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15剥き目

「おいこの****クソ野郎ども!ニーナは俺の嫁!」


勢い余って前世のノリで叫んじまった。周りは口をぽかんと開けて俺を見てる。

俺の周辺にいる奴ら全員が、だ。ニーナは珍しく顔を真っ赤にして俯いてた。

これは怒らせてしまったか?なんてどっかの阿呆な主人公みたいな勘違いはしないぜ俺は。


それにいずれ嫁かそれに近い何かになるのはもう決まったことだから嘘は言ってない。


「んだあ?ガキぃ、てめ今なんつった?あ゛?」


犬人の一人が威嚇してきたけど、俺には何の威圧感も感じられない。まず脅すなら凶器を持て。徒手空拳で素人が与えられるダメージなんてたかが知れてるんだ。

まあ一度言ったことを聞き返してくるあたり頭の悪さは窺い知れるがね。


「聞こえなかったのか?お前らの頭に詰まってんのは金玉か?ニーナは俺の嫁っつったんだよ!」


そこかよ!っていうギャラリーのツッコミが聞こえたが気にしない!

おお!ニーナが、ニーナが笑った。いつもの悪巧みをする時のニヤリじゃない、純粋な微笑を見た!さすが俺。


「このクソガキが!ぶっ殺す!」


ちっ!犬風情が俺の視界を邪魔するなと言いたい。

でも、調子乗って殴りかかってきたのをどう処理しよ(殺そ)うかとボケーっとしていたら、横から手が出てきて犬の腕を掴み取ってしまった。ニーナは顔を赤くして微笑んだまま動いてない。じゃあ誰が?と思って見上げると、牛の顔があった。


「モー」


思わず鳴いてしまったのは許していただきたい。めっちゃ怖い目で睨まれた。

睨まれたおかげでようやく事態を理解し始めたよ。この人は牛人だね。俗に言うミノタウロス。牛の頭と思っていたのもよくよく見れば人間の顔と牛の顔を足して2で割った様な造りになってる。頭に生えた2本の角が直角に曲がって斜め45度上を指している。筋肉はそんないらなくね?ってくらいにモリモリだ。こうはなりたくない。

牛人の男性はこういう体格が殆どだけどね、それでもこの人は抜きん出てバフい。

ちなみに牛人の女性は総じて超乳か魔乳で、顔が人間に近い夢の種族である。


「センシだ・・・」


誰かの呟きが聞こえた。それがギャラリーのものだったかニーナに絡んでた4人の内の誰かだったのかはわからなかった。


「大丈夫か?坊主」


牛人の男が渋いバリトンボイスで話しかけてきた。どうやら俺にいらぬ心配をしているらしい。


「大丈夫ですよー」


手をひらひらと振って無事をアピール。ちょっと失礼かもしれないと思ったのは内緒。


「そうか・・・。おい」


「はひぃ!」


牛人が4人組を睨みつける。4人はビクゥっと肩を震わせた。心なしか腰が引けている。ダサい。


「今日のところは勘弁してやるから帰れ、死にたくないならな」


死にたくないならのとこでチラッと俺を見たのは気のせいか?


「はい!そうさせて頂きます!!」


4人組はドタバタ退散してしまった。殺しそこねたよ、まったく。目立たなかったわけでもなく、獲物も取り逃がし、なんとも言えない気分になった。

てかこの人は有名な冒険者かなんかか?権力高いなー。

まあ不自然でない礼は言っておくか。


「どうもありがとうございます。助かりました」


「・・・そういうことにしておこう」


なんかわかってます的な感じで答えられたよ。なにこれ?どう返せばいいの?


「センシ、ありがとな!おい坊主、大丈夫だったか?」


なんか熱血臭の少年が出てきたよ。センシってこの牛人の名前か、てか戦士か!まんまだな。


「気にするな、ユーシャ。下手に死人を出したくなかっただけだ」


「流石に子供を殺すとは思えねーけどなぁ」


熱血はユーシャか、勇者か!こいつらは一体何ごっこをしてるんだろうな!


「・・・そうだろうな」


「ん?何か言ったか?」


「なんでもない」


すげぇ!こんなテンプレ初めて見たぜ!さすが勇者!でもそれは美少女とのイベントだと思うんだがなぁ。牛のオッサンとやって何が楽しいんだろうか?

しかし勇者に戦士がいるとなると僧侶や魔女なんかもいそうだな。あ、これフラグだな。


「ユーシャ様~センシ様~」


「おう!ソーリョ、マジョ、やっと来たか」


いた。流石にどこぞのゲームのように人目にどっちがどっちと分かる服装ではなかったが、二人とも魔法を使いそうなゆったりローブで、美人だった。さすが勇者だな。

恐らく貧乳の方が魔女だと思う。


しかしアンバランスなパーティだな。牛人がデカすぎて保護者と子供にしか見えない。まあまだ牛人以外は幼く見えるからしょうがないか。かろうじてエルフの多分ソーリョさんが年齢不詳で誤魔化している感じか。


「じゃあな坊主、勇敢なのはいいけど無茶すんなよ~」


ユーシャが手を軽く振って踵を返す。さすが勇者お人好しだ。

ユーシャに続いてソーリョとマジョもギルドの出入り口に向かう。残ったのは俺とニーナと牛人のセンシ。


「なんか用か?」


未だざわついているギャラリーには聞こえない大きさの声でセンシに尋ねてみた。


「あまり、ギルドの中で人を殺さない方がいい。目をつけられると面倒だぞ」


あら、マジで気づかれてたか。まあある程度実力のある奴なら分かるだろうってくらいの殺気は漏れてたかもな。


「ご忠告痛み入るよ。俺はユーリ、またなんかで会うこともあるかもな。戦士のオッサン」


「むぅ、これでもまだ60年と少ししか生きてないのだが、まあいい。ユーリ、次会う時も敵じゃないことを祈っている。またな」


俺からすれば充分おっさんやがな。牛人は長命種で300年くらい生きたはず。その内の5分の1と考えるとちょうど20歳くらいの感覚なのか?

なんかどうでもいいな。


「ユーリ様」


「うひゃう!」


俺を驚かすのに嵌ったのかこの子は。超至近距離で急に話しかけるのは止めてもらいたい。


「なんだよもう!」


「いえ、目星い依頼を見つけましたのでご報告を」


あ、でも振り返ってみるとまだ顔赤いね。可愛いね。流石に人目につくこんな場所でしがみついたりしないが、欲求は体の中で渦巻いて嵐になってます。


「そ、どんなん?」


「こちらです」


ニーナが差し出してきたのは『盗賊のアジト調査』の依頼書。

なるほど、調査のついでにぶっ潰して大暴れってわけか。中々わかってるなニーナも。


「いいなこれ。じゃこれ受けてきて」


「畏まりました」


今回の依頼はアジトの大体の位置がわかっているらしく、その範囲を調べて、アジトの正確な位置、盗賊の規模、賞金首の有無などを調べる、ってのが主旨だ。

そこを俺達は見つけ次第皆殺しのスタンスで突っ込む次第である。

作戦は俺がサーチアンドデストロイ、ニーナがカットマン――つまりおこぼれ係、って感じだろうな。うむ、素晴らしい作戦だ。

ただここで注意しないといけないのは持っているであろう金銀財宝も一緒に殲滅してしまわないことである。

潰すだけなら空から隕石でも降らしてあげればそれだけで充分だろうけどな。

一応"戦闘"もしたいから、どちらかというと落ち着いた方向性で潰しにかかる。


「依頼受託してまいりました」


ニーナが戻ってきた。


「ありがと、では早速出発しよう!」


依頼書にあった情報では盗賊のアジトはこの町から北西に行った大森林の中にあるらしい。まあスキャンすればそれほど苦労せずに見つかるだろう。

あとはどれだけ手を抜くか(・・・・・)を気にしつつ盗賊をぶっ殺していけば万事問題ない。


「はい。・・・ところでユーリ様」


ニーナが突然やけに改まった様子になる。表情は真剣そのものだ。


「どうした?何か気になることでもあるのか?」


「いえ、そうではないのですが・・・」


んー?なんか珍しくハッキリしないな。ニーナはいつも俺の心を抉るような(・・・・・)素敵の女性なんだが、こう口篭るのは見たことがなかった。


「お前らしくもない。はっきり言え。何か欲しいものでもあるのか?」


「そうではなくてですね・・・あの」


いったいどうしたというのか。しかもなんかもじもじくねくねしてる気がする。こんなニーナ見たことない!萌えた。


「なんだ?」


「式は、いつでしょうか?」


・・・・・・え?


「恐れ多くも伴侶として頂けるとの事でしたので・・・それともあの場しのぎの虚言だったのでしょうか・・・?」


ああもう自分で言って泣きそうになるなよ!こんな表情豊かなニーナは滅多に無い。というか無かった。ビックリしてるよ俺!萌えすぎて。


「いやいやいや、嘘じゃないけどさ。もう少し待ってよ。できれば年単位で。俺まだ8歳だからね?」


まだ勃ったこともないからね?とは言えないぜ。こんな大衆の面前じゃな。

せめて成人――ちなみに15歳――までは待ってほしいよ。やることやったとしても"結婚"はまた別の話だと思うよ?まして"式"なんて来る人がいないと物悲しいでしょうが。


「嗚呼、嘘ではないだけで恐悦至極。何十年でも待てます!」


どうやら大丈夫らしい。もちろん結婚云々の前に手は出すつもりであります。

誠心誠意手を出す所存であります。獲物を狩る虎の様に機を待つ所存であります。



すたんだっぷはりーあっぷマイサン!

なんか長めになりましたね


そしてニーナ嫁宣言!

意外でも何でもないですね

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