1剥き目・外殻
まああまり期待はしないで下さい・・・
流し読みくらいがちょうどいいと思いますb
嗚呼、赤ん坊の鳴き声が聞こえる・・・。
それはもうぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん泣いてる。
まあ・・・・・・
俺なんだけどなテヘペロ。
何で泣いてるかって頭がものっそい痛い。
痛いんで泣く、精神レベルが体に引きずられている気がしてならない。
難儀なもんだ。
でも焦ったりはしない。なぜってこうなることは知っていたからな!
***
30年ほど生きてきたが、刑務所ってのはどの国も変わらんな、などと思いつつ俺は便器に顔を突っ込んだ。もちろん自分の意志でだ。
我ながら最悪の死に方だと思う。でもやりたいことはやり尽くしたし、殺したことがないのも自分くらいだと思えるくらいには殺しまくった。
初めて人を殺したのは5歳だか6歳だかくらいの時だ。
親父は母さんを愛していたけど、俺のことは愛さなかった。むしろ憎んでいた。
両親の顔の特徴をちょうど半々くらいに受け継いだ俺が、母さんの愛情を一身に受けているように感じたのかもしれない。
理由を聞く前に殺してしまったからもうわからないけどな。
俺の親父はいわゆるヒモだった。それで母さんは昼間から夜まで働いてたし、俺は家で標的にされたわけだ。
最初は単なるストレス発散に"一般的な虐待"を受けていた。
で、だんだんエスカレートしていったある日、遂に性欲まで俺で発散し始めやがった。
知識がない俺も流石にケツ掘られて何かキレた、色々と。
気がついたら親父を包丁で滅多刺しにしてたぜ。あいつの寝てる間にな。
その後母さんが帰ってきて錯乱して俺を何度も叩いてきたのでまた殺しちゃった。
あれは今でもミスったと思っている。
それから色々あったけど、結局孤児院行きになって、その孤児院でも一回ケツ掘られた。院長に。確か8歳くらいだったと思う。んで院長殺した。確か寝た院長をベルトかなんかでベッドに貼り付けにして金属バットでタコ殴りにした。
その頃から俺も壊れ始めて、11歳の時にいた孤児院の女性職員を精神ぶっ壊れるまでレイプした。
中学入って女子を先輩後輩同学年関係なく襲いまくってた。なんか復讐に来た男子もいたけど返り討ちにしてバラバラ殺人事件を演出したりもした。
16歳の頃には夜間学校でバトロワごっこと称して生徒から教師まで皆殺しにしたこともあった。
この頃に麻薬とかにも手を出し始めて、中毒になる前に商売に手を出した。
また色々あってヤーさんに匿われて高飛びで中東へ。
傭兵とかしている内にアングラな世界に堕ちて行って、いつの間にか麻薬やら人身売買やら手広くやってるマフィアとのパイプができちゃってた。
いやー本当に色々犯ったなー。
殺人強盗密猟賄賂誘拐強姦麻薬に人身売買。極めつけは世間で「主張無きテロ」と騒がれた爆弾テロ。テロった理由はほんとになんとなくだ。ただいい爆弾が手に入ったので適当に高層ビルを2、3棟吹き飛ばした。
5年前くらいに暇潰しでマフィア乗っ取って、30歳まで暴れまわってた。
ようやく司法機関が俺を捕まえてくれたのがつい最近。
で、俺は俺を殺してないことに気づいて自殺した。
で、気がついたらお花畑ですよ。どこですか?ここ。
「どこと言われてものう・・・」
そして目の前には長い白ひげのじいさん。なんか神とか言いだしそうで恐い。
「いかにも。儂は神じゃ。まあおぬしらの言葉に当てはめると、じゃがの」
さて、心も読まれたところで、
「いったい俺はどうなった?」
と聞いてみる。
「神が先読みされたじゃと?!・・・まあ言いわい。そんな胡散臭そうな目で見るでない。ヌシは死んだぞい。というか自分で死んだじゃろ?」
その答えを聞いて一安心。どうやらちゃんと俺を殺せたらしい。
「やっぱ歪んどるのー」
自称神がどこか感心したように頷いている。
「で、俺はなんであんたに会ってるんだ?」
「それなんじゃがの、本来死んだ者がその後どうなるかわかっとるかの?」
「んなの知るわけないだろ。元々死後の世界とか信じてなかったし、全くの"無"だと思ってたよ。だから躊躇なく他人を殺してたわけだしな」
「ふむ、儂としてはあれほど微妙なバランスの上で成り立ってる世界に神の存在を疑える余地がどこにあるかが疑問なんじゃがの。まそれはよいわい。
生の中で犯した罪はいわゆる地獄で濯ぐんじゃが、今回主の罪が大きすぎて多すぎて地獄側が拒否してきおっての、本来ならそんなこと無いはずなんじゃが、不思議に思って調べてみたのじゃ」
「んでどうだったんだよ?」
「それがのう、なんというかぬしの魂が異常をきたしておったのじゃ」
「異常?」
「そうじゃ。魂というのも世界同様絶妙なバランスによってできているのじゃが、今生のヌシの魂の数値が1ほどずれたと思えばわかりやすいかの。言っとくが世界で数字が1狂えば天変地異で人類が滅亡すると思ってくれて構わんぞ」
「なんだよそれ。じゃああれか?管理側の責任てことか?」
「全てではないがの。そもそも人の心は神でも管理できんのじゃよ」
「へーそうなのか。じゃ俺が自殺したり人を殺したのは俺の意志であって、どっかの酔狂な神様が弄ってたわけではないんだな?」
「もちろんじゃ。自分で生んだモノをわざわざ自分で壊したりはせぬよ。まあ正直ヌシが死んで実は世界も救われたんじゃ」
「随分とぶっちゃけて来たな。どういうことだよ?」
「さっき心は管理出来んと言ったがの、ある程度の未来は予測されているんじゃ。ヌシの未来の内半分は世界が滅び、残りの半分は人類が滅ぶ未来じゃった」
「俺一体何する予定だったんだよ・・・・・・ああ言わなくていい止めて」
「ふむ、とにかくヌシの魂には異常があった。異常の正体は"良心の故障"じゃな。つまり悪い事と良い事の判別がほぼできない状態になっておった」
「あーそれは確かに異常だな。殺す殺さないは俺の意志だけど、それを善悪判断してブレーキかける機能が壊れてたってことか。そりゃ躊躇いなく殺すし犯すわな。動物と変わらん」
「自分のことなのに冷静じゃのう。それも異常かの?まあいいわい」
いいのかよ。
「まあそれでじゃ、地獄の閻魔っちが受け入れ拒否して来ての、何でも罪状が長すぎて読み上げで数年かかりそうとかぼやいとったぞ。無論それだけが理由ではなかろうが」
「それだけのことをやった自信はあるぜ!」
びしっとサムズアップを決めてみる。
「自慢すな!はぁ~儂ら管理側の責任も一応あるしの、異例の事じゃが罪の清算課程を飛ばして転生させることになった」
「それでどうなるんだ?それを俺に言う必用はあるのか?」
「それが大アリなんじゃよ。普通転生するときには記憶も消えておるんじゃがな、罪の精算が成されないと残ったまんまなんじゃよ。だからお主にはくれぐれも前世のような生活をしてもらっては困るんじゃ。毎回こんな事してたら業務が滞ってしまうでの。そしてこの話をしたことも他言無用がいいじゃろ。世界によっては異端として追われるしの」
「ちょっと待て。今までいた世界じゃない世界に転生すんのか?」
「そうじゃ。こちらも色々考えて、ヌシがいた世界より幾分命の価値は軽い世界へ送ることにはしたがの、それでも無闇に殺していい世界ではない。そんな世界もない。もちろん魂の数値は修正して転生させるから良心の機能は回復するはずじゃが、心というのは記憶と相互作用で動くものじゃからな」
「いや俺も最初から殺したくて殺してたわけじゃないけどな。良心が動いて悪い方には転がらないだろ」
「まあそうなんじゃが、実はヌシの魂が今生の生活でまた数値が変わっての、良心以外の部分が正常とは言えないんじゃよ」
「なんだそれ、俺どうなるんだよ?」
「ヌシの今の魂で"人"の枠に収まって生活できる世界は魔力というヌシがいた世界には無い力が働いておる世界じゃ。科学より魔法で発展している。その世界なら保有魔力の領域で随分と異常になりそうな範囲を補えるはずじゃ」
「あーよくわかんねーけど、保有魔力?が少しイレギュラーになるんだろ?多いか少ないかしらんけど」
「その通りじゃよ。理解が早くて助かるわい。予定ではものっそい多くなる。多分その世界で一番多いかもしれん。だからこそ力に溺れずに真っ当に生きて欲しいのじゃよ。殺しすぎずにな」
「わーったよ。じいさんの顔立てると思って生活するからよ。まあ信用は難しいだろうが、なるべく頑張るとだけ言っておくわ」
「そうか。頼んだぞ。言葉は割と早くに理解できると思うぞい。言語体系は似ているからの。では早速送るかの」
じいさんが軽く手を振ると、俺の意識が霞んでいった。
「あそうじゃ。魂の記憶が脳にいきなり刷り込まれるから、最初めっちゃ痛いぞい」
おいいいいいいいいい。
あ、もう声が出ない。
畜生じいさん次会ったら殴る!
と、そんなこんなで冒頭に戻るわけですよ。
記憶がどんどん鮮明に蘇って、まるで走馬灯だこりゃ。
おうふ、便器に顔突っ込んだ記憶は無くても良かったな・・・。
また泣けてきたぜ。
はたして便器に顔を突っ込む必要はあったのだろうか・・・・
12/3 修正