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13剥き目

チャオ!ユーリだ。


ハラブゥの元々の護衛はどうやら本当に先ほどの盗賊だったらしい。

まさかまさかとは思ってたけど本当にそのまさかだとは思わなかったぜ。

なんかさあやるぞ!って時に裏切られて、俺登場ってことらしい。何をやるぞ!とは言わない。


で、護衛を頼まれた。まあさっきの戦闘を見たらそうしたくもなるか。

護衛と言ってもここからリップジックまではそう遠くないし、この森を抜ければ草原が広がっているような場所なので、この先戦闘があるとは考え難い。

それでも安全を優先したいのか、それとも建前上必要なのか。どちらにしろ稼ぎは良さそうなので快く引き受けた。


だって金貨1枚払うって言うんだぜ?相場を知らなくても破格だと分かる。

あれかな?お礼の分も含んじゃってるのかも。割引だけで充分なのに。


「ではよろしくお願いします」


「おう」


このおっさんあれだ、ワキガっぽい。関係ないけど。


「ユーリ様」


「おわぅ!」


いきなり耳元で囁かれたらこんな声も出ちゃう。仕方ない。


「なんだニーナか。驚かすな、まったく」


「帰りが遅いので心配して探しに来ました」


あーそれは俺のせいだな。確かに合鍵は渡してあったし、出入りは自由だもんな。

しかし心配していたにしては表情が全くないのはどういうことでしょう?

そりゃ鉄仮面ですけどね。

ニーナは俺にエスパー発揮するのに俺は中々ニーナの気持ちが読み取れないのは不公平だよなーといつも思う。それが心地よくもあるけどね。


「・・・今度連絡用の何か作るから許して」


氷の鉄仮面で見つめられたので根負けした。ニヤリと笑ってくれたので交渉は成功したようである。


「ありがとうございます」


恭しく礼をする所作は洗練されていて、見慣れていなければ呆けるところだ。

実際、ハラブゥはこの間息をするのも忘れていたようだ。


「はっ、この方はどちら様でしょう?」


「ああ、さっき言ったメイドのニーナだ。ニーナ、護衛の依頼をしてくれたハラブゥ氏だ」


「ユーリ様にお仕えしています、ニーナと申します。ハラブゥ様、以後お見知りおきを」


「ああこれはご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いします」


「では、早く出発しよう。なるべく早く到着したほうがいいんだろ?」


「そうですね。では参りましょうか」


そんなわけで、久しぶりの人里、リップジックへ馬車を走らせた。

転移?目立たたないためには自重も必要なのだよ。



「何故に人力車?!」


「ユーリ様、ファイトです」


ちなみにおっぱい30分で契約した。こういう時のニーナは何か抉い。




それから数時間後、日没の少し前に何事もなくリップジックに到着。

めっちゃ飛ばしたよ俺。ハラブゥ顔真っ青だもん。

身体強化使っても流石に馬車2台に荷物満載奴隷満載はきついわ。

ニーナにそう言ったら、「私もなんで動かせるのか不思議でなりません」って言われた。それ酷くない?まあいいけど、ニーナだし。無表情だし。泣けてきたし。


その後、何事もなく門を通過。何事もなくモカマド商会リップジック支店までの護衛を完了。

何事もなく報酬の金貨1枚をもらった。

あれ?イベント無しか!しまった!モカマドとのパイプはもう少し太くしときたいんだけどなー。この時代の商人て結構侮れないよね。


「ユーリ様、ここまでの護衛ありがとうございます。今後ともご贔屓に」


ここでの返しは重要かもしれない。ここで終わらせないような台詞がいいな。


「ああ、次も護衛が必要なら言ってくれ。しばらくはこの町のギルドにいるからよ」


「おお!それは頼もしいですな。ではまた」


まあこんなもんか。

別に俺は勇者としているわけでもないからな。イベントがポンポン起こる不思議体質でもないんだ。世知辛い。




さてギルドにいると言ってしまった手前、有言実行しないと損するのは俺だ。

なのでギルドへ向かうことに。


「ニーナ、ギルドまで案内して」


「承知しました」


最近体も大きくなったので抱っこというわけにもいかない。全く成長とは悲しいものである。

どこか悟りを開いた様な気持ちでいたら、いつの間にか目的の大理石の建物の前についていた。


ギルドの建物は意外と大きい。それこそこの町一番と言えるかもしれない。まあ領主の屋敷とかあればそっちの方が大きいだろうけどな。


「ユーリ様、到着しました」


「ああ、入ろう」


久しぶりに開ける扉は相変わらず仰々しい。防御魔法がかけられた木製の扉は、生半可な攻撃ではビクともしない。もちろん建物自体も傷をつけることすら難しい。

まこれも俺には関係ない(・・・・)、な。


「じゃ俺は報酬取ってくるから、ニーナは次の適当な依頼に目星つけといて。なるべく戦闘が入りそうなやつでお願い」


「畏まりました」


黒兎メイドが頭を下げる。俺は悠々と、堂々と、胸を張って受付カウンターに向かう。だって視線がすごい突き刺さるんだもん。こうでもしないと俺の精神が持ちそうにない。

ナニコレ?俺じゃないな。多分ニーナ。でもなんで?てか俺にも少なからず視線が来てる。だんだん増えてる。しかもニーナのとは真逆の殺気の篭った視線だ。

8歳児に向けるもんじゃねーだろ!

いやでもこの世界だと精通したら結婚させちまうとこもあるっていう羨まけしからん話もあるからなー。

理由は何でもいいけど目立つのは嫌だなー。俺ある程度銃の試し撃ちができたらランクとか金とかどうでもいいからね。


「依頼の報告に来ました」


受付カウンターの上にゴブリンの耳が入った袋を乗せる。

ギルドの中は冒険者の大半と違って清潔に保たれている。そして広い。

中に入って正面に3つの受付カウンターがあり、それぞれに美人(・・)の受付上が座っている。この人達はモチベーションの燃料がてら美人を集めていると云われている。

それから買取りカウンターと依頼掲示板。残りの事務的なのは受付の奥とか上の階とかにあるそうだ。この間取というか建物内の構造みたいのはどこ行っても共通で、王都のだけ一回り大きいらしい。


「はい、ギルドカルテを提示してください」


「ああ、はい」


受付嬢の美人エルフがニッコリ笑いかけてくれた。もちろん俺は狙っていったよ?中身40近いオッサンだからね。

俺もニッコリ返すと、エルフのねーちゃんは蕩けそうな笑に変わった。やっぱ俺のこの顔は使える!でもなんだかんだ使ったのは今が初めてだったかも?

いつもニーナで間に合ってたしな。

でも美人はいつ何時何度見てもいいもんだよね。


よく、ブスは3日で慣れるが美人は3日で飽きる、と聞くが、だからと言ってブスが美人に勝ることなど無いのである。ブスはブスで、美人は美人。というかブスだろうと美人だろうと3日で慣れるだろ、と言いたい。そこから先は心の問題になるから論点が変わってく気がするのだが、まあどうでもいいや。俺は美人しか求めないけどな!


「はい、確かに。ではこちらが報酬の銀貨10枚になります」


「ありがとうございます」


報酬を受け取り、ペコっとお辞儀してニーナの元へ。

さすがに初対面でモーションかけるほど俺はチャラくない。と言い訳してみるが、人見知りなのはあるんですよ。

前世の記憶引きずってるとこういうのが面倒だよ。あまり人と深く関わらないスタンスだったから、段々自分から関わろうともしなくなって、それを引きずって今に至るという・・・なんとも駄目な奴だな俺は。ニーナがいなかったら孤独死してるはずだ。


さてニーナに癒しを求めに行こうとしたら、依頼掲示板の方が何やら騒がしい。

人間と犬人の4人組が何やら騒いでるみたいだ・・・と現実逃避してみたけど、彼らは一人の女性を囲っている。もちろんニーナである。

てか何か変だなと思ったら、どういうわけか、ニーナは認識阻害をかけていなかった。なんでだろう?いつものニーナならこういうポカミスはしないんだけど。


ニーナを囲ってる4人は実力の差もわかってないような阿呆なので心配は全く無いのだが、ここで成り行きを見守るなんて選択をしたら、明日1日中ニーナのご機嫌取りをやるはめになるだろう。

つまり俺はここで何らかのアクションを起こさないければならないのである。

こういう時、とことん雇用主という立場は面倒だと思う。

まあ主従以上の関係になる気満々だけどな俺!



いやはや俺のメイドに手ぇ出して、五体満足で帰れると思うなよ?カスめ!



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