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正しい力の使い方  作者: 桃源世界
序章 学内騒動
1/9

□1話 プロローグ

思いついたので書いてみました。

素人の書いた稚拙な文章ですが…

お読み頂けるのでしたら、よろしくお願いします。(..)ペコリ

 俺、神谷(かみたに)修平(しゅうへい)の送る人生の難易度はハードモードに違いない。

 そう確信したのは、小学生の頃だ。


 父は有名会社の社長、母はその父に見定められた才色兼備の持ち主。

 兄は世界屈指の文武両道者、現在は有名専攻学園の首席を維持している。

 妹は母同様、才色兼備の性質を持ち合わせ、現在は歌唱コンクール全国1位の実力者だ。

 

 遺伝子というものは働き者らしい、親の力を、確実に子に受け継がせている。

 ただ、俺、神谷修平の遺伝子は怠け者なのだろう。優秀どころか、普通ですら片腹痛い。


 容姿の方も、身長175センチ、体重62キロ、黒髪黒眼という大して特徴もない格好。

 兄、妹のように一際目立った部分は、唯一つ存在しない。


 優秀な家族の下に生まれてきた凡人を、蔑む視線が痛いのは否めない。

 小学、中学と、陰口を叩かれなかった日はないだろう。

 無論、それは中学最後の卒業式でも変わらなかった。


 幾多の暴言を囁かれ、その度に己の無力感に(うずくま)っていた。

 それは何処かで、俺が兄と妹に勝る部分はないという劣等感が悪い方向に堕ちた結果だ。


 だが、今は違う。

 空虚な人生を抜け、俺は兄と同じ土俵に立つことを決意した。

 そうして受験した、兄が所属する学園。



 ──エドウィン軍兵魔法科学専攻学園、総称名、G(軍式)M(魔法)K(科学)養成校。



 地球が育つ過程の中で行われた暴挙に環境問題、その全てを解決するために3年前、この国にも設立された、今までに類を見ない教育機関だ。

 この学園では、当時瓦解した最先端の魔法から、後世に受け継がれなかった科学の全てを結集させた様々な技術が眠っていると聞いている。

 当時、自然災害で消滅した敷地を全面的に使用し設立されたため、勉強環境、運動環境、その全てが人工的な技術で造られたとも聞いている。


 専門分野は、魔法を基盤に置き、科学の力を導入した、魔法科学(魔学)。

 科学を基盤に置き、魔法の力を導入した、科学魔法(科法)。

 そして、軍事全般を賄う軍事練兵(軍兵)の3つの班を主軸として置いている。


 俺がその学園に入学できたのは奇跡といっても過言ではない。

 定員数60名、入学希望者数は10倍の約600名、試験内容は基礎教科と実技だった。

 兄に剣術を指導してもらうことができなかったならば、落ちていただろう。

 経緯はどうあれ──GMKの入学式を終えた俺は、未来の学園生活に希望を抱いていた。


 そして始まる、俺の人生観を180度は変えるであろう、その学園生活が──。


 # * * * #


「迷子になった…。」


 GMKが所有する、校舎と同時期に併設された寮、(ゆめの)(あと)寮内。

 様々な設備に加え、総部屋数、三百は下らない。

 中には光学螺旋レーザー室などといった、無駄に響きが男心を(くすぐ)る部屋も在る。

 ただ、入念に戸締まりをされているせいか、中は覗けない。


 入学式のパンフレットに挟まっていた情報によると、俺の部屋はZ‐1という相部屋だ。

 ぶっちゃけてしまうと、かれこれ5分間は廊下を彷徨っているが、未だに辿り着かない。

 広大すぎる寮、移動に不便な気がしないでもない、というか不便だろう。


「設計ミスだろ明らかに…くそっ、建築会社の陰謀か…」


 一度戻って、寮監にでも道を聞いた方が良いのだろうか、少し迷う。

 方向音痴と笑われるのがオチか、入学早々災難すぎる。


「寮内の地図が配布されないのも問題だな…後で直訴するか…」


 パンフレット片手に髪の毛を乱雑に掻きむしる。

 困った時の癖だ、何度、家族と幼馴染に注意され続けてきたことか。

 さて、どうしたもの…、


「コラァァァァァァ!!」


 …!?

 強烈な怒声が俺の耳を(つんざ)いた。


「いい加減に、その癖直しなさい!」

「っ、美咲か」


 振り向き、彼女の顔を見た。

 今泉(いまいずみ)美咲(みさき)、幼馴染の間柄にして、俺の知る世界では最強の女。

 中学の頃は、女子バスケ部のキャプテン兼エースを務めていたと聞いている。

 同学年ということもあったので、それなりに世話にはなったし、世話もした。

 俺より少し身長の低い、漆黒のセミショート。しなやかな足腰と、華奢な身体つきに、服の上からでも分かる包容力のありそうな胸、反則的な身体の持ち主だ。


「おじ様に言うわよ…?」

「悪いことは言わない、やめておけ。もとい、やめて下さい」


 頭を下げる、土下座しても良い気分だ。

 美咲は、ふふん、と意地の悪そうな視線で俺を見つめて来る。

 今の場面を美咲に言われるとはツイていない、親父に漏れないことを切に祈る。


「というか、女子寮はこっちじゃないだろうが」

「ああ、迷ったのよ」

「さらりと言うなよ…」


 既に開き直っているのだろう、苦悩している様子はなさそうだ。


「もう事務に聞こうかな、うん、そうしましょう」


 そして勝手に自己解決するのは、幼少の頃から全然変わってない。


「ところで、修平の所属班ってG班よね」


 美咲が指すG班というのは、軍事班のことだ。

 ここでは魔法科学班はM班、科学魔法班はK班、軍事練兵班はG班と略されている。


「つか、俺の能力だとG班が限界だしな」

「なら、わたしと一緒ね!」

「お前が、G班…?」


 瞠目する。

 昔から体力に自信のある女ではあったが、こいつは何気に勉強もできる。

 てっきり、M班かK班のどちらかだと勝手に解釈していた。


「な、何よ…わたしが、G班だといけないわけ…?」

「別に問題はないが、体力的に厳しいぞ」

「どの班だって、厳しいのは変わらないわよ」

「ごもっともで」


 納得した、確かにその通りなのである。


「…アンタって、ホントに鈍感よね。子どもの頃からだけど」

「なにがだ」

「何でもないわよ、修平のバカ! おじ様にさっきのこと言いつけてやる!」


 急に怒ったかと思いきや、美咲は俺の行き先とは逆方向に走り出す。


「あ、ちょっと待て、それはマジで洒落にならない!」


 思い届かず、俺の大声を振り切って美咲は去ってしまった。

 

 ……、携帯電話の電源をOFFにしておこう。


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