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魔領国にて

久々の更新です。またよろしくお願いします。

明人が怪鳥と対峙しているころ、紫竜(しりゅう)は食獣植物の森の中にいた。


「こいつらほんまに・・・・・・秒殺で増えるな」


先日焼き払った辺りを横目で眺め、高速で移動しながらため息を吐く。



(・・・・・・あれ?)



明人を鬼たちから遠ざけるため、気合で吹き飛ばしたはいいが、どこまで飛ばしたか分からなくなっていた。反対方向に飛ばしたため当たり前だが、当の本人は気づかない。



加六と別れた後、さっそく明人を-のんびりと-追い始めた紫竜は、砂浜を走り抜け密林地帯に出る。この一帯は砂漠で本来なら草一本生えない不毛の地だが—―この世界では違う。ここいら一帯は植生魔しょくせいまと呼ばれる食獣植物が幅を利かせ、密林に迷い込む獣を捕食する超危険地帯。生物が迷い込んだら最後、さんざん疲れさせた後捕縛し、粘着性の消化液のプールでじっくりと溶かされ捕食される。当然人間などの生物も対象内で、たいらから来たばかりの明人も簡単に捕縛された。



(やっぱりおかしいな・・・・・・。安全な場所なんか無いに等しいけど、こんなとこに飛ばしたっけ?)



ザザザザザ・・・・・・と引きずるような音を響かせながら小首を傾げる。



現在、紫竜は脅して従わせた密林の中央で胡坐をかいていた。頭を掻き少しずつ不機嫌になっていく紫竜を感じ取ったのか、密林は跳ね上がるようにスピードを上げ、砂漠の中を疾走する。本来ならば砂漠にいくつも点在する密林集団。生物の癒しの木々・水場・鳥の声等を疑似的に作り出し、生物を惑わす癒しの空間を演出するのだが、現在は紫竜がいる密林以外確認できない。相変わらず引きずるような音を響かせる密林の規模は直径5メートルほど。かなり小規模だ(大きいと探索に邪魔だからという理由で紫竜が選んだ)。こいつらの大きさは様々で、直径10メートルほどの規模の密林もあれば1キロを超す密林も存在する。しかし、現在は紫竜が近くにいるため、他の群生は確認できない。



「やかましいんじゃボケ!! 今考え事してんねん!!」



怒号が響き渡り一瞬飛び上がった密林は、速度をなるべく落とさないように静かに走る。



サササササ・・・・・・と箒を引きずるような音に変え懸命に走る。しかし、走り方を変えても一向に紫竜の機嫌は直らない。



「・・・・・・止まれ」



静かなる命令が青葉を揺らした瞬間、一瞬ビクッと震え速やかに停止する。何か粗相でも? と問いかけるようなそんな止まり方だ。怯えの色を濃くする密林内で紫竜はカッと目を開く。



「お前らにききたいことがある。心して答えるように」



紫竜の声に密林全体が小刻みに震える中、おずおずとした声が密林内に木霊する。



(な・・・・・・何でしょうか?)



「最近・・・・・・ここら辺に人間が一人飛んできたとかそんな話聞いたことあるか?」



(・・・・・・いえ、そのような話は聞いていません)



戸惑うような声音に眉を顰め、続けて質問する。



「お前らの誰かがこないだ捕まえたやつおるやろ? あいつの情報が欲しい。あっ! そうや! 捕まえた奴らちょっと呼んでくれ」



(それは出来ません)



「ん? なんでやねん?」



ぎろりと中空を睨み口を尖らせる。だが、そんな紫竜の様子に臆することなく淡々と事実を述べる。



(あなた様が消し炭にしたからです。あの個体集はもう存在していません)



密林の返答に口をへの字に曲げ、明後日の方向を見る。



「ほんだら最後に教えてほしいんやけどお前ら・・・・・・」



自身の失敗を華麗にスルーし、意地の悪い笑顔を向ける。冷や汗を流す―ように感じた密林は(・・・・・・・・・・・・なんでしょう?)と恐る恐る尋ねる。





「聴覚共有って出来る?」





***




その頃より少し先、とある国の領内で地面を踏み鳴らしながら闊歩している女性が雄たけびを上げていた。



「ちょっと! 昨日の夕方誰か暴れてたやろ!? めっちゃうるさくて寝られへんかったし!」



「・・・・・・うるさいな~。俺、昨日遅かったんやて。勘弁してくれよ」



「知らんし! てゆうか、あんた把握してないんけ?」



「けを付けんなよ。田舎モンが」



「なんかゆ・う・た?」



「何もないよ。顔が怖い! 近づけんな!」



「ふーん・・・・・・。でもほんまに誰か暴れてたやろ?」



「ううん、昨日はみんな居ったで。族長居てないからだれてるし」



「おかしいな~。絶対誰か暴れてたんやけど・・・・・・」



「魔物同士の喧嘩ちゃうの?」



「・・・・・・いや、魔力使ってた。だから誰かが暴れてると思ったんやし」



「・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・ちょっとあたし見てくるわ」



「お前にこんなんゆうのも失礼かもやけど・・・・・・気ぃつけてな」





「ハハハ、気持ちだけいただいとくわ」



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