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Mixed breed  作者: 涼波
第1章 辺境の街サジャ
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出発

 初投稿なうえに初作品です。

馴れない点など色々あると思いますが、よろしくお願いします。

「それでは師匠、行ってきます。半年間本当にお世話になりました」


 光さす森のなか、かろうじて道とわかるそのうえで、俺は目の前の人物に向き直り、深々と頭を下げる。本当なら地面に膝ついて頭すりつけてもいいくらい世話になったが、この世界ではそんな礼の形はないらしい。


 そうここは日本じゃない。それどころか世界も違う。多分異世界、というやつだ。そうじゃないと目の前の人物の説明がつかない。

 腰までとどくストレートの銀髪はいいとして、金色の瞳、もうここで人間じゃない。

さらに長くとがった耳とか、どこからどう見ても、エルフです。俺の世界では想像上の生き物だが、本人もエルフと言っているので間違いない。


「うむ。一応外に出ても問題ないくらいには鍛えたが、十分に気をつけろ」


 どう見ても十代前半の美少女のエルフなんだが、言葉がこう古くさいというか爺くさいというか。でもこれが地らしい。やっぱ200歳とか超えると違うのか。

 いつも通りのあまり表情のない顔だが、半年も一緒に暮らせば何となくわかる。この顔は心配してるんだろう。すみません、出来の悪い弟子で。


 彼女、イレーネはエルフの里の守護者だ。里のエルフの中で一番強くて、里の入り口に近い場所に住んでいる。外からの侵入者に対して里を守るのが彼女の役割なんだが、里を囲むこの森自体、エルフ以外は入って来れない様になってるのに意味はあるのだろうか。

 だが、そのおかげで里の近くに倒れていた俺を拾ってくれて、世話までしてくれたんだから俺にとってはまさに恩人だ。

 一般的に排他的な種族と言われている彼女が人間の俺を助けてくれるとは、と目が覚めた時は驚いたものだがそれには理由がある。


「リュウ、お前は弱い。人間とエルフのハーフだからな。それだけは忘れるな」


 ……そうなのだ。何故か日本人の俺、白瀬龍人(しらせ りゅうと)(20歳)はこの世界ではハーフエルフという生き物になっていたのだった。

 マジでこの世界の神様に、何故だと小1時間程問い詰めたい。





 俺の師匠であるイレーネが教えてくれたこの世界には、エルフや人間の他にも色んな種族があって、それらが一緒に暮らしているんそうだ。

 その中でエルフだけは例外で、自分たちの種族だけでこうやって引きこもって暮らしているらしい。さすが歪みない引き蘢り種族。


 俺は一応半分エルフなんで追い出されることはなかったのと、半分人間のせいでめちゃくちゃ弱すぎてエルフの恥になるからってことで、修行という名の名目のもとにこの森に置いてもらえた。まぁ後半が本当の理由だと思う。

 彼らからすると、異世界の人間だろうがエルフの血を引いてるって事実の方が、問題らしい。

実際、イレーネ師匠の修行はちょっと思い出したくないぐらい容赦なかったが、おかげで並のエルフぐらいの身体強化ができる魔力を手にすることが出来た。

 まぁ、普通のエルフは俺みたいに身体強化する必要ないんだけどね。ちくしょう。


 つまり、外見がエルフに近くて身体能力が人間並の貧弱さ、これがこの世界のハーフエルフの特徴なのだ。つまり激弱!! 世界で1番弱い人間の次の弱さ!!


 しかも、純粋な人間絶滅しかけてる世界だし ここ。

 純人族っていう人間達が保護されてる世界とか、ないわー。しかもこの国では見つかると強制的に城で保護されるらしい。これ以上減らないように管理されるんだと。


 これを聞いた時、マジでハーフエルフで良かったと思ってしまった。だってさ、この管理っていうのが、増やすためだけに本人の意思に関係なく、相手と結婚させて子供をつくらせることだって言うんだよな。

 まっ先に頭に浮かんだのが、朱鷺とかいう日本で絶滅した鳥を島で繁殖させている話。たしか中国からもらって、増やすのにがんばってたよなぁ。ただ、倫理的に人間相手にそれとか、どうなんですかね。


 しかし手遅れだった場合、この世界の人間は本当に絶滅するんだろう。俺のいた世界の鳥のように。

 もしもそうなったら100年も経てば、人間とのハーフの俺も珍獣扱いになってしまう。最悪、この世界の人間と同じ扱いになるかもしれないわけだ。

 半分人間の俺はエルフの半分の寿命しかないが、それでも200年は生きるらしい。そうなると、最悪、人生の半分は軟禁生活まっしぐらだ。そんな冗談はマジで遠慮したい。

 まぁその前に何としてでも日本に帰ってみせるがな!!



 そんな訳で、帰る方法を探すためにも、この里にいつまでも引きこもってもられない。外の世界に出なければ話にならないのだ。

 存在自体怪しい俺を、追い出すどころかこの世界でも生きていけるように、と鍛えてくれたイレーネ。彼女への感謝の気持ちは、言葉では簡単には言い表せない。


 もう一度彼女に頭を下げる。

そして外の世界へと続く目の前の森に、その一歩を踏み出したのだった。



 







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