プロローグ
しばらくは毎日投稿したいです。
見上げるほどに高く、分厚い大壁に守られた王都【ノアール】
そんな立派な王都の奥の奥、陽の光すら届かないような裏路地に俺は寝転がっていた。
「貧乏が憎い。」
「そうかい。俺は金持ちの方が憎いけどな。」
隣に座っていた友人のリーズは大きな欠伸をしながらそう言った。
スラムと呼ばれる場所が俺達の住んでいる場所で、俺達は物心着いたときからここでゴミのように生きている。
「金持ちはそいつらが頑張った結果そうなっているんだから憎んじゃダメだろ。」
「じゃあ、金持ちの子供が憎い。あいつら何にも苦労せずにブクブク太りやがって。」
「あぁ、あいつら時々ここまで来て俺らを見て見下したような顔するもんな。」
スラムに住んでいる奴らはスラムに住んでいる理由がある。
親が死んだ子供や捨てられた子供、怪我のせいで落ちぶれた冒険者や借金で首が回らなくなって逃げてきた商人―――好き好んでこんな所にいる奴なんていないだろう。
そんなスラムでは子供は大体死ぬか盗賊になって捕まって処刑されるかだし、大人も似たようなものだ。だからスラムはゴミ溜め、廃棄処分場と言われている。実際ここは誰が見てもゴミ溜めでしかないと思う。
「そういえば隣のほら、マーカスがヘマして殺されたってよ。」
「マジかよ。死体は?」
「3番通りの裏路地に放置されてる。」
「兵士達の清掃は3日後だから匂いが酷い事になりそうだな。」
「嫌になるよな。」
スラムの人間には人権なんてない。
マーカスは鍛冶屋で売られていたナイフを盗んだ結果、店の店主に殴り殺されて裏路地に捨てられたらしい。
マーカスは冒険者に憧れていた。冒険者登録ができる年齢になったら冒険者になって栄光を掴むのだと、そう言っていたのを覚えている。
「マーカスって何歳だっけ?」
「今年で10歳だったかな。もうすぐ冒険者になれるって、登録料を貯めてたのを覚えてる。」
冒険者になるには年齢が10歳になる事と、ギルドに登録料である10銀貨を払うことが条件だ。銀貨10枚なんて子供でも頑張れば貯められる金額だけど、スラム街に住んでいる奴らにとっては結構な大金だ。
俺が仕事でやっている靴磨きが1回20銅貨、銀貨は1枚で100銅貨と同じ価値だから、冒険者登録しようと思ったら靴磨き50回分のお金が必要ってことだ。
俺の1日の稼ぎは多くても3銀貨くらいで、そこから食費を抜くと1銀貨も残らない。それよりも稼ぎが少ない時なんて幾らでもあるし、数日に1回は入ることにしている銭湯の事も考えるとお金なんて本当に少ししか残らない。
銭湯を止めればお金も貯まるんじゃないか? と思うかもしれないけど、身だしなみもある程度ちゃんとしないと客が寄ってこないからそれも出来ないのが辛いところだ。
「カウルはどうするんだ? 当然冒険者になるんだろ?」
「勿論。リーズはもう直ぐ登録料が貯まるんだっけ?」
「おうよ。まぁ、武器の金がまだ貯まってないから、冒険者になってもしばらくはスラム暮らしだけどな。」
「俺が冒険者になるのは当分先になりそうだな。ほら、足を怪我してこっちに来た元冒険者のジャスタさんっているだろ? 俺、あの人に剣を教わってるんだ。」
「ふーん。あんな飲んだくれに何を教わるんだよ?」
「だから剣だよ。冒険者なんだから武器くらい扱えないといけないと思ってさ。」
「そんなもん、実践で学べばいいのに。無駄なことしてるなぁ。」
「そうかな? 結構勉強になるけど。まぁ、冒険者になったらお互い頑張ろうぜ。」
スラムはひどい所だ。チャンスも掴みにくいし、生活するだけで精一杯。小さな病気が死病になってしまう事が日常のような場所だ。
俺達は絶対にここから脱出してやると、そう誓い合った。




