3剥き目
ハロー、ユーリだ。
万年発情豚人に攫われて勝手に養子にされたユーリだ。
最近2歳になって拙くも喋れるようになってきたぜ。
ぶっちゃけもう少し前から喋れそうな気はしてたんだが、あまり早すぎるとまた豚が調子に乗りそうだったから自重した。
自重したんだけどな・・・どうもやっぱり早すぎたみたいで、豚は狂喜乱舞してた。2歳で喋り始めたって話を前世で聞いたことがあったがこれは失敗した。
まあ早くから教育が始まったので結果オーライだな。
ちなみに、なんとあの豚はここら一帯の領主だった!
いやまあなんとなく予想はしてたけどさ。
でも爵位はそんな高くないらしいよ?
それほど広くもない領地の領民殺して税収減らしてって本格的に馬鹿。
しかも魔力のバカ高い俺で一山当てようとしてる他力本願っぷりは見てて呆れてくる。
それに顔が脂ぎってて汚らしい。息臭い。
他にもここでの生活を苦行にしているのは豚の家族連中だ。
どうも俺は気に入られているようなのだが、どうせ気に入られるなら美人が良いというものだ。例え男相手だとしても、だ。
まあね?俺を気にいるのもわかってしまうのですよ。
なんといっても、今生で手に入れた、というより両親から授かったこの顔!
いやー初めて鏡に映った自分を見たときは、目を疑ったね。
というか本気で鏡じゃなくて別世界に繋がってるのかと思ったからね。
ちょいと天パなふわっふわで漆黒の髪に同じ色の瞳。正直日本人顔って好きだったからこれは嬉しい。髪と目が黒いってだけで大分西洋人のイメージから離れるよね。
しっかし、親父と母さんの面影を引き継いだのはわかるんだが、あの中途美人な二人を掛け合わせるとこうもいい顔になるとは思わなかったぜ。
将来イケメン確定である。
この顔はもう思いっきり使わせてもらおうと黒いことを思ってしまったのは前世の反動だろうか?
さて俺のイケメン談義は置いといてだな、豚の家族の話しだったか。
豚の嫁(以下豚婦人)は流石に体格は人間だったが、顔がキツイ。
皺の位置とか目の釣り上がり具合とか、笑顔なのに引きつって魔女に見える――まあ魔法は使えるのだから魔女でもあながち間違いではないけど――ところとかもう最悪。
あと香水つけすぎて臭い。息は当然臭い。魚の匂いがする。
俺の2つ上の姉は顔が酷い。その上甘やかされて育ってるから性格も屑だ。
この家の教育は自分たちは高貴で雅で有能で下々の民を文字通り使って繁栄し素晴らしき血統を守るというのを散々刷り込まれる。もはや洗脳に近い。
この国の貴族全てがよもやこんなひん曲がった教育をしているわけではないだろうが、それでも当初はかなり不安になったものだ。
今は、どうせもうすぐ潰れるのだからいいか、と思い直した。
まそんな教育のせいで豚家族の性格は歪でとても領主として真っ当に仕事してるとは思えない。
前世で真っ当な事してなかった俺がこういうことに不快感を感じるのは良心が働いているということなのだろう。
薬の人体実験を無感情に行っていた前世とはえらい違いである。
こう言ったところで今の俺には特にできることもないからな。領民にはもう数年我慢してもらおう。
今俺は勉強に必死なのだ。十数年ぶりに。
なんとか喋れるようになった俺は次に文字を覚えるために豚と交渉し、何故かブッサイクな姉に教えられることになりそうだったが、その必要はなかった。
文字はアルファベットが多少変形したようなものだったのだ。数字もアラビア数字の派生系で覚えるのに時間を必要としなかった。記憶と違っている部分だけ覚えれば良かったのだ。
姉の膝の上に座らされる前に、さっさと覚えた事を報告してなんとか事なきを得た。
姉は悔しがっていたが俺は非常に安堵したよ。だってあの女なんか変な臭するんだ。肉汁みたいなナマモノ系の。
何はともあれ、字が読めるようになった俺は、書庫へと忍び込みこの世界の知識をつけた。
2歳児のどこにそんな力がって?そんなこと言われてもマイボディから溢れるこの好奇心はきっとチートパワーとかじゃないだろう。きっと、うん。
前世の全盛期よりいい動きしてるとかきっと気のせいだから。
まあとにかく、
パオロ大陸。それが今俺がいる土地の名で、大陸は4つの国が治めている。
ノルド帝国、エルヴェスト王国、オステル王国、シュド領連合国の4つ。
ノルド帝国は魔人と言われる様々な亜人種が住んでいる大陸最大の領土を誇る北の大国。
エルヴェストは西に位置するエルフさんの国。
オステルは、恐らく今俺がいる東の国で人間が多く商売などで栄えている。
シュドは大陸南部の獣人?達の集落が集まって出来た国らしい。
他にも山々にドワーフさん達が暮らしているそうな。
魔人の種類が半端なく多いし、獣人も種類があるし、ドワーフとエルフは種族内で分類まであって正直覚えるのは面倒だったが、情報の大切さは身をもって知っているのでなんとか全て覚えた。
意図せず宗教観を否定してしまったら、自爆テロで拠点を吹き飛ばされたときは真面目に死ぬかと思ったぜ。ある意味で知らぬが仏って的を得ているよな。
まさか牛肉云々で自爆されるとは思わねーだろ?まああいつがハンバーガーうめーうめーって食ってたのが悪い気もするが、それは置いておこう。
お次はお待ちかねの魔法だ。
埃かぶっていた「魔術入門書」という本で、魔法――というか魔術について学ぼう。
魔術で使う術のことを魔法と言うとかなんとか。まあそんなんどうでもええねん。
まず魔力には属性が有り、その属性の魔法しか使えない。
基本的に最低1つ以上の属性を誰しもが持っているが、2つ持っていればすこぶる優秀で、3つもあれば英雄とかそういうレベル。なんでも魔力量によって属性の所有数も比例するんだそうだ。魔力量が多ければそれだけ多種多様な攻め方ができるということか。
で、この魔力、なんと遺伝するらしいのだ。
だから俺も攫われたのだと理解した。膨大な魔力を持っていればその分いい御身分のところと繋がりが持ちやすいということだろう。
なんとも迷惑で欲にまみれた話だなぁ。
属性は基本属性の土、火、風、水。
上位属性の鉄、炎、雷、氷となっており、またこれらの他にも光と闇がある。
更に固有属性と言われる、種族だったり一族の特殊属性として、霧、木、砂、酸など様々なものが確認されている。
最後に、古代文献や御伽話などには光と闇の上位で混沌があり、他に空間、時間、創造、破壊などが出てくるが、現在では廃れているのか元々無い夢物語だったのか、存在は確認されていない。
属性とは別に無属性魔法に分類される魔法があり、身体強化や、無意識下の魔力による自動障壁、魔力検知、そして逆に魔力隠蔽などがこれにあたる。
これらは魔力を直接操作するようなもので、魔法と呼ぶかどうかで時折無意味な議論が交わされることもあるらしい。
俺には関係ないな。
と、ここまでが本の序文みたいな話しで、あとは魔法の使い方の初歩的な事が書かれていた。
1.まずは魔力を感じましょう!
嫌というほど感じます。
2.次に自分の属性を判別しましょう。複数持っている人もいるので全ての属性で試してみることをオススメします!空間時間なんて出来ちゃえば一発大金持ち?
属性を判別するには次を詠唱しながら魔力に呼びかけてください。
『理を示せ、我が魔力、○○』丸には属性を入れてね☆
成功したらその属性に応じた色の魔力玉ができるはずだよ!
なんかこの本に疑問を感じてきたが、今は魔法を早く使えるようになりたいのでスルー。
早速試してみる。
試してみた。結果使えるのは混沌、空間、時間、創造、破壊。
てか混沌は白と黒のマーブル球だったんだが、他の奴は色と言えるのか微妙な感じだった。
空間はなんか景色が歪んで見えるだけだし、時間は球を通してみると向こう側の景色の時間が早く見えたり遅く見えたり止まったりとめちゃくちゃ。
創造で謎の半透明な玉が出て、破壊で書庫の椅子が一つ消滅した。
なんか・・・うん。あれだな。チートってやつだ。
正にチート、ズルい。
というかこれ今からでも復讐ができてしまいそうなのは自惚れだろうか?
まあもう少し魔法の使い方を安定させて、実力もつけてからにしよう。
時間はそれこそたっぷりあるんだしな。
「そういきごんで、おれはちいしゃなからだににゃあわないガッちゅポーじゅをとるのだった!」
「誰に仰ってるのですか?」
俺は赤面してうずくまるのだった。
主人公チートはけっこうぶっ飛ばす予定です
たださすがに幼児体型の今は完全ではないです
前世の全盛期以上なんて以ての外です
あと数年でそうなることは確実ですけどね