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冒険の空へ  作者: トカゲ
5/10

報酬

 「これで50銀貨!?」

 「え、えぇ。少し潰れてしまっているのもあるので値は落ちてしまっていますが、これくらいが妥当な金額かと……」


 薬草を素材買取の受付に持っていってクエストを終了させた俺は開いた口が塞がらなかった。

 何故かって言うと今回のクエスト報酬に驚きを隠せなかったからだ。


 「少ないと思うかもしれませんが、これでもオマケしている方なんですよ? ほら、あなたって生活が大変でしょ?」


 買取の受付をやっているニーナさんは心配そうにそう言った。

 彼女は綺麗な金髪と巨乳を武器に冒険者ギルドの隠れアイドルとして君臨している美人さんだ。


 ニーナさんを敵にしてはいけない。それは男性冒険者だけでなく、悩みの相談にのってもらっている女性冒険者をも敵に回すからだ。


 「いや、逆に多すぎだと思ってるんだけど。本当に50銀貨もいいの?」

 「いいんですよ。あれだけ薬草があれば回復薬も作り放題になりますから。少しオマケしたけどちゃんと適正な報酬です。」


 このギルドでは小さい頃から靴磨きをしていたせいか、ギルドの職員さんにやたら可愛がってもらっている。

 特に女性陣は俺のことを弟のように思っているらしく、やたらとお菓子をくれるのだ。

 スラム育ちの孤児である俺にとってギルドの皆は育ての親といってもいいだろう。

 ありがたく報酬を受け取って頭を下げる。今度、差し入れにお菓子でも持ってこよう。


 さて、思いがけないほど沢山の報酬が手に入った。

 薬草を摘むだけで50銀貨とか、結構ボロいな。

 銀貨が入った袋を持ちながらニヤニヤしていると、沈んだ顔のアズが歩いてくるのが見えた。


 「おー、どうだった?」

 「ボチボチだよ。そっちは?」

 「滅茶苦茶怒られた。あと一週間帰ってこなかったら死亡扱いで冒険者資格を消される所だった。」

 「まぁ、実際に俺がいなかったら死んでただろうしな。」

 「そう言うなよ。悪いとは思ってるんだから。」


 アズはそう言いながら笑う。明るいところで見ると装備もさる事ながら、その容姿が優れていることが分る。

 清潔に切り揃えられた赤髪に人懐っこそうな目、イケメンなのに嫌味な感じがしないのは少し反則だと思う。

 声もよく通って聞き取りやすいし。この男は冒険者なんかより商人の方が向いてそうなのに本当に勿体ない。なんで冒険者になるの止めなかったのかね、こいつの親は。


 「さて、そろそろ行こうぜ? 今日のお礼に飯を奢るからよ!」

 「そりゃありがたい。」


 ノアールは王都なだけあって飯屋が多い。

 夕食の時間帯になれば屋台も多く出店してちょっとしたお祭りのような騒ぎになるほどだ。

 屋台は大陸各地の料理人達が修行のために上京して出しているものなので、当たり外れもあるけど安くてスラムで孤児ってた俺も何度か利用したことがある。


 「おーい、こっちだ。」

 「え? 屋台通りはこっちだぞ?」

 「バカ、命の恩人に奢る飯を屋台で済ませるほど俺は金に困ってないよ!」


 何故か怒られてしまった。アズは屋台ではなく、ちゃんとした店の飯を奢ってくれるつもりらしい。

 マジか。屋台じゃない所だと最低でも倍の値段になるって聞いたことあるけど、良いんだろうか?


 「因みに今から行く店は俺が泊まっている店でもあるから、あんまり騒がないでくれよ?」

 「わかった。」


 あぁ、そういうことか。

 ほかの街の事は知らないが、ノアールでは飯屋が宿屋を兼業している事が多い。

 店の2階スペースを宿として使っていて、宿に泊まっている客にはサービスで食事が何割か安くなるのだ。

 なるほど、それならば屋台と比べてもそこまでの出費にはならないという事か。

 流石商人の息子、自分を良く見せる術を心得ている。


 「ここだよ。小さい店だけど味は保証するぜ。」

 「何かやけに小奇麗な店だな。」


 アズが案内してくれた店は小さめだけど雰囲気良さげな店だった。

 入口に花とか飾ってある。よく見るとミイホ草やハーブを育てているみたいだ。

 店の名前は【花妖精の安らぎ亭】。店の名前だけだとどんな料理が出てくるか分からんな。


 「この店は薬草とかハーブを使った料理が評判なんだよ。酒も果実酒の種類が豊富でよ、ほかの店では味わえない料理ばっかりなんだぜ?」

 「そうなんだ。まぁ、俺は酒飲んだことないからよく分からないけど。」


 さっそく席について注文を頼む事にした。

 メニューボードには小さな文字で良く分からないメニューが並んでいる。メニューからはどんな料理なのか想像もつかない。少なくとも肉の文字は見当たらない。何を頼んで良いのかさっぱり分からん。


 「俺は今日のオススメで。」

 「じゃあ俺も同じやつを。」


 よく分からないからアズと同じ物を頼むと店員さんは笑顔で頷くと厨房に消えていった。

 それにしてもこの店、女性率が高い。店員も女性だし、男なんて俺ら位しかいないんじゃないだろうか。少なくとも冒険者みたいな感じの男は1人もいない。


 「なんか、この店女の人が多いな。」

 「あぁ、むさ苦しい男が多い店より良いだろ?俺、むさ苦しい男が騒いでる酒場とか苦手なんだよね。」

 「さいですか。」


 何でもこの店は女性をターゲットにした料理やお酒を多く出していて、それが見事にハマって繁盛している店らしい。

 肉は少なめで薬草やハーブを使ったサラダとか、果実酒を中心に出していて、冒険者みたいな荒くれ者達にはとても合わない店なんだそう。


 「お待たせしました。」


 少し待って店員が持ってきたのは色鮮やかなサラダが盛られた皿だった。

 次から次に出てくるサラダ料理の数々。美味しいけど、タンパク質が足りない。


 「いや、やっぱこの店のサラダは美味いなぁ。」

 「まぁ、確かに美味いけどよ。」


 因みに最後まで肉は出てこなかった。

 こんなんだったら屋台の肉串とか奢ってもらえた方が良かったなぁ。



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