男は出逢う
番外編投稿してますが、どちらを先に読んでも大丈夫なようになっています。
「ギィィィィァァァァ」
ガラスを掻き毟ったような咆哮の下にその男はいた。左手には1丁のオートマチック、右手には一振りの無骨な刀を携え、上空を見つめながら・・・震えていた。
(俺は餌かよ・・・。)
心の中で毒づく。その間も悲鳴のような鳴き声と、劈くような羽音が辺りに響き続けている。
点在する岩に身体を預け、上空を旋回する怪鳥の羽音に耳を済ませる。空には燃えるような赤。しかしその色彩もあと5分ほどで漆黒に呑まれる。
「長引くと不利だな」
決意を滲ませるか細い声が、妙に大きく響いたその刹那。
「!!」
静寂の中に混ざるノイズ。滑るような体捌きで飛び退った男は、目の前の光景に戦慄を覚える。
先ほどまで男がいた場所には、粉々に砕かれた岩・・・そして3メートルはあろうかという巨体に赤黒く化粧された鋭い嘴、灰色の翼を軋ませながら1羽の怪鳥が男を見ていた。
間一髪で避けた男は舌打ちする。酷い血の臭いに顔を顰めながら、今までの少ない戦闘経験を反芻する。
(銃はあきらめるか。)
内心では盛大に舌打ちし銃を投げ捨てる。あのサイズの獣には銃の効果は薄い。至近距離で急所を貫くか首を落とすしかない。
投げ捨てた銃に一瞥もくれず、もう一振りの刀を抜き放つ。すらりと音を立て抜き身となった白刃は茜空を写し妖艶に煌いた。
男は覚悟を決めた。新たな相棒を両の手に怪鳥の首めがけて地を蹴る。
いつのまにか震えは止まっていた。