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24剥き目

グ モロン!ユーリだ。


今はまだ日が昇ってからそんなに経ってない。

朝の空気が気持ちいい。


さて俺はというと、独りでギルドへと向かっている。

なんか知らんが呼び出されたんだ。

特に問題を起こしたつもりは無いんだけど、悪い予感しかしない。

ただ無視する訳にもいかないよな。

下手したら仕事どころかギルドでの資格すらなくなっちゃうからな。

稼ぐ方法は多いかもしれないけど、のんびり稼げるとことなるとあまりないだろうし。


と、着いた着いた。


「ユーリ様ですね。こちらにお越し下さい」


入ったらいきなり受付の人が話しかけてきた。

出待ちならぬ入り待ちというやつか。

俺も人気者だな、フッ。

冗談ですよ?

嫌な予感がすげー当たりそうだから現実逃避したかったんだ。


「お連れしました」


「はいご苦労さん、下がっていいよ」


連れられた先にいたのは20代後半くらいの男性。

いったい誰でしょう?アナライズアナライズ~・・・・・!!!!!

結構つえーなこの兄ちゃん!

魔力が1500!え?しょぼい?

いやこれ普通のしかも人間でこの数値は異常ですよ。

しかも32歳!ギルドの支部長だそうです。


「やあ、君がユーリ君か。予想以上に若いね」


ハハハとイケメン笑顔を振りまく支部長。

腹黒そうである。


「私はアルフレードという。ここの支部長をさせてもらってるよ」


「どうも初めまして。ご存知の通りユーリです。それで、どういったご用件でしょうか?」


「うん、礼儀正しいのはいいことだね」


またハハっとイケメンスマイル。

その笑みが逆に怖く感じるのは俺だけだろうか。


「今日こんな朝早くから呼び出したのはね、君に頼みたいことがあるからなんだよ」


「僕にですか?僕よりランクの高い人なんていくらでもいるのになんでまた?」


ギルドのランクは言わばギルドからの信頼度みたいなものでもある。

それを無視して俺に頼みとはいよいよ嫌な予感が的中しそうな空気になってきた。


「まあそう思うよね。けど今回のは、簡単に言えば君の責任でもあるからね」


責任?はて一体何のことやら・・・。


「わからないのも無理はないよ。普通なら話題にもならないようなことだからね」


「今回は違ったと?」


「そう。昨日君が倒してしまった2人を覚えているかな?」


倒した、と言うとヴァーストの屋台前での阿呆な2人を思い出した。


「覚えてますが・・・まずかったりしますか?」


「2人を倒したって事自体は問題ではなかったんだけどね。喧嘩ふっかけて返り討ちにあうのまでギルドが面倒見れるわけもないし」


そりゃそうだ。でもだったらなんで俺の責任?


「問題は彼らが受けてた依頼の方。ちょっとお偉いさんの護衛だったんだけどね」


「はぁ」


「日程が今日出発でね、急すぎて代わりに受ける人がいないんだよ。なら一応事態の原因でもある君に頼もう、というわけさ」


うーん、なるほど、それは確かに俺のせいというのも頷ける気がする。


「そういうことなら、わかりました。その依頼受けましょう」


「おお、本当かい?それは助かるよ。こちらとしてもギルド外での出来事は基本不干渉が規則だからね。頼むのも少しあれだったんだ。いやーありがとう」


「いえ、元はといえばこちらの責任ですので」


やっぱなんか変な気もするな。

わざわざ俺に頼んでるってのもそうなんだが、こんなに感謝してくるのも逆に怪しい。


受ける人じゃなくて受けたい人いない依頼だったんじゃないか?

まあ受けるって言った以上引き下がる気もないけど、なんか頭の隅に引っかかるものがある。


「依頼主には出発を昼過ぎまで遅らしてもらったから、それまでに準備しておいてくれれば問題ないよ」


「はい、わかりました」


こうして俺は、どっかのお偉いさんの護衛任務を受けたのだった!












もし、もしも過去に戻ることができるとしたら、俺は迷いなく昨日の朝まで戻る。

夜の食事はいつも通り我が家で食べるし、昼過ぎに腹が減ったからといってヴァーストを食ったりもしない。

平和に、いつも通りの一日を送るだろう。

だがお生憎、俺の時間属性を持ってしても過去へ戻ることはできないのである。

そのへん神様がちゃんと仕事してる感がある。

もう少し怠けてもいいじゃない。

ばちが当たるわけでもあるまいに。


「・・・・もしやとは思うが、代わりの冒険者とはお前か?」


俺は無言で首を縦に振る。

それ以外の選択肢が無いからだ。

ギルドの依頼として受けた以上、そして俺自身の尻拭いである以上、やっぱなしなんて言えないのである。世知辛い。


「フンッ、せいぜい失態の無いよう気をつけるんだな。これからもギルドで仕事していくなら尚更・・・な」


嗚呼神よ、こんな時だけ祈るのは駄目だろうか?

何故俺の目の前には、昨日足をへし折った豚貴族が座っているのでしょう?

ギルド長はニヤニヤしてやがる。

あのヤロウ知ってて俺に斡旋してきやがった。

やってくれる。

確かにギルドの情報網はすごいらしいが、まさか俺の些細な事件まで洗い浚い調べたとは。

もしかして暇人?まあいいか。


「獣人嫌いのお前の護衛に獣人をつけてもいいのか?」


「ああ、そのへんは納得していただいてるよ。安心して君の従者達を使いなよ」


「フン」


俺と依頼主の貴族は大層機嫌悪そうな顔で話しているのに、なんでこのギルド長はずっとニヤついているのか理解できない。

ちょっと人間性を疑うね。

絶対こいつはいじめっ子だったな。


「そういうことならいいですけど、彼女達の気分を害するようなことの無いようにしてもらいたいですね」


「私に、獣に対して気を使えというのか?!」


ああもう、こいつは足一本へし折られた相手の前でなんでこうも尊大に振る舞えるんだ?

逆にすごいのかもしれない。


「まぁまぁ、ディスクリミネル様、そろそろ出発の時間ですし諦めてください。護衛無しで旅を許されるご身分でもないでしょう」


「むぅ・・・、ええいわかった。時間が勿体無い。さっさと行くぞ」


そう言ってディスクリミネルとか長い名前の貴族様は待っていた馬車に乗り込んでしまった。

開いたドアの隙間から家族も既に乗っているのが見えたので、いつ出発してもいいのだろう。

後は俺の合図だけで御者が馬を走らせるはずだ。


「従者の方はいいのかい?いつまでも馬車を待たせるわけにもいかないよ?」


「ああいいです。そこは問題ありません」


ニーナ達は普通に家にいる。

俺が鍵を使えばそこがドアになるので、わざわざ出てきて一緒に移動する必要はない。

それにこの貴族にあまり会わせたくもないしな。


「じゃ、出発してください」


俺がギルド長にそう言うと、ギルド長が手を上げて御者に合図を送る。

ガタンと音をたてて馬車が動き出す。

依頼によればこのままお隣の領地まで、馬車で3日ほど。

その間に襲ってくる脅威全てが排除の対象になる。


ランク的に今の俺が受けれる依頼より実は高かったりする。

その分報酬も良かったからな。

というか報酬が良いのに受ける冒険者がいないわけがないのだ。

上手く話に乗せられてしまった。


そんな俺を嘲笑うかのように天気は快晴。

こんな日には散歩して、草原とか公園のベンチとかで、ニーナの膝枕で寝たいものだ。

なんで馬車の後ろでボケーっと空を眺めてにゃならんのか。


無論襲撃が無いに越したことはないのだが、何も無いというのも、それはそれで退屈だ。

何を贅沢な事を、と思うかもしれない。

でもそれくらい暇なんだ、護衛ってのは。

まあ他の人たちからすれば違うのかもしれないけどさ、俺は魔法を使ってしまえば周囲を警戒する必要もなくなってしまう。


本日ご紹介しますのはこちら!

『万象天獄護法壁』

やけに仰々しいですが、所謂結界魔法です。

というかただの結界です。

この名前はマリス・マトリョーシカに書いてあっただけで、決して俺がつけたわけではないことは知っておいてもらいたい。

単に誰かが範囲に入ればわかるのと、外からの攻撃にはかなりの防御力を誇るっていう魔法だ。

内部の安全は?と言われればどうしようもないが、そこは俺の戦闘力でカバーできるだろう。


そんなわけで俺はかなりぐーたらとではあるが、初めてのお使いならぬ初めての護衛をするのだった。

長らくお待たせしてしまいました。


待ってねーよ、という方もここまで読んでいただきありがとうございます。

1000文字くらいから文が出てこなくてずっと止まってました。プロットはできてるのに不思議ですね。


感想に励まされて何とか仕上げました。

ありがとうございます。


では、次の話まで。

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