第二十二話『禁じられた扉』
知るということは、
時に――
戻れない場所へ足を踏み入れることだ。
それでも人は、真実を求める。
たとえ、それが
自分自身を壊すとしても。
寺の中。
静寂。
空気が張り詰めていた。
ジラがゆっくりと口を開く。
「……方法がある」
全員の視線が集まる。
ナンドが腕を組む。
「なんだよ、その顔は」
ジラの目は真剣だった。
「でも……危険」
ララが不安そうに言う。
「どんな?」
沈黙。
「禁術」
空気が凍る。
レニが低く言う。
「……マジかよ」
ジラは続ける。
「心の奥に入る。記憶じゃない……本質」
レオンを見る。
「あなたの中」
静寂。
「カイロスに触れる」
ナンドが眉をひそめる。
「それ……無事で済むのか?」
ジラは首を横に振る。
「分からない」
沈黙。
「だから……私が一人でやる」
レオンが言う。
「無理だ」
全員が見る。
レオンは静かに続ける。
「俺も行く」
ララが叫ぶ。
「ダメ!!」
レオンは振り返らない。
「俺の中の問題だ」
ジラが頷く。
「……わかった」
寺の中央。
全員が円を作る。
レオンとジラが中央に座る。
足を組み、向かい合う。
手を重ねる。
静寂。
「……行く」
ジラの声が落ちる。
目を閉じる。
――沈む。
意識が深く落ちる。
暗闇。
何もない空間。
その奥で――
“それ”はいた。
巨大な影。
ゆっくりと姿を現す。
狼。
いや――
それ以上の存在。
巨大な体。
黒い毛。
燃えるような瞳。
そして――
五つの尾。
炎。
水。
風。
雷。
大地。
すべてが宿る。
カイロス。
起源。
レオンの力の源。
低く唸る。
『……何をしに来た』
声が響く。
重い。
圧倒的。
ジラは動かない。
「知りに来た」
カイロスが笑う。
牙を見せる。
『答えはやらん』
目が細くなる。
『今回は……お前たちの神は負ける』
空気が歪む。
『これから来るものは……それ以上だ』
沈黙。
『この地は完璧だ』
低く、楽しむように。
『創造主が吐き捨てた場所』
『選ばれし失敗作』
笑う。
『そして今や……我らよりも醜い』
レオンが一歩前に出る。
「黙れ」
ジラが言う。
「話さなくていい」
静かに。
「奪うから」
空気が変わる。
手が動く。
印を結ぶ。
地面に――
円が広がる。
古い文字。
禁じられた力。
「古代魔術――解放」
カイロスの目が見開く。
『それは……』
怒り。
『禁忌だ!!』
空間が震える。
『それを使った者は……すべて追放された!!』
だが。
止まらない。
光が走る。
闇が落ちる。
――ズドン!!
無数の杭。
巨大な杭が降り注ぐ。
カイロスを貫く。
固定する。
動けない。
沈黙。
そして――
笑う。
『いいぞ……』
低く。
狂気を含んで。
『耐えられるか?』
目が光る。
『その痛みを』
ジラの体が震える。
だが、離さない。
『楽しみだ』
カイロスが笑う。
『お前は今、負けた』
その瞬間――
現実。
寺。
円を囲む全員。
空気が歪む。
影が広がる。
波のように。
全員の体に触れる。
ナンドが目を見開く。
「……なにこれ……」
レニの炎が揺れる。
ララが息を呑む。
「……引きずられる……」
そして――
静かに。
一人、また一人。
目が閉じる。
意識が沈む。
闇へ。
全員が“繋がる”。
ジラの禁術は。
止まらなかった。
第二十二話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回はついに“禁術”が発動され、
物語は一気に核心へと突入しました。
カイロスの本質、そしてこの地の意味が語られ始めています。
しかしその代償は大きく、
仲間全員が巻き込まれる形となりました。
次回――
それぞれの“内面”が試される戦いへと続きます。




