魔王軍団、生徒会。
俺、前島卓也が通う「雷鳴高校」では何かしら委員会に属していれば制服の襟に、その委員会ごとのバッジを付ける決まりになっている。そんな俺の襟についているのは、雷の形をしたバッジである。まさに学校の名を表すのにふさわしい生徒会のバッジである。
そんなバッジをつけながら俺は、放課後の時間に生徒会室へと向かっていた。すると、俺の目の前に二人組の女子が現れて、手前の女子が
「あのっ、生徒会の前島先輩ですよね?」
「あぁ、そうだけど。」
「これ、神山会長に渡しておいてもらえますか?」
っといって、1通の手紙を渡してきた。
(またかよ・・・・)
そう思いながらも俺は、その手紙を受け取った。
すると二人組の女子は、きゃあきゃあ騒ぎながら去って行った。
「はぁ。」
溜息をつきながら、俺は再び生徒会室へと向かった。
そして、生徒会室へと着いた俺は1度深呼吸をすると、その扉を開いた。すると
「あっ、遅かったじゃない卓也!」
「ったく、魔王様を待たせるなど・・・死ねばいいのに。」
「遅かったですね。何かあったのですか?」
「わぁい、たっくんだ!おそーいよー!」
「卓也さん。もう少し自覚を持ってください。」
女子4人、男子1人による声が一斉に聞こえてきた。
「すみません。」
そう言いながら、自分の席に座る俺に対して、
「卓也さん、遅刻はいけませんよ。」
そう言ってきた俺の隣の席に座る小さな少女は、三井理沙1年生の会計である。しかし、その正体は魔王軍四天王の一人、軍師のリサエルである。
「そうですよ、遅くなる時はあらがじめ言っておいてもらえると助かります。」
理沙の横で優しく語りかけてくるメガネの青年は、園崎裕也3年生の副会長にして魔王軍団四天王の一人、魔術師ユウセフである。
「たっくん、おなかすいてない?おかしたべる?おかし!」
理紗と机越しに向き合う席に座っているポニーテールの元気な少女は、高倉空子2年生の書記にして魔王軍団四天王の一人、暴食家のクーリプである。
「空子、甘やかすのは止めなさい。そんな男に食べるものなどありません!」
空子の隣で冷たい一言を言った女子は、花村椿3年生のもう一人の副会長にして魔王軍団四天王の一人、拷問官ツヴァインである。
「まぁ、みんな落ち着きなよ。これで6人揃ったんだしさぁ。」
そう言いながら、4人を黙らせた彼女こそが3年生でこの学園の生徒の頂点の生徒会長にして魔族の頂点である魔王の神山伊吹、魔王イブリシュタインである。
この5人は、人間界とは別にあるもう一つの世界「プリグラム」と呼ばれる所からやってきたらしい。「プリグラム」で勇者率いる教会の者たちとの戦いに敗れた魔王と四天王は殺されると同時に転生術式を使い、人間のそれも子どもの姿でこちらの世界に来たらしいのだ。そして、魔王たちは魔術を駆使し人間界での名前と住むところを手にいれ、この「雷鳴高校」に通い始めたのである。後は、魔術で生徒や教師の記憶をいじり生徒会まで上り詰めたらしい。それを偶然知ってしまった俺は、記憶を消されそうになったが何故だか俺には魔術の類が効かないらしく、こうして生徒会の庶務として魔王とその四天王に従うことになったのである。
「あっ、そう言えば会長。さっき廊下で1年生の女子が手紙を・・・」
そう言って、先ほど渡された手紙を伊吹に渡すと、伊吹はそれを開き中を読んだ上で
「はぁ、またかぁ。今月でもう12通目よ。私が美しすぎるのはわかるんだけど、さすがに人間はなぁ。あとで、断っておくわ!」
そう言って、ゴミ箱に手紙を捨てた。そして
「さてと、では今日も生徒会会議を始めますか!」
これは、そんな5人の魔族と1人の人間の所属する生徒会の物語である。