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(13)

「失礼な。これは本当だって」


 そのことを信じようとしない雄太に、彩花は頬をプクッと膨らませて、不満を露わにする。

 しかし、雄太は寝転がっているため、その様子は見えず、声だけで判断したらしく、


「じゃあさ、もしだよ、もし」


 身体をまた起き上がらせて、ジッと彩花を見る。


「何?」


 その『もし』にも彩花はプイッと顔を逸らしつつも、横目で見ながら尋ねると、


「スミレから恋愛相談を持ちかけられたらどうするのさ?」


 雄太はその時の対応を彩花へと尋ねた。


「……うわぁ……難題過ぎるね、それ……」


 あり得なくもない流れに彩花は演技で拗ねる余裕を失くし、冗談抜きでそのことについて悩み始める。が、結論として彩花の頭の中にはその時の答えが一つしか思いつかなかった。


 ――うん、これは相談に乗っちゃいそうな気がする……。


 雄太にバレないように表情を変えずに悩んだふりを続けているものの、内心は自分の答えに焦ってしまっていた。

 そのことを知ってか知らずか、


「すっごい悩んでるみたいけど、どうなの? さっき断言したように『私は恋愛相談には乗りません!』ドヤァって出来るの?」


 雄太は彩花を挑発するように、その答えを急かす。


「ドヤァまではしてないけどさ……分かった分かった。正直に言うとね、恋愛相談に乗るかもしれないね」


 ここで意地を張ったところで仕方ないと思った彩花は、自分の素直な気持ちを答えることにした。そっちの方が『もし』の場合に雄太も対応してくれると思ったからだった。

 あっさりと認めたことに雄太は驚きつつも呆れてしまったようで、


「ほら、やっぱり」


 と、彩花がそういう行動をするかもしれないってことを考えていたらしく、ため息を吐いた。

 けれど、そうなった時のことを持ち出されたため、


「そうなったらそうなったで、当たり障りのない恋愛相談に乗るから安心してよ。少なくとも、私は助言だけに留まるようにするからさ」


 恋愛相談に乗らないという選択肢は取れないものの、行動自体の制限を自分でかけることは約束することにした。

 もちろん、その言葉を信用出来ない目で彩花を見る雄太であったが、恋愛相談に乗る可能性を見い出せただけでもマシだと思ったのか、


「別にいいけどさ。断言されたから、嫌なだけであって。女の子ってそういう話好きなの知ってるから」


 内容に関しては諦めた様子だった。

 が、そこで彩花が一番気になったのは、雄太が彩花のことをどう思っているかという点だった。


「あのさ、さっき教えてくれたでしょ? スミレちゃんのことを『お節介な幼馴染』だって思ってるって」

「うん、言った」

「あれを二つの選択肢――ここで言うと、『好き』か『嫌い』に分かれるとどっちになるの?」

「そりゃ……『好き』の部類に入るんだろうけどさ……」


 そこで雄太の歯切れが悪くなってしまう。

 やはり分かっているように雄太はスミレに恋愛感情はないらしく、雰囲気から察すると友達として好きのような感じだった。


「別に安心していいよ。好きって答えたからって、『恋愛感情じゃなくても、そういう気持ちがあるならくっつけちゃおう』ってことはしないからさ。雄太くんだって、好みがあるもんねー」


 ――私の体型・性格みたいな女の子だけどね。


 さすがに最後まで言えなかったため、心の中でそっと付け加える。

 雄太もまたそこまで理解されていることに安心したらしく、「はぁ」とため息を一つ溢す。


「それが分かってるならいいけどさ。なんか、話の流れがボクに不利な状況になって来たから、もうおしまい!」


 しかし、これ以上攻められると何やらボロを出しそうなような気がしたのか、雄太はそう切りあげようとしたため、


「そうだね。私的にもこの話はこれで切りあげてもらえるとすごく助かるかな?」


 彩花も素直に同意した。

 同意したのは自分のためではなく、雄太のためである。雄太の想像通り、この話を続けていると、雄太が『自分に好意を持っているのか?』という質問まで辿り着きそうになってしまったからだ。さすがにそこまで聞いてしまえば、仕事上の不都合が出てしまう。それが分かっているからこそ、あっさりと同意することが出来た。

 そして、話の流れを全部変えるべく、彩花は手を一回叩き、


「気晴らしにゲームでもしよっか? なんだかんだで昼間も出来なかったしね!」


 と、昼間する約束をしていたが、タイミング悪く出来なかったことを思い出したように言って、雄太を誘うと、


「それもそうだね! っていうか、イベントはもう終わらせたから。手伝いになるかなー」


 あっさり乗ったにも関わらず、自分のやりたいことは終わったことをあっさりと暴露した。


「え? 早すぎ……」


 まさかもう終わっているとは思っていなかった彩花はそう言うと、


「まぁ、時間だけはあるからねー」


 と、引きこもりであることを自慢するように言ってきたため、


「そこは自慢するところじゃないっての! ちょっと周回しないといけないだろうし、急いで片づけてくる!」


 彩花は食べ終わったものを片付け始めるも、そこであることに思い付き、


「雄太くんってさ、サブのアカウント持ってる?」


 と、雄太へ尋ねると、


「まぁ、持ってるっちゃあ持ってるけど……」


 当たり前のようにそれを持っていることを言ってくれたため、


「それ、スミレちゃんにあげて一緒にしない? 私も手伝うことが出来るし、雄太くんも出来るでしょ?」


 そう提案を出すと、雄太は少しだけ「んー」と悩み始める。


「駄目だったらいいよー」


 もちろん、雄太が嫌なら無理に誘うつもりはないため、そう言うと、


「別にいいけど、スミレの方が問題じゃない? やる気がないならさせたって意味がないしさ」


 意外にも一緒にやること自体は賛同してくれた。


「それもそうだねー。まぁ、そこらへんは私がなんとかするよ。とにかく、急いで片づけてくるから待っててね!」


 その詳しい話はプレイしながらも出来ると踏んだ彩花は、ドタバタの片づけをし始めた。

 最初から手伝うつもりでいる雄太は、彩花がそこまでして必死になって片付けする様子を見て、苦笑いを溢すことしか出来なかった。


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