第弐章
星熊童子率いる鬼たちと、源頼光率いる侍との戦いから、10年後。
富士時棟に拾われた鬼の子は、16歳へとなっていた。
彼は鬼の時の名前を忘れてしまったいたため、時棟により朧と言う名前をつけられていた。
『エイッ、ヤー』若い少年の元気な声が聞こえる。
智棟『朧、そんな剣では鬼を倒せんぞ』
時棟の長男智棟が言う。
ここは、平安京にある富士家の館。その館の剣道場である。富士家の長男智棟と朧が剣の修行をしていた。
智棟と朧は実の兄弟のように仲が良かった。
沙耶丸『智棟兄様、朧兄様』
そう言いながら10歳ぐらいの少年が剣道場に入ってきた。
この少年は、時棟の次男沙耶丸。
彼は生まれつき肺に病を患っているので、侍にはなれないだが、文学に優れ特に和歌に優れていた。
和歌の才能は、帝に百年に1人の逸材と言われるほどである。
時棟『お前たち、夕食にするぞ』
いつの間にか時棟も来ていた。
少年たちは、父と夕食を食べ、眠りについた。
深夜1時になった時。
ドォォン
静寂に包まれていた、平安京の夜に大きな轟音が響き渡る。
次の瞬間、その音はすぐにかき消された。
『鬼だぁー、鬼が攻めてきたぞ』
そう叫ぶ声が聞こえる。
その声に朧は飛び起きた。
すぐに正装に着替え、外に飛びだす。
外には既に、正装に着替えた時棟と智棟がいた。
時棟『どこが、襲われた?』
逃げ惑う人々に向かって時棟が問いただす。
男『朱雀院だよ、もう離してくれ、早く逃げたいんだ
』
時棟『待て、何故天皇は襲われてないんだ?』
男『帝の院の前で、頼光と四天王たちが鬼を食い止めたんだよ』
時棟『頼光様が...智棟、朧、助太刀に参るぞ』
襲撃より、2時間前。
???『時雨たちの班は左京へ、扇と夜叉丸たちの班は右京へ俺と霙は中央突破だ。何としても、布津御霊の剣を手に入れなければ』
時雨『わかりました、卯月様』
鬼たちは、平安京の朱雀院に封印されている、強い妖力をもつ刀、布津御霊の剣を人たちから奪い返すために平安京に攻撃を仕掛けた。
布津御霊の剣は、もともと鬼たちの神器として星熊童子が治めていた剣尾山に祀られていた。
しかし、10年前の戦いにより人たちの手に渡っていた。
扇『くっ、さすが四天王の1人、卜部季武といったところか』
季武『久しぶりだな、お前は天神川に住み着いていた鬼たちの頭領だった黒鬼だな』
扇『あの時は世話になったな、だが、今日こそ仲間たちの仇取らせてもらうぞ』
扇と季武が刀で、お互いに斬りつけ合う。
彼らの周りでは刀や槍で侍たちと鬼たちが殺しあっていた。
都のある細い路地にて
侍A『こんなときに俺たちは、細い路地の見張りなんてな』
侍B『ほんとだよ、俺も頼光様みたいに鬼を討伐したかったぜ』
侍C『まずは、鬼を討伐する前に蛇を見てもびびらないようにしないとな』
侍B『う、うるせぇ、蛇なんて怖くないさ』
???『その言葉に偽りはないな』
侍B『だ、誰だ』
そこには、蛇の頭に人の体をした異形の者が立っていた。
???『私の名前は、邪蛇、悪いが貴様らにはここで死んでもらう』
侍A『くっ、化け物が』
侍達が、刀を抜き邪蛇に斬りかかる。
が、邪蛇は華麗に侍達の斬撃を切り抜け。
邪蛇『遅い』
邪蛇は侍達の首に向けて、刀を振るう。
ザァン、風を斬るような音ともに侍達の首が落ちる。
侍B『あ、首が......』
侍A『頼光様に、お伝えしなければ...』
ザシュッ、肉に突き刺さるような音がした。
邪蛇『仕事を済ませましたよ、道真様』
第弐章『完』