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とある聖女の話
プロローグです。
サヴォア皇国には、聖女がいる。
雪深い白の街で生まれた、美しい聖女が存在する。
足首につくまでの長さの絹の様に滑らかな髪は、白銀。
髪と同色のけぶるような長いまつげに縁取られた瞳は、銀がかった美しい灰色。
肌は処女雪の様に白く、陶器の様に滑らか。顔のパーツはこれ以上ないくらいの形のものがこれ以上ない場所に収まっている。どこか、清げで儚げなその美貌は絶世。
皇国が誇る、月の聖女にして皇女。
ルシンディエタ・エリューシアナ・フィル=フェン・マリアナ=サヴォア。
白の位階を持つ、皇国史上至高と呼ばれる聖女。
これは、その聖女の歴史の軌跡である。