17剥き目
真夜中に小さな屋敷の一室で引きを潜めて考え中。
隣の部屋には殲滅対象9名が集まっている。
俺が今考えてるのはこいつらをどう殺ろうか、ってことだ。
そろそろこっそり行くのも飽きてきたしって、早いか?いやもう充分だろう。
ということで取り出したるはみんなも知ってるクレイモア地雷。
知らない?それこそ俺の知ったこっちゃない。
まあ簡単に言えば扇状に鉄球700発をぶっ飛ばすやつだ。
このクレイモア、実は有効加害距離50mもあるヤバイ代物で、当たったら痛いじゃすまない。
今回使用するのはリモコン式、俺の好きなタイミングで作動できるってことな。
ただ、1個だけだと全滅まで行かない可能性があるから、M1911も出しておこう。
扉から少し離れた位置に設置してっと、後はこの部屋で物音をたてればいい。
っつーわけで早速ガバをバキュン。
うん、いい感じで警戒してくれてるね。何か話してるな。
誰が先頭かで揉めてるのかもしれない。こういう時練度の低い連中は時間がかかって困る。
俺は念の為防御と防音の結界を自分の周りに展開。
これいいんだけど、防音というよりは音遮断だな。自分の声も外に聞こえないけど周りの音も一切聞こえない。
ニーナの方はどうなったかなー、とあてもないことを考えていたら、扉がバンっと勢いよく開いた。音は聞こえないけど多分そんな感じだ。
明かりが見えるからランタンか松明か、はたまた火系の魔法かなんか使ってるんだろう。流石に正面に立つなんて愚行は犯さなかったようだ。
ドタバタと敵が部屋に入ってくる。何度も言うが音は聞こえていない。見た感じそうだっただけで。
ご丁寧に入り口付近からあまり散開せずにもたついてくれた。
確かに入ってみたら子供が一人いるだけってのは戸惑うかもな。
賊達は口々に何か言ってるみたいだけど、俺が何も答えないのでいらつき始めた、ように見えた。
けど俺は気にせずに一番いいタイミングでクレイモアを作動!
ドゴン!と凄まじい音がした。ような気がした。振動は伝わってきたね。
防音を解いてスキャンをかける。
「あぅ・・・あぁ・・・」
「ゲホッゴホッ」
防音を解いたので周囲の音が戻ってくる。
クレイモアは思った以上に効果があったらしい。というか壁にも所々穴があいちゃってる。盗賊達は近場にいた奴は手足も吹き飛ばされてるよ。
鉄球大量に浴びたらそりゃそうなるか。
呻き声がまだ聞こえてるから生き残った奴もいるな。
傷の状態を見てトドメを刺していこう。
クレイモアだけで7人は仕留めた。殺せたのは5人だけどほぼ致命傷な傷を負わせたのも2人いる。残りの2人も無傷じゃなくて重傷で、今は痛みとパニックで辛うじて動ける程度だろうから9人全員を仕留めたといってもいいかもしれない。
多分今の状況から助かるのは無理だろうけど、重傷なだけだった2人にも一応ガバで撃っておいた。
ギルドへの証人で1人くらい生かしておいたほうが良かったのかもしれない。
ニーナの方はさっきスキャンした時点で戦闘中だったからもう多分駄目だ。終わってしまってる。
こんなやつらの為にわざわざ回復魔法を使うのも嫌だし、まあいいか。
ひとまず片付いたので、さっきまで盗賊達が飲んでいた部屋を漁ってみる。
ゲームじゃ勇者の特権だったガサ入れだ。まさか俺がやる日が来るとは思わなかった。
「おろ?これはこれは」
見つけたのは手紙。
こんなしょぼい盗賊に識字能力のある奴がいたのかは知らないけど、でも結界魔法もあったし1人くらいいたのかもな。
で、見つけた手紙には意外な印が押してあるんだよ。つい最近も見た様な・・・これモカマド商会の印だった気がするんだよなー。
また面倒事な気がするなー。嫌だなー。
ハラブゥが繋がってるかは知らんけど、怪しい。
だってあいつの護衛が賊っぽかったし、繋がり疑っちゃうよねぇ奥さん。
ああでも今気づいたけど俺こいつらがほんとに盗賊か確認してないんだよなー。
いやそっちは疑ってないんだけどさ。聞いた時にモカマド商会を騙れば関係があるって思えるじゃん?
うーん、まいっか。
知っての通りモカマドはでかい商会だからな。藪蛇どころか藪ドラゴンとかになったら目も当てられない。ギルドに任せたほうが火の粉も降りかかってこないだろ。
というわけで中身は読まずにそのまま『アイテムボックス』にしまう。読んでませんといったところで信じてはもらえないだろうけど、態度は重要だ。
一点張りは時に強い効果を生むのだ!と自分を誤魔化しておこう。
ニーナと合流して報告を聞く。
ちなみに上階に金目のものは無かった。敢えて言うなら賊の装備品くらい?そんないい物にも見えなかったから放置。
クレイモアで殆どが破損してたし。
「1階の敵は4名、全目標撃破、その後調査中に地下室を発見、敵1名を射殺、奴隷と思わしき者を地下牢で4名を発見、先ほどの1名は見張りだったようです」
「あー下のは奴隷だったか。じゃあ見に行こう」
固まって動かないから下でも飲んでるのかと思ってたわ。
確かに間取りがちょっと不自然だな、言われてみれば。
1階の部屋の一つの暖炉から地下への梯子があった。なるほど、これで降りれるわけか。
地下に着くとまず感じたのは血の匂い。まあこれはニーナが一人殺してるから当然だな。
そしてカビの匂いか。あとはアンモニア臭も若干。あと獣臭もする気が・・・。
「私が発見した賊は行為の真っ最中でしたので」
俺が顔顰めてたらニーナがそう言ってきた。なるほどそれでか。
しかしまたエスパーされてしまった。ニーナおそるべし。
「頭の悪い連中はどこで沸いてもやることは変わらんな」
「そのようです」
まあ前世の俺もそんなもんだけどな。
牢屋に着くと、中には報告通り4人がいて、その内2人が獣人で、1人エルフ、もう一人は人間だ。獣人の1人なんて俺と大して変わらん歳の少女だ。いい趣味してやがる。
ちなみにみんな女性――1人少女だけど。
全員が首に隷属の首輪とかいう奴隷用の魔道具をつけてる。
いやーこれつけるだけで逆らえなくなるとか!何その便利アイテム!俺にまた奴隷商になれというのか!いや冗談だけどさ。
人身売買って管理が面倒だからな。特に奴隷とかの場合、反抗されないように色々やらないといけなかったのに、この世界では首輪一つで事足りる。ホントなんでもアリだな魔法。
「ユーリ様、この者たちをどうしましょう?」
ニーナへの返答に俺は詰まってしまった。だって実際どうしろと?
こいつらはどうしたいのかな?
「あんたらはもう自由だが、どうしたい?生憎だが賊は全員殺しちまったんでそこんとこよろしく」
俺の言葉が染み渡って・・・・ない。いきなりのことに皆が呆然としている。
あ、ガキがいきなりこんなこと言ってもそうなるのは当たり前か。
こればっかりはしょうがないな。まだ8歳だもの、俺。
「ニーナ、状況説明してあげて、それから今後の希望を聞いといて」
「畏まりました」
信頼できる部下に任す!これを人は丸投げと言う!
で、返ってきた答え。
人間の人、家族の元へ帰りたい、けど隷属の首輪が・・・。
エルフの人、森へ帰りたい、でも隷属の首輪が・・・。
獣人2人は親子だそうで、お母さんの方若いんでてっきり姉妹かと思ってたよ。ちなみに猫人族だそうです。耳がキュートだね。
娘の方は母親の服の裾をキュッと掴んで後ろに隠れるようにしてこっちを伺っている。キュートだね。
この2人は集落が襲われて壊滅してしまったので帰るところが無いらしく、あろうことかこのまま奴隷として貰ってくれと言ってきやがった。
「それは嫌だな」
「な!そこをなんとか!お願いします!」
断ったらお母さんの方が泣いてすがってきた。だが断る!
「本当になんでもします!だから!」
うーん、なんでこんな必死なのかわからないな。進んで奴隷になるってのが理解できない。あとでニーナに聞いてみよう。
「まあ落ち着け。ちょっと勘違いしてるみたいだがな、俺は奴隷はいらんと言ってるんだ。てかわざわざ首輪つけて奴隷のまま帰る必要も無いだろ」
そう言って、獣人親子の首輪を破壊魔法で壊した。今回使ったのは純粋な属性魔力をぶつけるだけの言わば力技、ゴリ押しである。
ガラスが割れたような音と共に隷属の首輪が崩れ去った。
「これでいいだろ。落ち着くまでは面倒見てやってもいいぞ?」
俺がそう言って辺りを見回すと、俺以外の全員が俺を見てだらしなく口を開けていた。
ニーナでさえも。
ガバメントって実は結構すごいと思うんですよ。
一番思い浮かべる形ってなんだかんだガバメントだと思うのですよ。
無駄がない素晴らしい銃だと思うのです。
クレイモアって抉いですよね
猫耳娘という定番・・・ヒロインの予定です。
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