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セトウチに灯る光  作者: Leon Black Angel


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第6話:沈黙の正体

どんな力にも、必ず源がある。

それは目に見えるものとは限らない。

時にそれは――

心の奥底に触れた“何か”によって目覚める。

島は静まり返っていた。

つい先ほどまで荒れ狂っていた空は嘘のように晴れ、海もまた穏やかな音を取り戻している。

だがその静けさは、どこか不自然だった。

レオンはその場から動かず、ただ空を見上げている。

「……終わってないな」

ぽつりと呟いたその言葉に、ララが振り向く。

「え……?」

ジラはまだ地面に膝をついたまま、息を整えることすらできずにいた。

先ほどの出来事が、まだ彼女の中で終わっていない。

ナンドは腕を組み、目を細める。

「……あれは暴走じゃない。あんなもんで終わるはずがない」

レニの指先に灯る黒炎が、わずかに揺れた。

「まだ残ってる……何かが、この島に」

その言葉が落ちた瞬間――

空気が歪んだ。

まるで見えない何かが、この場に“戻ってきた”かのように。

レオンの瞳が鋭くなる。

「来るぞ」

地面の一部が、ゆっくりと沈み込む。

そこから現れたのは、先ほどのような無数の影ではなかった。

ただ一つ。

それだけだった。

しかし、その存在感は異常だった。

人の形をしている。だが完全ではない。

輪郭は揺らぎ、内側は空洞のように歪んでいる。

それはまるで――記憶の欠片が無理やり形になった存在。

ララは息を呑んだ。

「……違う……さっきのと」

ナンドが一歩前に出ようとした瞬間、レオンが手で制した。

「待て」

影は動かない。

ただ――ジラを見ている。

ジラの肩が小さく震えた。

「……なんで……」

誰も何もしていない。

だが、何かが起きている。

その影は、ゆっくりと口を開いた。

音は出ない。

だが――意味だけが、直接伝わる。

ジラの目が大きく揺れた。

「やめて……」

ララが思わず声をかける。

「ジラ、何が見えてるの?」

しかしジラは答えない。

いや、答えられない。

次の瞬間――

彼女の視界が塗り替わった。

戦場。

崩れる大地。

燃え上がる空。

そして――

倒れていくラガーの姿。

「……っ!」

手が届かなかった。

声も届かなかった。

ただ見ていることしかできなかった、あの瞬間。

ジラは叫ぶ。

「違う!!私は……!」

その言葉を遮るように、影が初めて声を発した。

低く、歪んだ声。

「選ばなかっただけだ」

空気が凍る。

ナンドの視線が鋭くなる。

ジラの唇が震える。

「……違う……私は……」

影は一歩近づいた。

「逃げた」

その一言で、すべてが崩れた。

ジラの中で、何かが音を立てて壊れる。

「……やめて……」

影の体が歪む。

だが消えない。

むしろ――圧縮されていく。

レニが息を呑む。

「……あれ、収束してる……!」

空が再び暗く染まる。

だが今度は広がらない。

一点に集まっている。

影は、ゆっくりと手を伸ばした。

その先にいるのは――ジラ。

レオンが前に出る。

「それ以上は――」

だが、進めない。

見えない壁のようなものが、彼の動きを止める。

影が、静かに言う。

「まだ終わっていない」

「これは始まりだ」

その瞬間――

ジラの胸元から、黒い光が漏れ出した。

ナンドの目が見開かれる。

「……共鳴してるのか……!」

ジラは自分の体を見下ろす。

「これ……私じゃない……!」

レオンは確信するように呟いた。

「違う……これは……外から来ている」

その言葉に、空気が一変する。

影は、ゆっくりと笑った。

「ようやく気づいたか」

「これは彼女の“答え”ではない」

「きっかけにすぎない」

ジラの呼吸が止まる。

影の姿が崩れながら、最後の言葉を残す。

「次は……もっと深く触れる」

その瞬間、影は完全に消えた。

空が元に戻る。

風が吹き始める。

だが誰も、すぐには動けなかった。

沈黙が落ちる。

ジラはその場に立ち尽くし、震える手を握りしめる。

ナンドが静かに言った。

「……お前だけの問題じゃなさそうだな」

レオンは空を見上げる。

その目は、すでに次を見ていた。

「……何かが動き始めてる」

誰も否定しなかった。

島は静かだった。

だがその奥で――

確実に“何か”が目を覚まし始めていた。

疑いは、弱さではない。

それは“問い”の始まりでもある。

だがその問いに、何が応えるのか。

それが――光であるか、闇であるかは、まだ誰にも分からない。

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