第十三話『渦の底に眠るもの』
瀬戸内の海は、時にその穏やかな姿とは裏腹に、
自然の力をむき出しにする。
その流れの中に、もし異質な力が混ざったなら――
それはもはや自然ではない。
海風が強く吹きつけていた。
ジラが足を止める。
「……来る」
レオンが振り向く。
「またか?」
ジラは海を見つめたまま答える。
「違う……今回は動いてる。流れの中にある」
その瞬間――
海が唸った。
巨大な渦が生まれる。
水が裂け、中心が黒く染まる。
ナンドが歯を食いしばる。
「なんだこの規模は……!」
レニの炎が揺れる。
「前よりやばいぞ……!」
ジラが叫ぶ。
「これは裂け目が“回転してる”!吸い込まれる!」
渦の中心から、影が這い出す。
歪んだ存在。水と闇が混ざった異形。
レオンが剣を構える。
「ここで止める!」
戦いが始まる。
ナンドが踏み込み、流れを押し返す。
レニが炎で影を焼き払う。
だが――
渦がさらに強くなる。
足場が崩れ、全てが中心へ引きずられる。
ララが叫ぶ。
「このままじゃ飲み込まれる!」
ジラの目が光る。
「中心だ……あそこが核!」
レオンが頷く。
「行く!」
彼は渦の中へ飛び込む。
水圧が全身を押し潰す。
中心に――裂け目。
それは脈打っていた。
「終わらせる!」
五つの力が同時に解放される。
雷が走り、炎が裂け目を焼き、水が流れを制御する。
剣が光る。
一閃。
裂け目が崩れ、渦が静まっていく。
――静寂。
海は再び穏やかになった。
ナンドが息を吐く。
「なんとか……終わったか」
しかし、ジラは動かなかった。
「……違う」
全員が彼女を見る。
ジラの声は低く、確信していた。
「これは自然じゃない。誰かが……意図的に開いてる」
レオンは静かに海を見つめる。
「つまり……敵がいるってことか」
風が強く吹き抜ける。
瀬戸内の海は、再び静けさを取り戻した。
だがその裏で――
確実に、何かが動いていた。
第十三話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は瀬戸内の自然現象である「渦潮」をモチーフに、
より激しい戦闘と異変の拡大を描きました。
ジラの感知能力が重要な役割を果たし、
物語は「偶然」から「意図」へと変わり始めています。
次回は、この異変の背後にある存在へと、さらに近づいていきます。




