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(2)

 強盗の類かと思い、二人が向かった玄関の先には、慣れたように靴を脱ごうと片方の靴に手をかけた一人の少女が居た。

 その少女もまたドタバタとやってきた音に反応するようにツインテールにした白い髪を振り返らせ、彩花と雄太を見る。そして、彩花もだったが、一番は雄太がいることに驚いたように赤い目を丸くさせていた。


 ――あれ? この子は……。


 彩花は見たことはなかったが、その子の情報も雄太のことを調べる際に手に入れたため、容姿から、その子が誰なのかすぐに理解することが出来た。この子の名前は――。


「スミレ!? なんで、勝手に入って来てるんだよ!」


 その名を雄太が呼び、そのことに対して驚きの反応を取った。

 彼女は少女にも近い身長と体型ながらも雄太と同い年であり、幼馴染なのだ。そのため、雄太が通う学校の制服を今、身に付けている。どうやら、学校終わりに何か用事があり、雄太の家に寄ったらしい。


「え? そんなことより、なんで下にいるの!? それに、この女性ひとは誰!?」


 雄太よりもスミレの方が当たり前のように疑問が多く、彩花と雄太を交互に見ながら、どちらかに説明を求める。

 そして、この場で二人の情報と状況を理解出来ている人物――彩花がそれを必然と任せることとなった。

 そのための雰囲気を作るべく、彩花はまず雄太の肘を小突く。


「なに?」


 なんでいきなり小突かれたのか、それが分からない雄太は彩花を見たため、


「この子が例の可愛い幼馴染ー? 紹介しなさいよ。私に黙っておくなんて、駄目でしょー?」


 と、少しだけお姉さんぶった口調で、ウインクと「話を合わせろ」という雰囲気という名の威圧を雄太へぶつける。

 それだけで雄太も察することが出来たらしく、


「幼馴染の村崎むらさきスミレ。んで、スミレ、こっちが――」


 それを合図に自己紹介に移ってくれたため、余計なことを言われないように、


「遠い親戚の柊綾香って言います。よろしくね、スミレちゃん」


 そのタイミングで雄太の紹介に割り込み、自分の自己紹介を済ませる。


「む、村崎スミレって言います。よ、よろしくお願いします」


 スミレもハッとして、自分の自己紹介を済ませた後、慌ててペコンと頭を下げる。

 雄太はそんな二人の様子を見ながら、「なんだかなー」という表情で自分の髪を撫で、


「それでスミレ。何しに来たんだ? というより、学校は?」


 と、スミレがここに来た理由を求めた。

 その一言にスミレは「え?」とびっくりした表情をし、


「今日は土曜日だから学校はないよ? あるのは部活だけ。それが終わったから、来たんだけど……。てか、土曜日はいつも来てるじゃん!」


 ちょっとだけ不貞腐れたように顔を膨らませる。


「そ、そうだっけ?」

「そうなの! 反応ないけど、部屋の前から声かけてるもん!」

「……へ、へー……」


 そんなことを知らないとばかりの反応を取る雄太。


「その時間帯、寝てるもんね……」


 彩花はそんな雄太に冷たい一言をかける。そうでもしないと、スミレが可哀想だと思ったからである。


「うん、寝てるよね。たまに機嫌の悪い声返って来るし……」


 スミレもそれに同調し、雄太へ冷たい一言を浴びせる。

 記憶になくても、二人からそう言われた雄太は「うっ!」と呻き声を漏らし、しょんぼりとなってしまう。が、それが真実であったため、返せる言葉もないらしく、


「ごめん。知らなかった」


 と、小さな声でスミレに謝罪した。


「もう慣れてるからいいんだけどさ。って、そんなことよりも! あたしの方が聞きたいんだけど!」


 スミレは諦めたようにそれを流し、


「なんで、この時間帯に下にいるの!? だって、今謝罪されたように、二階で引きこもってるじゃん!」


 雄太がこの場にいることについての回答を求めた。

 それに関しては雄太も「え?」とちょっとだけ驚いた声を出して、


「この時間にボクが下に居ちゃいけない?」


 スミレが求めている回答とは違う回答を口にした。

 だからこそ、彩花は意図せずにその頭を引っ叩く。

 そのツッコミに叩かれた雄太は目を丸くして、叩かれた箇所を押さえて、声すら出すことが出来ない状態になっていた。

 それを見ていたスミレもまた口を手で押えて、驚きの声を出せないような状態。

 彩花も叩いた本人ながら、まさかこんなツッコミをするとは思っていなかったため、戸惑ってしまう。が、状況的に自分がなんとかしないといけないことだけは分かっており、


「そ、そういうことを求めてるんじゃないの! スミレちゃんは普段は寝てる雄太くんがちゃんと起きて、自分の部屋じゃなくて玄関に来てることについての説明を求めてるのッ!」


 少しだけ普段より高めの声で詳しく説明した。


「え、あ……そういうことね……」


 雄太はスミレが求めた説明が改めて理解したらしく、叩かれた箇所を掻きながら、


「それはちょっと色々あってさ……」


 説明が難しいことを伝えるように彩花を見る。


 ――それが正しい選択であるよね……。


 雄太では誤魔化しの説明がちゃんと出来ると思っていない。だからこそ、こうやって丸投げしてくれる方が彩花にとっては好都合だった。

 しかし、スミレはそれを聞いていないらしく、


「だ、大丈夫? 叩かれた所痛くない?」


 そう言いながら、慌てて靴を脱ぎ、雄太に近寄る。そして、頭を下げるように促す。


「大丈夫だって! なんか不意打ち食らったから、驚いただけで全然痛くなかったしさ」


 そんな無理矢理見ようとするスミレから離れるように距離を取る雄太。

 そのせいか、スミレが軽くだが彩花を睨みつけ、


「ちゃんと謝ってください」


 と、彩花に謝罪するように促す。

 そのことに関しては、ワザとじゃないとは分かっていても叩いたことに変わりはない彩花は、


「ごめんね、雄太くん」


 逆らうことなく、スミレの言う通りに雄太へ謝る。


「これぐらいで謝られる必要ないって。ボクが勘違いしたことに関してのツッコミなんだしさ。とにかく、玄関で話すのも面倒だから行こうよ。そこでスミレの聞きたいこととか教えるからさ」


 この状況でマズいと何か勘付いたらしく、雄太は場所を変えることで空気の悪さも変えようと思ったらしく、二人を置いて居間の方へ歩いていく。

 それに従うように、彩花とスミレも雄太の後を追った。


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