第三十話『崩れゆく心』
強さだけでは、守れないものがある。
本当に必要なのは――
傷つけずに戦う覚悟だ。
街は崩れていた。
海水が路地を埋め尽くす。
石の階段を駆け上がる波。
木造の家々は軋み、壁が割れ、瓦が水に流されていく。
細い路地。
逃げ場はない。
空は暗い。
影が広がる。
まるで街そのものが生きているようだった。
ポセイドンが両腕を広げる。
『感じるか』
水が震える。
『この街はもう終わりだ』
巨大な水流が建物の間を突き抜ける。
階段を飲み込み、屋根を叩き壊し、通りを完全に水路へ変えていく。
レオンが前に出る。
黒い雷が体を包む。
カイロスの力。
圧倒的。
だが――
動きが止まる。
一瞬。
ポセイドンが笑う。
『迷っているな』
レオンの拳が震える。
カイロスが嘲笑する。
『どうした』
低く。
『この程度か?』
圧が増す。
『私の力をすべて与えた』
怒り混じりに。
『それでも倒せないのか』
沈黙。
レオンが答える。
「……違う」
ポセイドンへ視線。
「相手は一人じゃない」
低く。
「中にいるのは――レニだ」
空気が重くなる。
『甘いな』
カイロスが笑う。
『なら壊せ』
『その程度の情で止まるなら』
『最初から戦うな』
その瞬間。
ポセイドンが動く。
水の龍。
街を縫うように走る。
レオンが迎撃。
拳。
雷。
衝突。
ドゴォォォン!!!
階段が崩壊。
水しぶきが空を覆う。
一方――
ララ。
ジラと対峙。
影が足元から這い上がる。
建物の影。
水の影。
瓦の隙間の影。
すべてが形を持つ。
数百。
数千。
ララが叫ぶ。
「ジラ!!聞いて!!」
リリスが笑う。
『無意味』
指を鳴らす。
影が襲う。
ララが盾を展開。
光が弾く。
だが――
押される。
膝が沈む。
「くっ……!」
それでも叫ぶ。
「あなたはこんなじゃない!!」
一瞬。
ジラの目が揺れる。
リリスの表情が変わる。
『……邪魔』
影がララを締め上げる。
首。
腕。
足。
動けない。
ララが目を閉じる。
「……入る」
小さく呟く。
精神を集中。
ジラへ。
意識を伸ばす。
触れる――
その瞬間。
バチンッ!!
弾かれる。
リリスが目を光らせる。
『入らせない』
低く。
『この子はもう私のもの』
ララが歯を食いしばる。
「違う!!」
もう一度。
突入。
精神空間。
一瞬だけ見える。
暗闇。
鎖。
ジラが座っている。
動かない。
「ジラ!!」
叫ぶ。
だが――
黒い手。
無数。
ララを引きずり出す。
現実へ。
ララが倒れる。
息が荒い。
「……深すぎる」
涙がこぼれる。
ナンド。
影の中。
拳が光る。
雷が弾ける。
連撃。
影を砕く。
だが再生。
「キリがねぇ!!」
影が波のように押し寄せる。
屋根の上から。
水の中から。
階段の隙間から。
街全体が敵。
中央。
レオン vs ポセイドン。
激突が続く。
拳。
水。
雷。
衝撃で建物が吹き飛ぶ。
ポセイドンが笑う。
『まだ抑えているな』
水が圧縮される。
槍。
発射。
レオンが受ける。
吹き飛ぶ。
壁を突き破る。
瓦が崩れる。
止まる。
血。
だが――
立つ。
「……まだだ」
カイロスが呟く。
『理解できん』
低く。
『なぜ壊さない』
沈黙。
レオンが言う。
「守るためだ」
一歩踏み出す。
「壊すためじゃない」
空気が震える。
カイロスが笑う。
『愚かだな』
だが――
少しだけ。
楽しそうに。
ポセイドンが両手を上げる。
『なら見せてやる』
海が暴れる。
さらに巨大な波。
街全体を覆う。
屋根を越える高さ。
逃げ場はない。
ララが叫ぶ。
「レオン!!」
ナンドが歯を食いしばる。
「これヤバいぞ!!」
レオンが前に出る。
オーラが爆発する。
黒と雷。
空間が歪む。
カイロスが囁く。
『解放しろ』
静かに。
『すべてを』
沈黙。
レオンの目が揺れる。
ララを見る。
ナンドを見る。
そして――
ポセイドン。
拳を握る。
「……まだ使わない」
低く。
「最後まで――守る」
ポセイドンが笑う。
リリスも微笑む。
『なら』
『沈め』
巨大な波が落ちる。
影が同時に襲う。
街が完全に飲み込まれる。
光と闇と水が衝突する。
爆発。
視界が白に染まる。
その中で。
レオンの声だけが響く。
「まだ終わってない!!」
第三十話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は:
・力 vs 心
・救う戦い
・抑えたままの最強状態
を描きました。
そして――
レオンはまだ本気を出していません。
次回、限界が訪れます。




