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14剥き目・ニーナ

こんにちは、ニーナです。


昼食を取った後、出かけたユーリ様が中々戻ってこられないので、心配になり追いかけてみました。

ユーリ様が何かに遅れを取るなんてことは無いと思うのですが、慢心はいけません。

ユーリ様も後悔は先に立たず、と仰っていました。


ゴブリンの撃破地点に行くと、しっかりと(・・・・・)解体されたゴブリンの死体がありました。これはユーリ様ではありませんね。

ユーリ様なら耳だけ取って戻ってくる確率が9割で、ゴブリンの武器も一緒に持ってくるのが1割でしょう。ここまで綺麗に解体はされないはず。


足跡が複数あるのでこれが横取り犯なのでしょう。その後にユーリ様も続いてますね。どうやら取り返しに向かったようです。私が追いつく頃には戦闘は終わってると思うのですが・・・一応向かってみますか。




まあ・・・探そうとする前に見つけることができました。なにせ戦闘の音がしましたから。

ユーリ様のお気に入りの武器――銃の発砲音を拾えたのですぐにわかりました。

私が行っても邪魔になるだけでしょうし、のんびり歩いていくことにします。


しかしあの銃という武器は中々に興味深いものです。以前は闇の世界で仕事をしていた私ですが、銃があれば楽だった任務を数えるとキリがありません。何より使い勝手がいいのです。破壊、威圧、制圧、暗殺など様々な工作活動に有用です。そして誰にでも使える単純明快な使用方法。ただ引き金を引くだけという清々しさで、いとも簡単に人を殺めることができるとは、我が主ながらなんと末恐ろしいものを作り出しているのでしょうか。




「ではよろしくお願いします」


「おう」


ユーリ様に追いつくと、恰幅のいい男と何やら話が纏まった後の様でした。周囲には冒険者と盗賊の中間の様な男達が体中に穴を開けて転がってました。


「ユーリ様」


「おわぅ!」


いい反応です。最高です!


「なんだニーナか。驚かすな、まったく」


「帰りが遅いので心配して探しに来ました」


心配する必要はほぼ無いに等しいですが、これもメイドの嗜みです。

それに、心配して来たのにその言い方は駄目ですね。お仕置きが必要です。訓練メニューを3倍にしておきましょう。


家を捨てて暫くして、ユーリ様は私と戦闘訓練をするようになりました。ユーリ様の戦い方は少し不思議で、基本は徒手空拳で武器を持った私と互角に渡り合ってきます。"しすてま"とか"はっけい"とかよくわからないことを説明されてましたが、最近やっと体で覚えてきたところです。

まあそういうわけで毎日訓練をしているのです。そして訓練メニューは私に一任されています。


「・・・今度連絡用の何か作るから許して」


おや、私の心が読まれたのでしょうか?これはお仕置きは考え直さなくてはいけなくなりました。色々と訴え掛ける目をしていたのが功を成したのでしょう。そういうことにしときましょう。

嬉しさのあまり顔が緩むのを抑えきれません。だってそんなものがあれば何時でも何処でもユーリ様とお話できるではないですか!


「ありがとうございます」


なんとかこれだけ言うことができました。誤魔化しも兼ねてお辞儀もしておきましょうか。


その後、商人を名乗ったハラブゥと自己紹介をして出発することになったのですが、馬が殺されてしまっています。


ユーリ様に動かしてもらいました。渋ったのでお胸のお触りを許します、と冗談で言ったら、いつの間にか30分触り放題を約束させられました。

私にはご褒美でしかないので素晴らしい契約です。



リップジックの入口で検問を受けて中に入りました。

ユーリ様は目立ちたくないということで、幻術で検問をスルーしてましたね。


「流石に馬車2台に荷物満載奴隷満載はきついわ」


そう言って肩で息をされています。汗もしっとりで大変素晴らしい!興奮します!

しかし私もなんで動かせるのか不思議でなりません。

ユーリ様にそう言うと、どこか達観したような泣きたそうな顔をされていました。


その後は何事もなく護衛を終え、報酬を受け取りました。

ですがこれは・・・もしかするともしかするかもしれません。


「ニーナ、ギルドまで案内して」


来ました!来ましたよ!お誘いです!

二人で街を歩く。ありそうで中々実現しなかったシチュエーションなのです!


「承知しました」


テンションが一周回って冷静になってます。

最近ユーリ様も大きくなられたので以前のように抱っこをせがんで来られることも少なくなりました。

なので人のいる町などでこうしているのは久しぶりになります。部屋の中だったり森で戦闘だったりは多いですけどね。


こうしてユーリ様と歩いていると、いつもの景色も違って見えます。

通りゆく様々な種族の人々に立ち並ぶ露店、それらの喧騒さえ心地良い音楽のように聞こえてきます。


ギルドに向かわれるということは、また依頼を受けたりするのでしょうか?それなら今度は一緒にできる依頼を探したいですね。

ユーリ様がご自身の能力開発に勤しまれている間、私は独りで食事や依頼でなるべくお金を使わないように切り盛りしてきました。

先日、「そろそろ実戦もしないとなー」とそれとない呟きを聞いたので、これからはなるべく一緒にいれる仕事をしたいのです。

嗚呼そんな夢の様な日々が永遠と続けばいいのに。



と、そんなことを考えていたらあっという間に到着してしまいました。口惜しや。


「ユーリ様、到着しました」


「ああ、入ろう」


ユーリ様に続いて私も戸をくぐります。中はいつも通りの景色ですが、普段よりこちらを見る視線の数が多いですね。

ユーリ様の御姿は天使と見紛う程の美を備えていますからそれもしょうがありません。まともな目を持った方が多いようで何よりです。


「じゃ俺は報酬取ってくるから、ニーナは次の適当な依頼に目星つけといて。なるべく戦闘が入りそうなやつでお願い」


「畏まりました」


頭を下げてユーリ様と暫しのお別れを断腸の思いでした後、依頼掲示板に向かったのですが、おかしいですね。視線が私とユーリ様とで半々になっています。

まあいいです。今はユーリ様に仰せつかった仕事をこなさなければ。


依頼はそれほど目星いものがありませんね。まだランク2なのでそんな贅沢も言ってられないのですが、ゴブリンやオオカミなどの退治が主です。


あ、これはいいかもしれません。


『盗賊のアジト調査』


本来は調査だけで、盗賊の人数などの情報をできるだけ多く集めることでもっと上位の冒険者、もしくは騎士などに依頼が行くはずです。

しかし、倒しちゃいけないわけでもない(・・・・・・・・・・)ので、調査中に盗賊と接触、結果として(・・・・・)戦闘になったならそれは自己責任です。問題ありません。

これがいいですね。これにしましょう。


「ようねーちゃん」


私が見つめていた依頼用紙がいきなり陰ったと思ったら、そんな声が聞こえてきました。


「あんたランクいくつだい?なんなら手伝ってやろうか?」


人間2人に犬人2人ですか。なんでまたこんなタイミングで絡まれたのでしょう?


「結構です」


正直見ただけで大した実力も無い事はわかったので、丁重に(・・・)お断りします。


「おいおいつれねーなぁ。いいじゃねーかよちょっとくらい」


何故でしょう?しつこいですね。しかも近いし臭いです。

いつもなら・・・・いえ、ユーリ様と同道して浮かれすぎたせいで認識阻害をかけるのを忘れていました。

これはいけません。メイドたるもの主の迷惑になるようなことをしてはいけないというのにこの体たらく。私もまだまだです。


まあそれは置いといて、この状況をどうしましょう。

ユーリ様は目立ちたくないと仰ってましたし、私が暴れてしまうとそれに背くことになってしまいます。理想は物語の騎士よろしくユーリ様が助けてくださることでしょうか・・・いけません、妄想が入りました。


チラリと後ろを見れば、何やら逡巡した後、決意を固めてニヤリとしたユーリ様と目が合いました。これは妄想が実現してしまうかもしれません。あれはそういう目です。


私は期待を込めてユーリ様を見つめました。




「おいこの****クソ野郎ども!ニーナは俺の嫁!」



ユーリ様、あなたはやっぱり最高の主です。

****には好きな罵詈雑言をいれてくださいw


ちなみにユーリの体術は前世の記憶を掘り起こしたもので、傭兵時代から培ったものです

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