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七夕

作者: 紫焔

思い付き&勢いで書いたものです。

ありきたりなものです。




星界学園。それは星の代理人が登校出来る学園。言っちゃえば星座の代理人、代表の者のみが入れる、勉強する場所。

説明が雑?だって面倒臭いんだもの。

私の名前?言わなくても良くない?だめ?チッ。


私の名前は機未(はたみ) 織姫(おりひめ)


もう分かるでしょ?私は織姫星の代理人でこの学園に入らされたのよ。強制的に。

だってもし入学しなかったら星消されるって言われたんだよ?馬鹿じゃないの?って言いたい。

まあ学園の仕組みとかは何であれ、星の代理人や星座の代表がこの学園に数多く集まっていることは確か。

だって――。


「織姫ー今日は僕との約束、守ってくれるよね?」

「フッ、織姫のこの後の予定は俺とのデートだ。残念だったな」

「何言ってるんだ黒獅子。織姫はこの後僕との予定があるんだよ」

「それこそ何言ってるの~射川くん~織姫は僕と一緒だよ~?」

「織姫とは僕の予定が埋まってるんだ邪魔するな」

「そっちこそ――」


私の周りで不毛な争いをしてる奴らがそう(・・)だから。

ほんと何この状況。え、ここは乙女ゲームの世界じゃないのかって?全然違うから。

あ、私は望んでこうなったわけじゃないからそこんとこ勘違いしないでね。謎の力でこうなったんだから。行使した気も記憶も皆無なんだけど。


因みにこの学園で女子は私しか居ない。もう一度言う、私しか(・・・)居ない。

普通さ、例えば12星座の中でも流石に乙女座の子は女の子でしょって思うじゃん?

実際女の子の制服着てたから入学式には友達になろうと近付いたわけよ。

そうしたら逆っていうかなんていうか、予想の斜め上だったよ。女の子じゃなく、男の子でもなく、…所謂男の娘だったんだよ……。


話が逸れた。


まあちょっと説明させてくれ。

記憶が遡って一年前。

唯一私以外の女の子が一人だけかと思ったらまさかの男しかいないことが分かった。私の周りには男しかいないってどういうことなのか。共学だって思って入ったのに、と思い。

入学当日には理事長室に突撃していったよ。これがイケメンの紳士なオジサマなんだけどまあそこは置いといて。


『やあ、織姫君。久し振りだね、元気だった?』

『お久し振りです北の小父様(おじさま)。早速質問したいのですが』


北の小父様とは母との繋がりで知り合ったのだ。私の母は織姫星の前代理人で、しかもずっと前にこの学園の理事長にまで就いたことがある豪傑な人だった。周りからは『イメージである織姫っていう感じじゃない』って言われてたな。本人は気にしてなかったが。

まあそんな感じで私と北の小父様の仲は程々良い。


『まあまあ、取り敢えずお茶でも』

『いえ、そこまで悠長に出来ませんので。――で、この学園には私以外の代理人、代表で女の子は居ないのですか?』

『居ないよ』


この後は少し用事があったが大事なことなので急いで要件を言ったのだが、あっさりと言い返されたことにorz状態になった。何故だ。何故私以外に女子がいない。


『だって織姫君と同じくらいに生まれた代理人、代表の女の子って居ないんだもん』

『蹴りますよ』


理不尽かと思われるかもしれないが、イライラしてる上に大の大人(しかも男)がもんだなんて語尾を付けるな。さぶいぼが出る。回し蹴りしたくなる。

それにしても私と同い年くらいの女の子が居ないなんてショックすぎる。……あれ?


『…来年、最低でも再来年女の子が入学する確率は……?』

『ゼロだね』

『…………じゃあ学園を卒業するまで私は…』

『うん、女子は君一人だね』

『よし、退学しよう』

『待て待て待て待て』


待てるかぁぁあああ!なんだって女の子が居ない男だらけの学園に三年も居なきゃいけないんだ!!友達一人も出来ないことになる!!そんなんだったら自分家(じぶんち)で機織りしてた方がマシだ!!


『お母さんに黙って退学するのかい?』

『………………』


――駄目だ。そんなことをしたら叱られるどころじゃない。存在を消される。大袈裟だと思われるかもしれないが、私の母ならその可能性は大だ。

そんなわけで。


『…頑張ります……』


私は泣く泣くこの星界学園へ三年間登校することになったのだった。




*******



そして冒頭の場面に戻るのだが。


「ねえ~織姫~」

「おい、織姫」

「織姫さん」

「織姫」

「織姫――」

「ええい、鬱陶しい!邪魔だお前等!!」


べたべたと構ってくるこいつ等には辟易する。大体こいつ等と仲良くなった覚えがないのに。こいつ等は暇か?暇なのか?


「だって~織姫が構ってくれないんだも~ん」

「構うも何もあるか!今は()()()なんだぞ!自分のクラスに帰れ!」


そう、今は授業中だ。今だって先生が顔を引き攣らせながら教鞭をとっている。

すみません、後で土下座しますんで。こいつらが。


「織姫に何かあったらって思うとよお……」

「授業中に何かあるわけないだろう!」

「分かりませんよ?貴女の周りの男は貴女を付け狙ってるのかもしれませんし」

「ちょ、脅すな脅すな!」


銀縁メガネが眼光を鋭くしてビクッと身体を震わせた男達。止めろ!こいつ等はお前等と違ってメンタル弱いから!寧ろ蛇に睨まれる蛙みたいになってるから!


「というかお前等授業は?」

「「「「「自習」」」」」

「……おい、嘘も大概にしろ。全クラス、今日は自習はないと聞いたぞ」

「チッ」

「なん、だと……」

「おや、貴女にそんな情報を教えたのは誰ですか?」

「織姫との時間を削るだなんて……滅しようかな」

「そうしようそうしよう」


一人は舌打ち、一人は驚いて固まり、一人はにっこりと満面の笑み、一人は殺人的言動をしようとし、一人は煽る様に肯いている。本当に……。


「今直ぐ授業に戻らないなら私がお前等を滅しようか?」


こいつ等を相手にしているとイライラしてくる。前はもっとまともだったのだが、最近は過剰な接触をしようとしてくる。ウザったい。


「……分かりました。今はここで下がりましょう。貴女に嫌われたくはありませんので」

「チェッ」

「…しゃーねえな」

「…分かった」

「…またね~織姫~」


ぞろぞろと男達が教室から漸く出て行った。おい、ついでに先生に土下座していけ。




*******




そんなこんなで放課後。

漸く授業が終わり、少し前にメールが来ていたので返信する。

さあ早く帰ろうと教室から出ると、授業中にまで乱入してきた奴等が全員居た。


「織姫~!」

「よお」

「やっと会えた……」

「一緒に帰りましょう」

「ね?」


ほんとにお前等は……暇か。暇なんだろ。溜息を吐いたが、最近ではこれが日常化している。

……あれ?いやそういえば今更だが、冷静に考えたらこいつ等全員生徒会員じゃないか。こんなすぐ帰っちゃいけないんじゃ?


「お前達、生徒会の仕事は?」

「終わってるが?」

「……本当にか?」


いまいち信用が出来ない。まあ私がこいつ等の仕事ぶりを見てないこともあるが。


「本当ですよ。仕事は大体終わりましたし、残りはほぼ一年後の行事しかありませんし」

「僕達頑張ったんだよ~?」


残りほぼ一年後のものしかないって……どれだけ頑張ったんだ。まあこいつ等が努力すればそれくらいは出来るということだな。


「そうか、良く頑張ったな」


こいつ等が仕事まで放棄してたならもう回し蹴りどころではなかったが、ちゃんとやっていることに安心し、頬が緩んでしまった。


「「「「「……」」」」」

「……ん?何だ?」


全員無言になったので訝しむが、皆が皆顔を真横に向けていたり俯いていたり、口元を手で押さえていたりと奇妙なことに私から視線を逸らしていた。


「やべえ、可愛い……」

「落ち着け、落ち着くんだ俺……」

「織姫が可愛すぎて辛い……」

「鼻血出そう……」

「抱き締めたい抱き締めてキスして○○○とか×××したい……」


何やらこいつ等の周りの空気が不穏だが、スルーしよう。そうしよう。

私はスタスタと下駄箱の方へ歩き、それに気付いたあいつ等が焦って追い駆けてきた。



校舎の玄関を出ると、何やら校門の方が騒がしい。何だ?

追い駆けてきた奴等も門の騒ぎに気付いたようだが、誰一人原因が分からない。

というか、よくよく見たらあれ殆ど女性じゃないか?この星界学園の制服じゃなく、他の学校の制服を着ている女の子やら大人な女性が何やら一部の門の周りに集まっている。


――私も代理人じゃない方が良かったなあ……。


悲しいが、これも織姫として生まれた運命だ。内心悲しくなりながらも騒がしい女子の集団を通り過ぎようと――。


「織姫」

「……え」


したが、唐突に誰かに腕を掴まれて振り向かされる。

目の前には、一言で言うなら爽やか系イケメン。さらさらとした(つや)やかな黒髪。鼻はスッとした綺麗なもので、目元は柔らかく、唇は薄いがエロさが醸し出されている。服装はグレーのスーツで綺麗に着こなしている。

そんな男の人が笑顔で私の名前を呼んだ。


「おい!」


ぽかんと茫然としていると、先程付いて来ていた奴――生徒会長だったっけ――が怒鳴る様に叫び、私――というか私の腕を掴んでる人を睨み付けている。


「何かな?」


爽やか系イケメンが腕を掴んだまま笑顔で生徒会長に答えた。すると黒獅子とその他が顔を顰めながら喋る。


「織姫から~離れてよ~」

「嫌がっているでしょう。腕を離してください」

「お前何なんだ」

「というか織姫の知り合い?」


何でお前等怒ってるんだ。……まあ、知り合い……っちゃあ知り合い、だけど……。



「寧ろ織姫の婚約者だけど?」

「ちょっ」

「「「「「は!?」」」」」



……相手がカミングアウトしたから仕方ない。

そう。目の前にいる爽やか系イケメンは――……私の婚約者、だ。


この男の名前は牛澤(うしざわ) 暁彦(あきひこ)。私より年上の23歳。この年にしてあらゆる業界のトップである牛澤財閥の社長だ。

暁彦さんと知り合ったのは私が7歳、暁彦さんが13歳の時だ。私の母と暁彦さんのお父様は知り合いで、私達は引合わされた。

最初は親同士の口合わせで婚約者となったが、年を重ねていく内に私も、そして彼も好き合うようになっていた。(後で聞くと暁彦さんは初めて会った時から私の事が気になっていたとのこと)


今では彼は世界を駆け巡りながらの仕事をしているようで大変忙しいものだが、それでも毎日一回は電話をするという親しい仲になっていた。


私が星界学園に入学することが決まった時、彼は私が入学することを渋っていたが、彼自身この学園の卒業者だから強制的な入学は仕方ないと渋々了承してくれた。

――入学する前日、私の知らないところで北の小父様に不満を言っていたようだが。北の小父様が少しやつれていた。


それから私の周りが男だらけと知って彼は正式に私が暁彦さんの婚約者だと周りに通告しようとしたが、私が止めた。

牽制だろうけど、私が暁彦さん以外好きになるとは思わなかったし、通告したら何かと挨拶回りやらなんやらしなければならなくなるから(面倒臭くなるから)止めたのだ。まあこの学園を卒業したらすぐさま結婚することが確約されているが。


とまあ長ったらしく説明したが、ここでカミングアウトした暁彦さんをちょっと恨む。何もこんな公衆の面前でしなくても良いのに、と。



それからはカミングアウトされて茫然とする男達を置いて、暁彦さんは私を連れて彼が寝泊まりするためだけにある高級マンションへ赤いスポーツカーで連れられた。

いつもは忙しい彼だけど、今回月曜の朝まで時間が取れたとのことで、二日と半日の間ずっと一緒にいることが出来て嬉しい。



ただ。



月曜に面倒臭いことになる予感が嫌という程感じ、私は溜息を吐くのだった。





誤字・脱字がありましたら教えてくださると嬉しいです。

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