、そもそもの話俺はモテないからその転校生の女子に好かれるなんてことが起こるはずがあろうか、いやない。反語を使ったうえで強く否定できるぐらいの自信はある。
それにしても他の奴らは元気だなあ。俺はクラスメイトをやや少し下に見つつも転校生は入ってくるのを待った。
「……関係ない、か」
「ん? 何か言った?」
今隣でボソッと美咲が何か言った気がしたので俺に対して言ったものと思い聞いてみる。ただ、美咲は俺の質問に対してなぜだか分からないが慌ててすぐさま答えた。
「べ、別に何でもない」
「そっか」
別に何でもないならいいや。俺は教室の黒板の方に再び視線をずらした。
「バカ……」
美咲が最後に何か言ったような気がしたが気のせいだろうと無視した。先生は俺達がみんな周りの友達と転校生の話で盛り上がっているのを確認すると教室の外──具体的に言うとドアの向こう側に向かって言葉を発した。
「それじゃあ、入ってきていいぞ」
先生が廊下で待機している転校生に向けて声をかける。
先生の声がした後、教室の扉はゆっくりと横にスライドして開き廊下から1人の少女が入ってくる。身長は160ぐらい、髪はロングヘアーで背中まで伸びている。学校の制服は初日ということできれいで輝いているように見えた。胸は隣りにいる美咲とは違って大きくいわゆる巨乳といわれるぐらいのものであった。やはり、男としては胸に注目がいってしまうところだが何よりも彼女の顔はとてもかわいいというよりも美しいという表現が正しいほど凛としていた。それには俺だけでなく他の男子どもも釘付けになっていた。ただ、その美貌には女子も釘付けになっていた。男女問わず転校生はこのクラス全員の興味を自分に対して釘付けにしたのだ。
そして、誰もが彼女の自己紹介─第一声に注目していた。もとろん、その誰もがの中には俺もいた。先ほどまで盛り上がっていたクラスメイトを軽蔑にしていた俺ですら彼女の美貌に目を奪われたのであった。
「相崎香奈です」
彼女の第一声はいたってシンプルに自分の名前の紹介であった。あれほどの美人であるのだからもっと自分を主張してくると俺は思っていた。
「……」
「「「「……」」」」
沈黙がしばらく続いた。その沈黙は転校生の相崎さんが自分の名前を名乗った後まったくしゃべらなくなったからだ。ただ、俺達の方も何を言えばいいのか分からず次の言葉を待っている。その沈黙を横から見守っていた担任の中園先生は椅子から立ち上がって話をまとめようとした。俺もようやくこの長い沈黙の時間が終わってほしいと願っていたのでとてもうれしく思った。だが、その次の瞬間に彼女は動いた。自分の名前を名乗った後から重く閉じていたその口を遂に開いたのだ。
「いいですか! 私はこの日本という国が好きです。在日外国人がいたら私の目の前からいや、この国から出て行ってください。それがこの国が繁栄するために必要なことです」
……。
クラスの雰囲気は大きく変わった。そして、クラス全員の心の中はあることでまとまった。
(何か変なやつがきたあああああああああああああああああああああ)
彼女が政治的にやばい女だと言うことが俺達クラスは理解した。俺達のこの理解を知ってか分からないが彼女はドヤ顔だ。明らかにこの言葉を言ったことに満足感を得ている。
それが彼女、相崎美咲との初めての出会いであった。