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近寄る不穏⑥

実戦訓練も終わり、放課後になった。あの後、隼人達三人と打ち解ける事が出来た京とアリア。今は五人で下校している。


「いや〜、あの時はビックリしたぜ。まさか

体が動かなくなってしまうなんてな」

「止まってる時の隼人の焦り方面白かったね〜」


隼人と凛の元気二人組が楽しそうに笑う。隣をみると、それにつられて春奈も笑っているようだ。なんだかんだ楽しんでいるのだろう。


「にしても秋白君の動きは凄かったな〜」

「う、うん……はやかった」

「まあ、こんくらい出来ないと聖痕保持者には勝てないからな」

「あ、そっか、今はコードを使えないんだっけ?秋白君」


凛が思い出したように言う。実戦訓練の直後、京は三人に事情を伝えた。最初は驚いたようだったが、大して気に留めている様子もなかった。


しばらくして、五人は大通りにたどり着いた。全員、帰り道が似ているようだ。隼人が食べ物を買い食いしながら歩いていた。


「そういえば、メルガルトさんってどこに住んでるの〜?」

「えっ?」


凛の口からそんな疑問がこぼれた。アリアは不意な質問に戸惑っている様子である。あたふたする様はとても可愛らしかった。


「そ、それは……」


アリアがこちらを見てくる。SOSのようだ。

京が助け舟を出してやる。


「あー、メルガルトさんは俺んちの近くに住んでるんだ」

「え? そうだったんだ〜。どうりで仲が良いわけだよ」

「ははは……」


アリアがぎこちない笑み浮かべた。嘘をつき慣れてないのが丸分かりだ。

一行は分かれ道に差し掛かった。


「じゃあ俺達はこっちだから。京、メルガルトさんまた明日」

「じゃーねー」

「さ、さようなら」


京とアリアは三人と別れ、二人の自宅へと向かう。


「メルガルトさんは嘘をつけないな」

「嘘をつく必要が無かったもの」

「確かにそう……」


ここまで言いかけて京はあるものに気付いた。


「どうしたの?」


アリアが不思議そうにこちらを見つめてきた。どうやら何も感じていないらしい。


「い、いや、何でもない」

「そう……。そういえば今日学園長からーー」


***


果実のようなほのかな匂いが鼻腔をくすぐる浴槽の中でアリアは考え事をしていた。


(コードに頼り過ぎ……か)


京の言う通りだった。言われなくても自分自身薄々感ずいてもいた。見て見ぬ振りをして来たのは、それだけコードを信頼していたからである。そんな甘い考えがあの結果を生んだのだ。


「そうは言っても……」


コードを使わない戦い方なんて今までに習った事などない。そもそも全部聖痕保持者の父親仕込みである。


(秋白君しかいないわよね……)


何もかも京に頼りっぱなしの自分が情けなくなる。甘えっぱなしの自分に京は顔色一つ変えることなく、それどころか嬉しそうに応えてくれた。


(彼はなんであんなに……)


京の顔が頭に浮かぶ。それと同時になぜか胸と顔が熱を帯びた。


「あれ……なにこれ……」


自分が自分ではないみたいだった。それなのに何故か心地いい。

もっとこの気持ちに浸りたい、そう思った。


***


あたりが寝静まった頃、黒いフードを被った男二人が一軒の家の前に佇んでいた。男達はイギリスの八貴族から雇われた。


「へへ、まさかここの住人を殺すだけであんな金が手に入るなんて思ってなかったぜ」

「できるだけ隠密に殺るんだぞ」

「分かってるさ。あんなちょろそうなガキども喚く間もやらないさ」

「ふん。それじゃあ行くぞ」


男達が家の敷地に入ろうとした時


「こんな時間に家に何か用か?」


一人の男が家から現れた。


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