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白の聖女の主張

オリジナルな話です。

これからも頑張りますね。

 

何故、こうなったのかと自問自答する。

私は普通の街で育った普通の貴族で騎士の子だったのだ。

祖父と暮らしていた十三年前までは。


私の母の名前はエリス・ラズウェリナ・マリアナ。

金糸の髪に翡翠の瞳をした美女で皇族の方々に仕えていた騎士。

所謂、皇王騎士団の一員だった。

母はその中でも有能で現皇王様の兄君ライグーン・エリオット・フェン=サヴォア皇太子殿下専属の騎士だった。専属護衛というのだろうか。

まあ、幼き頃より護衛として務めていたので仲は良かったらしい。


私の父親はライグーン・エリオット・フェン=サヴォア。

サヴォア皇国皇太子殿下その人である。私は母と父の一夜の誤ち(お互いに好き合っていたらしいので厳密に言えば誤ちなのかは分からないが)で生まれた子供なのだ。

この時点でもはや普通とは言い切れないのだが、

私は十三年前までその事を知らなかった。

あくまで騎士の母から生まれた騎士の娘だったのだ。

18年前に大きな戦乱があり、そこで父である殿下は死に母は生き残った。

負傷を原因に職を辞し、両親たちには結婚の約束をしていた人が死んだと話したようだ。

間違ってはいないが、いいんだろうかと娘の私でも思う。

そして私が生まれた。

母は私を生んだあとに体を壊して亡くなった。


この国では、フルネームを聞けばどういう血筋の誰なのかがわかるようになっている。

だから、国で高位の位にある者になるほど名前が長くなるのだ。

私の場合は、ルシンディエタ・エリューシアナというのが名前。

ルシンディエタが聖なる月、エリューシアナが楽園、豊穣なる地を意味する古代語で、

名前をつなぎ合わせると『聖なる月の楽園』を意味する。

名前は幼い子供でも知っている古の夜と月の伝説の章から取ったものだ。

・・・・・・・父が一番好きだった話の中の名前。

私を名付けたのは、母。誰よりも彼の人を愛していのだろう。

その証拠がこの名前だ。


私のフルネームは正直長い。略称は、ルシンディエタ・エリューシアナだが正式にはルシンディエタ・エリューシアナ・フィル=フェン・マリアナ=サヴォアという。

皇国の剣と呼ばれる貴族マリアナ家のエリス・ラズウェリナとライグーン皇太子の血を引く皇女にして、“光”の属性を保持する。教会が全面的に仕える“白”の位階を持つ聖女。


サヴォア皇国ではフェンというのが皇族を意味する称号であり、

私が『フェン』の称号を持っている訳は、皇太子だった父の子供だから。

『フェン』は、皇王直系の皇族の子・兄弟に与えられる称号で、王子や王女と結婚してもその配偶者には与えられない。その為に私の母はフェンの称号は無い。


なお、フィルというのが“光”の属性を持つ人物、女性の場合なら聖女を、

男性の場合なら神子みこを意味する教会から献上される称号。

彼のものが聖なる力を秘めた者と認める、という教会の宣言だ。

また、類似するものに“闇”の『リィル』を筆頭の称号がある。



私は当時からあまり母には似ていなかった。

金の髪ではなく、銀の髪。

翡翠の瞳ではなく、灰色の瞳。

父親である殿下の色を受け継ぎ、殿下を女性にした様な整った顔。

しかも、母の騎士としての才ではなく殿下の魔法の才だけを受け継いだ。


祖父は騎士の家系であるマリアナ家に婿入りしてきた魔法使いなので別に何も言わなかったが、祖母は最悪だった。騎士の家系に生まれたのに剣が出来ぬとは何事かと事あるごとに私を責めた。

分かりやすく言うと剣でフルボッコである。

祖父がいると止めてくれるのだが、使用人は見て見ぬふり、祖母も祖父に見つからない様にして殴りとばしてくる。当時家庭崩壊していると思った私がいた。


そして、十三年前のあの日、四歳の私の能力が発動したのだ。

祖母に打たれ、どろりと血が流れた。

それを見て、能力が顕現した。

“光”の能力のうちの一つ、“治癒”だ。


それが皇都ルルノイエまで届き、連れていかれ、調べられ私の父が判明し、称号や様々なもの(父の持ち物だった離宮とか別邸とか領地とか皇族の中での称号とか)を授かり、何年か宮廷の魔術師や家庭教師に色々教えこまれ、指導された後、教会に入った。


聖女であり、皇姫である私が皇国の教会の最高の地位に立つために。

正確にはなって欲しいと今上陛下に頼まれたからだが・・・。

そもそも、皇族で希少な聖女ならなれないわけが無いのだが。


私が入った教会には魔法に目覚めたり、魔法使いの家系だったりする少年少女がいた。

魔法使いの血は保護されるので高貴な家系が多い。

現に皇王の息子であり、私の従弟おとうとでもある皇子。

リオン・アルシェード・ティル=フェン・サヴォア殿下もいた。

それなのに何故か、腫れもの扱いされ友人は出来なかった。

何故だ。げせぬ。

昔から、口下手だったせいだろうか。

いつの間にか孤立していた。

しかたがないから勉学や魔術の習得に集中して打ち込んだ。

遠巻きにされるようになった、何故に。


結果、卒業(というか免許皆伝)までに出来た友人は一人。

“闇”の『リィル』の称号を持つ、アシュレイド・リィル・リゲルだけだ。

魔術師の家系の生まれらしい。

天才だった。


そこまで思い出していると、幾重にもうすぎぬで遮っている寝台に光がさした。

夜が明けたらしい。

寝台から起き上がり、白の神官服を身につけた。

今日はこれから神殿で祈りをささげねばいけない。

自分で選んだ結果と言っても大変だ。


こんなことは信者の皆さんには言えないな、と苦笑いした。





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