入学、出会い⑤
1日1回のペースで投稿したいなぁ
入学式を終えた後、京とアリアはクラスを確認し、共にAクラスの扉を開け、周囲の視線を浴びながら前後の席に座った。アリアといると有名人になったかのように思える。アリアは気に留めていない様子だが。
しばらくして、担任と思しき女性が入ってきた。肩にかかるくらいの黒髪、少し垂れた目、柔らかそうな唇は優しそうな、ゆっくりとした雰囲気を醸し出していた。
「今回君たちAクラスの担任をさせてもらう山伏千代です。気軽に千代ちゃんって呼んで下さいね〜」
見かけ通りの挨拶をした千代。小動物みたいな先生だ。
「それじゃあ左の席の人から自己紹介してもらおうかしら〜」
この言葉を皮切りに生徒達が次々と自分の名前などを告げていく。
「俺は連城隼人。気軽に隼人って呼んでくれ!」
「わ、私は大宮春奈と言います……。よ、よろしく……」
「私は桜井凛! 趣味はスポーツ! みんな仲良くしてねー!」
色々個人差のある紹介を聞いていると、次にアリアの番がやってきた。アリアが立ち上がる。すぐさま周りの視線が集中する。口を開けっぱなしの生徒もいた。
「こんにちは。アリア・メルガルトです。イギリスから留学生としてやってきました。みなさん仲良くしてください」
アリアが一つお礼をすると、今日一番の拍手が起こった。
可愛い、凛々しいなどの単語が飛び交う。次に自己紹介する京は些か肩身が狭くなった。ゆっくりと立ち上がると、アリアに向いていた視線がそのままこちらに移ってきた。
「秋白京です。みなさんよろしくお願いします」
簡単に済ませるとこちらも中々の拍手が送られた。
その後もつつがなく進行した。
「え〜じゃあ今日はこれでもう終わりだね。明日はちょっとしたイベントがあるから高校指定の運動着も持ってくるように〜。あ、あと秋白君とメルガルトさんは後で学園長室に来るように〜」
さようなら〜、と軽い挨拶で千代が終わらせると、京とアリア以外の生徒達は教室から去っていった。京とアリアは麻耶の呼び出しのために、広い廊下を歩きながら学園長室に向かっていた。
「迷子になりそうだ」
「同感ね……」
歩いても歩いても辿り着きそうにない廊下の長さに辟易としてしまう。そもそも用件は何なのだろう。アリアは留学生で、父と知り合いだから呼ば出される理由も分かるのだが。
「まあ俺はどっちにしろ挨拶はしておくつもりだったしな」
「結構親しいのね。羨ましいわ」
「そうか? 全然羨ましがられる理由が分からんが」
「あんな綺麗でかっこいい人滅多にいないわよ」
「あんたが言うなよ……」
確かに綺麗でかっこいい、そこは京も認めている。外見だけだが。
「綺麗でかっこいい、ねぇ……」
そうこうしているうちに一つの扉の前に辿り着いた。どうやらここが学園長室らしい。
「アリア・メルガルトと秋白京です」
「ああ、入れ」
アリアがコンコンと扉をノックして数秒後、向こうから先ほど聞いた声が聞こえてきた。
「失礼します」
部屋に入り、京は中の豪華な内装に目を見張った。赤を基調とした部屋にシックな黒色の本棚が鎮座しており、さらに部屋の奥には重量感のある机と椅子が置かれていた。その椅子に一人の人間が。
「やあアリア・メルガルト、初めまして」
「は、初めまして、お会いに出来て光栄です」
「ふふ、そう硬くなるな」
あのアリアが緊張している。とても良いものを見ているようだ。麻耶の瞳がこちらに向いた。
「やあ京、見ないうちにすっかり逞しくなったな」
「うるせーよ、結構頻繁にあってるだろーが」
「それに、もうアリア・メルガルトと仲良くなったのか、相変わらず手の早い。そのお陰で今回は説明笑うが早く済みそうだ」
「あ?」
「そんな口を私に聞けるのは京だけだよ。しかも私をババア呼ばわりする奴なんて」
京の頬に汗が流れた。足が震え始める。麻耶の地獄耳の恐ろしさを思い知った。
「まあ、今回は許してやろう。次は無いぞ?」
「しゅみません……」
「以降、気をつけるように」
どうやら一難は去ったみたいである。足の震えも収まった。
「で、俺を呼び出した用件は何だ?」
「理由が無いと京に会ってはいけないのか?」
「いけないね」
「連れないな。一緒にあんな事やこんな事をした仲だというのに」
「お、おい!」
「秋白くん……」
京は必死に取り繕おうとするが、こちらを見つめるアリアの目はあからさまに弾いていた。
「へ、変な言い方すんな!」
「はは、相変わらず君は可愛い」
「もう早く用件を言えよ!」
泣きたくなってきた。アリアの目が凄いことになっている。しかしこちらの気持ちを知らずに麻耶はカッカッと笑う。
「すまないすまない。今日二人を読んだのは二人に同じ用件があるからだ」
「な、何でしょう?」
アリアは首を傾げた。やばい、京の直感がそう告げた。
「これから二人は同棲してもらう」