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セトウチに灯る光  作者: Leon Black Angel


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第34話:神の血、人の魂――カイロス覚醒

リヴァイアサンの圧倒的な再生能力の前に、レオンたちは窮地に立たされます。瀬戸内の街が深海に沈もうとするその瞬間、レオンの内側で眠る「最古の記憶」が目を覚まします。神話の時代、他の神々が封印される中で唯一逃げ延びた理由。その真の力が、今、現代の戦場に解き放たれます。

瀬戸内の空は、もはや昼か夜かの判別すらつかない漆黒に塗り潰されていた。

止まった雨粒、静止した人々。その異様な静寂を切り裂くのは、街を削り取りながら上昇を続ける濁流の唸り声だけだ。

ララの黄金の鎖は、リヴァイアサンの巨躯によって一本、また一本と引き千切られ、ナンドの迅雷の拳も、神話の獣が持つ無限の再生力の前に虚しく空を切っていた。レオンは膝をつき、肩で息をしながら、迫り来る巨大な津波を見上げていた。視界が血に染まり、意識が遠のきかける。

(……ここまでなのか……? 仲間さえ、救えないのか……)

その時、脳髄の奥底、魂の最も深い場所から、地響きのような低く冷ややかな笑い声が響いた。

『情けないな、レオン。五行の力を与えても、その程度しか使いこなせんとは。宝の持ち腐れも甚だしい』

カイロスだ。レオンの影が意志を持つかのように蠢き、そこから漆黒の火花が爆発的に散る。

「黙れ……まだ終わってない……!」

『いや、終わっている。お前という人間ではな。……レオンよ、器を貸せ。私に代われ。本物の「力」というものが何なのか、そしてなぜ私だけが他の神々のように封印されず、悠久の時を生きながらえたのか……その理由を、今この場所で証明してやろう』

カイロスの声には、ポセイドンやリリスのような傲慢さとは違う、絶対的な「個」としての威圧感があった。

『案ずるな。お前の仲間……あの小娘や雷の男を殺しはせん。私は嘘を嫌う。約束しよう』

レオンは激痛に耐えながら、精神の世界で黒い霧のようなカイロスを睨みつける。だが、現実世界ではリヴァイアサンが再びその巨大な顎を開き、街を地図から消し去るほどの高圧縮水流「ハイドロ・カノン」を放とうとしていた。

「……いいだろう。だが、もし仲間に指一本でも触れてみろ。その時は、魂を燃やし尽くしてでも貴様を道連れにしてやる!」

『ククク……交渉成立だ。その傲岸さ、嫌いではないぞ。見ていろ、これが「真理」だ』

刹那、レオンの全身から噴出したのは、これまでとは次元の違う「漆黒の極光」だった。

空に浮かんでいた雨粒が、重圧だけで分子レベルまで霧散する。レオンの髪は重力に逆らって逆立ち、瞳は白目すらも完全なる漆黒へと染まった。肌には神代の古文書に記された禁忌の紋様が刻まれ、彼の背後には、天を掴むほどの巨大な四腕の魔神が実体化していく。

「ポセイドンよ。貴様の操るペットは、少々騒がしすぎるな」

レオンの口から漏れたのは、彼の声であって彼のものではない、重厚で大地を震わせる神の宣告だった。

リヴァイアサンが本能的な恐怖に駆られ、咆哮と共に数千、数万の水刃を放つ。それは瀬戸内の海そのものが牙を剥いたかのような一撃だった。だが、カイロス(レオン)は一歩も動かない。彼がただ指を軽く弾いた瞬間、周囲の空間そのものが「停止」し、色が反転した。

「神権発動――『万象崩落』。」

黒い雷が一閃。

リヴァイアサンの巨躯が、まるで紙細工のように一瞬で斜めに断ち切られた。無限の再生を誇るはずの、神が作りし水の身体。しかし、切り口からは不気味な黒い霧が立ち昇り、再生という概念そのものが拒絶され、獣の細胞が次々と崩壊していく。

「なっ……馬鹿な! リヴァイアサンが……我が眷属が、一撃で……!?」

上空で冷笑を浮かべていたポセイドン(レニ)の顔が、初めて驚愕と焦燥に染まる。リリス(ジラ)もまた、その黒いエネルギーが放つ「無」の波動に戦慄し、防衛本能のままに後退した。

ララとナンドは、ただ呆然とその光景を見届けるしかなかった。

「あれが……レオンなの……? 違う、あのプレッシャーは……宇宙そのものを背負っているみたい……」

「化け物だ……。これまでの戦いが、まるで子供の喧嘩に思える。あれが、封印を免れた唯一の神、カイロスの本気かよ!」

カイロスはゆっくりと宙を歩き、沈みゆくリヴァイアサンの巨大な頭部を冷酷に踏みつけた。巨獣は悲鳴を上げることすら許されず、その身を構成する水分すべてが黒い炎に焼かれ、蒸発することなく「無」へと消えていく。

「さて、ポセイドン、リリス。遊びは終わりだ。神の座から引きずり下ろしてやろう」

カイロスは不敵な笑みを浮かべ、空に浮く二人の依代レニとジラを見据えた。

「この器の主……レオンとの約束がある。お前たちの『肉体』は傷つけん。だが――その生意気な神の核、ポセイドンとリリスの魂ごと、二度と浮上できぬ深淵の底まで叩き潰してやろう」

瀬戸内の街全体が、カイロスの放つ黒い雷によって震え、空間の継ぎ目が悲鳴を上げる。

かつて神々が恐れ、歴史から抹消しようとした「唯一の超越者」が、ついにその真の牙を剥いた。

戦場は今、神対神の領域を超え、絶望のその先へと加速していく。

第34話をお読みいただき、ありがとうございます!

ついにレオンの体を借りて、カイロスがその圧倒的な力を解放しました。リヴァイアサンを一撃で葬り去るその実力、そして「万象崩落」という神権の恐ろしさ。ポセイドンたちが封印された理由が垣間見える瞬間でした。

ララとナンドも、その圧倒的な力の前に言葉を失っています。しかし、レオンの意識はまだ内側でカイロスを監視し、必死に綱渡りを続けています。この危険な協力関係が、次回の直接対決でどう転ぶのか。

次回、第35話「神々の黄昏ラグナロク」。

カイロス対ポセイドン&リリス。瀬戸内の地を舞台にした、文字通り世界を揺るがす決戦が幕を開けます。

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